こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
肝臓がんの治療において、手術と並んで重要な選択肢となっているのが「ラジオ波焼灼療法(RFA)」です。この治療法は、開腹手術を必要とせず、体への負担が少ないという特徴から、多くの患者さんに選ばれています。
本記事では、ラジオ波焼灼療法の具体的な治療方法、適応となる条件、治療成績、入院期間、副作用、そして実施できる病院について、2026年の情報を基に詳しく解説します。
ラジオ波焼灼療法(RFA)とは
ラジオ波焼灼療法は、1988年に米国で開発され、日本には1999年に導入されました。2004年に健康保険が適用となり、現在では肝臓がんに対する標準的な治療法として位置づけられています。
この治療法は、超音波(エコー)画像で観察しながら、皮膚から直径約1.5ミリの電極針を肝臓がんに刺し、AMラジオ並みの周波数である450キロヘルツから480キロヘルツの高周波電流を流します。
電極針の先端から発生する熱により、がん組織を50度から100度に加熱することで、がん細胞を凝固壊死させます。生卵をゆでると白く固まるのと同じ原理で、たんぱく質でできているがん細胞が熱によって変化し、死滅するのです。
日本では年間約38,000件のラジオ波焼灼療法が実施されており、これは米国の14,400件、中国の9,500件と比較しても世界で最も多い実施数となっています。
ラジオ波焼灼療法の具体的な治療方法
治療は以下のような手順で進められます。
まず、患者さんは治療ベッドに横たわり、腹部に局所麻酔を施します。多くの施設では、治療前に痛み止めの点滴を投与し、さらに鎮静剤を使用することで、患者さんが眠った状態で治療を受けられるようにしています。
次に、超音波画像をモニターで確認しながら、がんの位置を正確に把握します。肝臓内の血管などが針の通り道にならないよう注意しながら、電極針をがんの中心部に向けて刺入します。
針が目的の位置に到達したところで通電を開始します。1回の焼灼時間は8分から12分程度で、直径3センチ程度の球状の範囲を焼灼することができます。がんが2センチ以下であれば、1回の焼灼で治療を完了できる場合もあります。
がんの大きさが3センチを超える場合や、確実に治療するために安全域(マージン)を設ける必要がある場合は、電極針の位置をずらして複数回焼灼する「重ね焼き」という手法を用います。
治療全体にかかる時間は、がんの数や大きさによって異なりますが、通常30分から2時間程度です。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
ラジオ波焼灼療法が適応となる条件
日本肝癌研究会が編集する「肝癌診療ガイドライン2021年版」では、以下のような基準が示されています。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 肝機能 | Child-Pugh分類でAまたはB |
| がんの個数 | 3個以内(単発の場合は5cm以内も可) |
| がんの大きさ | 3cm以内 |
| 血管侵襲 | 門脈などへのがんの広がりがないこと |
| 遠隔転移 | 肺や骨などへの転移がないこと |
| 腹水 | ないか、薬で制御可能であること |
ただし、この「3センチ以内、3個以内」という基準には、厳密な科学的根拠があるわけではありません。これは、過去にエタノール注入療法を開発したグループが設定した基準を、ラジオ波焼灼療法が踏襲しているにすぎません。
実際の臨床現場では、施設や医師の判断により、この基準を超える症例にも治療が行われることがあります。年齢や持病などの理由で手術が困難な患者さんに対して、3センチをやや超える大きさや、3個を超える数のがんに対しても、ラジオ波焼灼療法が実施されるケースが増えています。
ただし、がんの大きさや数が多くなると、肝臓へのダメージが大きくなり、合併症のリスクが上昇することは理解しておく必要があります。
ラジオ波焼灼療法の治療効果と生存率
ラジオ波焼灼療法の治療成績は、手術療法と比較しても遜色ない結果が報告されています。
全国調査によると、がんの大きさが2センチから3センチの患者さんにおける5年生存率は54.5%となっています。一方、適応基準を厳守して治療を行っている施設では、5年生存率が60%から70%という良好な成績が報告されています。
| 施設 | 5年生存率 | 備考 |
|---|---|---|
| 全国平均 | 54.5% | 日本肝癌研究会調査 |
| 東京大学病院 | 約60% | 世界最多の治療実績 |
| 順天堂大学病院 | 約70% | 適応基準厳守 |
| 関東中央病院 | 51% | 切除不能例を含む |
