肝臓がん治療の柱のひとつ「手術」は、開腹手術だけではありません。
2010年4月には「腹腔鏡手術」が健康保険の適用となりました。
腹腔鏡手術は胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がんなど、また、胸腔鏡手術は食道がん、肺がんなどにおいて広く行われポピュラーな位置を確立しつつあります。
腹腔鏡手術は、患者の腹部に1センチ程度の穴を4~5か所あけ、その穴から内視鏡の一種の腹腔鏡を入れて腹腔内をモニターに映し出して患部を確認します。そして他の穴からは鉗子など手術道具を挿入し、術者はモニターを見ながら手術道具を操作して、肝臓がんを切除する方法です。
切除した部分を取り出すために、最後に4センチ程度の切開を行うものの、開腹手術に比べると患者の体への負担はずっと少ないといえます。手術後、1週間程度で患者は退院することができますが、開腹ではそうはいきません。
現時点で、腹腔鏡手術がやりやすいとされているのは小さながんで、肝臓の左側の端、右側の端などです。端なので切る面が小さいのがやりやすいとされている理由です。最近では、区域切除なども腹腔鏡で試みられていますが、一般的ではありません。
腹腔鏡手術は肝臓を縦に切るのは比較的容易だとされていますが、横に切るのはかなり難しいといわれています。さらに、太い血管の近くは極めて難しく、肝臓内の血管を傷つけてしまうと生死にかかわります。がんがそのような場所にある場合は、開腹手術となります。
腹腔鏡手術は施設によって大きな技術差があります。このように保険適用となると「腹腔鏡手術はやっていません」とはいえないはずですが、腹腔鏡手術ができない施設は何事もなく従来の開腹手術を選ぶことになります。そういった意味では手術前のセカンドオピニオンが重要になります。
以上、肝臓がんの腹腔鏡手術についての解説でした。