07.乳がん

乳がんでリンパ節の郭清(切除手術)は意味があるのか?その効果とは?

2015/05/21

乳がんの手術前に腋窩リンパ節(わきの下)に転移があると診断された場合は、腋窩リンパ節郭清(かくせい。手術して切除すること)を行います。一方、手術前に腋窩リンパ節に転移がないか、または疑いと診断された場合は、まずセンチネルリンパ節生検を行い、センチネルリンパ節への転移の有無を調べます。そして、転移があった場合は腋窩リンパ節郭清を行い、転移がなかった場合は腋窩リンパ節郭清は省略するのが一般的です。

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■リンパ節郭清とは

リンパ節郭清とは、リンパ節が含まれる脂肪をひとかたまりに切除することです。切除したあとで脂肪の中に埋まっているリンパ節を取り出して、転移があるかないかを病理検査で調べます。リンパ節に転移がある場合は、転移がない場合と比べてがん細胞が他の臓器に転移する危険性が高いことを示しています。

乳がん細胞が最初にたどり着くリンパ節は腋窩のリンパ節です。腋窩リンパ節郭清は乳がんに対する標準治療としておよそ1世紀にわたり行われてきました。しかし、1990年代後半から「センチネルリンパ節生検(後述します)」が普及し始め、現在では手術前に腋窩リンパ節への転移がないと診断された早期乳がんでは、まずセンチネルリンパ節生検を行うようになりました。

センチネルリンパ節への転移の有無を調べ、転移がない場合は腋窩リンパ節郭清を省略し、転移があった場合にのみ腋窩リンパ節郭清が行われます。一方、手術前に腋窩リンパ節転移があると診断された場合には、最初から腋窩りンパ節郭清が行われます。

●※●センチネルリンパ節生検とは?

センチネルリンパ節生検は腋窩リンパ節の中でも、最初にがん細胞がたどり着くと考えられるリンパ節(センチネルリンパ節)に、がん細胞があるかどうかを調べる検査です。

腋窩リンパ節郭清には、転移の有無を診断する意昧はありますが、転移がないのであれば「治療」としての意昧はありません。リンパ節郭清をして調べてみたら、リンパ節にがん細胞がみつからなかったという場合には、患者さんにとってリンパ節郭清は必要なかったことになります。

また腋窩リンパ節郭清は、腕のむくみ、手術後のわきへのリンパ液の貯留、わきの感覚の異常といった後遺症を引き起こすことから、省略してもよいのではないかと考えられるようになりました。そこで、りンパ節を郭清することなしに、リンパ節転移の有無を調べる方法が開発されました。それがセンチネルリンパ節生検という方法で、すでに世界中で実施されています。

センチネルリンパ節にがん細胞がなければ、それ以外のリンパ節にも転移がないと判断できますので、腋窩リンパ節郭清を省略できます。適応になるのは、乳房の切除術式に関係なく、しこりが小さく、リンパ節転移の可能性が低い場合です。

●※●センチネルリンパ節生検の方法

通常、センチネルりンパ節生検は乳房の手術の際に行います。乳房に微量の放射性同位元素(わずかな放射線を発する物質、アイソトープ)と色素の両方、あるいは片方を注射すると、リンパ管を流れてセンチネルリンパ節に集まります。

放射線が検出されたり、色に染まったりしたリンパ節(センチネルリンパ節)を切除して、がん細胞があるかどうかを顕微鏡で調べます。がん細胞がみつからなければ腋窩リンパ節は郭清せずに残し、みつかったときは通常の腋窩リンパ節郭清が行われます。

なお、センチネルリンパ節生検は確立された標準的な方法ですが、具体的な手技については、各施設でかなりばらつきがあります。例えば、センチネルリンパ節をみつけるのに使う薬剤や、それらを乳房のどこに注射するかも施設によってさまざまです。

また、熟練した医師が行っても、センチネルリンパ節がみつからない場合もあります。特に年齢が高く乳腺組織の少ない人や、診断のためにしこりを切除した人などでは発見できる確率が下がります。

●※●センチネルリンパ節生検の信頼性

センチネルリンパ節生検はすでに多くの施設で実施されており、それぞれの施設の検討では、十分信頼できる方法であることが報告されています。また、センチネルリンパ節生検だけを受けた人と、腋窩リンパ節郭清を受けた人では、短期間での生存率には差がないとするデータも示されています。

しかし、センチネルリンパ節生検で転移がないと診断されて、腋窩リンパ節郭清を省略した患者さんが、長期的にみて腋窩リンパ節郭清を受けた人と生存率が同じかどうかについては、まだ結果が出ていません。