また、局所再発率(治療した部分にがんが残ってしまい再発すること)は、5年間で3.2%と低率であり、高い根治性を持っていることが示されています。
ただし、肝臓がんは再発しやすいがんであり、術後5年で約80%の患者さんに新たながんが発生するといわれています。しかし、ラジオ波焼灼療法は体への負担が少ないため、再発した場合でも繰り返し治療を受けることができるという大きなメリットがあります。
入院期間と治療後の経過
ラジオ波焼灼療法の入院期間は、施設や病状によって異なりますが、一般的には以下のような経過をたどります。
治療の1日から3日前に入院します。入院後、病状および治療について、担当医から患者さん本人とご家族に詳しい説明があります。
治療当日は、朝から絶食となり、点滴を開始します。治療は通常30分から2時間程度で終了します。治療後は、出血などの合併症を防ぐため、6時間程度はベッド上で安静にする必要があります。この間、寝返りは可能ですが、起き上がることはできません。
治療翌日にCT検査を行い、がんが十分に焼灼されたかどうかを確認します。焼灼が不十分と判断された場合は、全身状態の回復を待って、入院中に再度治療を行うことがあります。
合併症がなければ、治療後3日から1週間程度で退院できます。施設によっては、治療の回数や方法を工夫することで、入院期間を1週間前後に短縮する取り組みも行われています。
| 時期 | スケジュール |
|---|---|
| 治療1-3日前 | 入院、説明 |
| 治療当日 | 絶食、治療(30分-2時間)、治療後6時間安静 |
| 治療翌日 | CT検査で効果判定 |
| 治療後3-7日 | 退院 |
| 退院後 | 1-3週間後に外来受診、その後3-4ヶ月ごとに検査 |
退院後は、1カ月から3週間後に外来を受診し、血液検査で肝機能の状態や腫瘍マーカーの値を確認します。その後は、3カ月から4カ月ごとにCTやMRIなどの画像検査で、再発の有無をチェックしていきます。
痛みと副作用について
治療中・治療後の痛み
ラジオ波焼灼療法は、局所麻酔下で行われるため、治療中の痛みは比較的軽度です。多くの施設では、局所麻酔に加えて、点滴から鎮痛剤や鎮静剤を投与することで、ほぼ100%の患者さんで無痛状態を実現しています。
焼灼時には、ある程度の痛みが生じることがありますが、痛み止めの追加投与で対応可能です。痛みが激しい場合には、麻酔科医による硬膜外麻酔を行うこともありますが、そこまで必要となるケースは稀です。
治療後の痛みは、治療部位や焼灼時間、患者さんの体質によって異なります。多くの場合、鎮痛薬を必要としない程度の軽い痛みで、数日間で消失します。
治療後の発熱
治療後に38度以上の発熱がみられることがありますが、これは組織が壊死する際の生体反応によるもので、通常は数日間で軽快します。
主な合併症
ラジオ波焼灼療法は比較的安全な治療法ですが、合併症が発生する可能性はあります。全国的な統計では、重篤な合併症の発生率は1.5%から2.7%程度とされています。
| 合併症 | 内容 |
|---|---|
| 出血 | 肝臓や肋間動脈からの出血。最も注意が必要 |
| 隣接臓器損傷 | 胃、腸、胆嚢、肺などの損傷 |
| 胆管障害 | 胆管を傷つけることによる障害 |
| 気胸 | 肺に穴が開く |
| 肝膿瘍 | 肝臓に膿がたまる |
| 播種 | 針を引き抜く際にがん細胞が運ばれる(0.2%程度) |
ラジオ波焼灼療法の特徴は、比較的低い周波数(450-480キロヘルツ)で組織をゆっくりと加熱するため、胆管のそばを走る血管によって冷却され、胆管障害のリスクが低いという点です。これは、2450メガヘルツという高周波で組織が急速に炭化してしまうマイクロ波凝固療法と比較した場合の大きな利点です。
合併症が発生した場合は、入院期間が延長したり、緊急の処置(輸血や手術など)が必要になることがあります。死亡例の報告もあり、東京大学病院の報告では、6,838例中5例(0.07%)でラジオ波焼灼療法後30日以内の死亡が報告されています。
ラジオ波焼灼療法を実施できる病院
ラジオ波焼灼療法は、専門的な技術と経験を要する治療法です。超音波画像を見ながら、がんの中心に正確に針を到達させる技術が不可欠であり、位置がずれると、がんが完全に死滅しないばかりでなく、正常な肝細胞まで失ってしまいます。
そのため、ラジオ波焼灼療法を受ける際は、豊富な経験と実績を持つ施設を選ぶことが重要です。
以下は、ラジオ波焼灼療法の実績が豊富な主要医療機関の例です。
| 医療機関 | 特徴 |
|---|---|
| 東京大学医学部附属病院 消化器内科 | 世界最多の治療実績(10,000例以上) |
| 順天堂大学医学部附属順天堂医院 | 日本で最も多くの症例を治療 |