●※●センチネルリンパ節生検の合併症

センチネルリンパ節生検に用いる色素で、まれにアレルギー症状が出ることがあります。また皮膚に色素の跡が残りますが、数週間で消えます。一方、放射性同位元素は非常に微量なため、人体にはほとんど悪影響がありません。センチネルリンパ節生検によるリンパ浮腫(術後の腕のむくみ)は、腋窩リンパ節郭清によるものと比較して少ないですが,まったくないわけではありません。

●※●センチネルリンパ節生検の不明確な点

センチネルリンパ節生検は、熟練した乳腺外科医が実施する限りは非常に有益な方法です。しかし、センチネルリンパ節生検は、1990年代ごろから導入された技術ですので、長期的な生存率、最適な薬剤と注射部位、術前化学療法を受けた方への適応など、はっきりわかっていない部分もいろいろあります。

■そもそも、なぜリンパ節を郭清するのか

腋窩リンパ節を郭清する目的は2つあります。1つは腋窩リンパ節への転移の有無、およびリンパ節の転移の個数を調べるという「診断」の目的です。もう1つは再発を防ぐという「治療」の目的です。

腋窩リンパ節への転移の有無の診断は、リンパ節郭清を行わなくとも、センチネルリンパ節生検によってできるようになりました。ただし、センチネルりンパ節に転移がある場合は、リンパ節郭清を行うことでリンパ節転移個数がわかり、転移個数に応じて再発の危険性が高くなるため、術後の治療方針を決めるうえで腋窩リンパ節郭清は重要な方法であるといえます。

次に再発を防ぐという「治療」の目的について説明します。腋窩リンパ節郭清を行ったあとの腋窩リンパ節からの再発はまれであることから、腋窩リンパ節の再発予防としての目的は達成されています。

しかし、腋窩リンパ節以外の臓器、例えば骨、肺、肝臓などの遠隔転移を予防する効果があるかどうかについてはさまざまな議論があります。過去に行われた多くの臨床試験を検討すると、腋窩リンパ節郭清を行わないと、術後の再発の危険性が高くなることも示されています。

したがって、腋窩リンパ節に転移がある場合には、腋窩リンパ節郭清を行うべきであると考えます。ただし、腋窩への放射線治療力が腋窩リンパ節郭清の代わりになる可能性があり、現在臨床試験で検討されています。

■リンパ節郭清の範囲
腋窩リンパ節郭清の範囲は、わきの下から鎖骨に向かって、レベルⅠからⅢに分けられます。リンパ節転移はレベルⅠからレベルⅡ、Ⅲへと順に進んで行くと考えられています。
したがって、腋窩リンパ節郭清は一番転移しやすいレベルⅠから順に行います。リンパ節郭清では、切除したリンパ節の個数より郭清した範囲が重要です。例えば、レベルⅠからⅡまでを郭清すると、通常10数個のリンパ節が切除されます。しかし、その個数は患者さんによって違うので、数が多く取れたからよいというわけではなく、レベルⅠからⅡの範囲がきれいに取りきれているということが重要視されます。

以前は、レベルⅠからⅢまで郭清することが一般的で、ときに乳房の内側部にある胸骨傍リンパ節や鎖骨の上にある鎖骨上リンパ節も郭清することがありました。しかし、このように広く郭清しても再発の危険性に変わりはなく、むしろ腕のむくみなどの合併症が出ることが多いため、現在ではレベルⅠまたはⅡまでの郭清にとどめ、腫大したリンパ節がある場合のみにレベルⅢの郭清を追加します。

■非浸潤がんの場合

がん細胞が乳管の中にとどまっている非浸潤がんの場合には、理論的にはリンパ節転移は起こらないため、腋窩リンパ節郭清はもちろんのこと、センチネルリンパ節生検すら行う必要はないと考えられます。ただし、非浸潤がんかどうかを手術前に正確に診断することは困難です。

手術前の針生検で非浸潤がんと診断されても、しこりが触れる場合や範囲が広い場合などには小さな浸潤(乳管の外にがんが出ている部分)が含まれている可能性があります。したがって、浸潤がんの可能性がある場合には、センチネルリンパ節生検を行ったほうがよいと考えられます。

一方、浸潤がんの可能性がない場合には、まず腫瘍切除術を行い、病理検査の結果、浸潤がんが認められた場合には、後日改めてセンチネルリンパ節生検を行うのがよいと考えられます。ただし、乳房切除術が行われる場合、後日センチネルリンパ節生検を行うことが技術的に難しいため、乳房切除術と同時にセンチネルリンパ節生検を行うべきであると考えられます。

以上、乳がんの手術についての解説でした。

がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。

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