| 三重大学医学部附属病院 | 肝臓2,000件以上、肺2,000件以上の実績 |
| 群馬県済生会前橋病院 | 造影エコーやマルチモダリティ技術を活用 |
| 大森赤十字病院 | 転移性肝癌にも積極的に対応 |
| 三井記念病院 | 無痛ラジオ波焼灼療法の実績豊富 |
これらの施設では、人工腹水法や造影超音波などの最新技術を用いることで、従来は治療が困難とされていた位置にあるがんや、他臓器に接しているがんにも対応できるようになっています。
また、施設によって治療方針や適応基準が異なる場合があるため、ある病院で治療が困難と言われても、他の施設では治療可能となることもあります。セカンドオピニオンを求めることも検討すべきでしょう。
ラジオ波焼灼療法のメリットとデメリット
メリット
ラジオ波焼灼療法の主なメリットは以下の通りです。
第一に、体への負担が少ないという点です。開腹手術と異なり、皮膚を小さく切開するだけで済むため、治療後の回復が早く、高齢者や肝機能が低下している患者さんでも治療を受けることができます。
第二に、繰り返し治療が可能という点です。肝臓がんは再発率が高く、5年で約80%の患者さんに再発がみられますが、ラジオ波焼灼療法は肝機能が許す限り何度でも受けることができます。
第三に、入院期間が短いという点です。通常1週間前後で退院できるため、日常生活への復帰が早く、社会的・経済的な負担も軽減されます。
第四に、治療効果が高いという点です。適応基準を守れば、手術療法と同等の5年生存率が得られることが報告されています。
デメリット
一方で、以下のようなデメリットも存在します。
第一に、手術療法と比較すると、局所再発率がやや高いという点です。超音波画像による間接的な観察が治療のベースとなるため、治療が不十分になる可能性があります。
第二に、がんの位置や大きさによっては治療が困難という点です。他臓器に近い場所や、超音波で観察しにくい位置にあるがんは、治療が難しい場合があります。
第三に、合併症のリスクがあるという点です。出血や臓器損傷などの合併症が1.5%から2.7%の確率で発生します。
ラジオ波焼灼療法の費用について
ラジオ波焼灼療法は、2004年4月から肝細胞癌に対する保険適用治療として認められています。2004年6月からは転移性肝癌に対しても保険適用となっています。
保険適用により、患者さんの自己負担額は、加入している健康保険の種類や高額療養費制度の利用により異なりますが、一般的な3割負担の場合、数万円から十数万円程度となります。
また、がんの治療に伴う医療費が高額になった場合には、高額療養費制度を利用することで、所得に応じた自己負担限度額を超えた分が払い戻されます。
おわりに
肝臓がんのラジオ波焼灼療法は、1999年の日本導入以来、技術の進歩と実績の蓄積により、手術療法と並ぶ標準的な治療法として確立されました。
体への負担が少なく、繰り返し治療が可能であるという特徴から、特に肝機能が低下している患者さんや高齢の患者さんにとって、有効な治療選択肢となっています。
治療効果については、適応基準を守れば手術療法と同等の成績が得られることが報告されており、5年生存率は54%から70%程度とされています。
ただし、がんの位置や大きさ、個数によっては治療が困難な場合もあり、合併症のリスクも完全にはゼロではありません。また、施設や医師の経験・技術により治療成績に差が出る可能性もあります。
そのため、ラジオ波焼灼療法を検討する際は、担当医とよく相談し、自分の病状に最も適した治療法を選択することが重要です。必要に応じてセカンドオピニオンを求めることも検討してください。
肝臓がんの治療は、ラジオ波焼灼療法だけでなく、手術療法、肝動脈塞栓療法、薬物療法、放射線療法など、複数の選択肢があります。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあり、患者さんの病状、肝機能、年齢、全身状態などを総合的に判断して、最適な治療法を選択することが求められます。
参考文献・出典情報
- 肝臓がんの「ラジオ波焼灼療法」治療の進め方は?治療後の経過は? - がんプラス
- ラジオ波焼灼術とは - 東京大学医学部附属病院消化器内科 肝臓がん治療チーム
- 肝細胞がんの患者さんへ - 順天堂大学医学部附属順天堂医院
- ラジオ波焼灼療法とマイクロ波凝固術 - 群馬県済生会前橋病院
- 肝癌に対するラジオ波治療について - 大森赤十字病院
- 無痛ラジオ波焼灼療法 - 三井記念病院
- 肝臓がんの治療=ラジオ波焼灼療法= - がん情報サイト「オンコロ」
- 切らずに治す肝臓がん-ラジオ波焼却療法 - 関東中央病院
- 肺がんに対するRFA(ラジオ波焼灼療法) - 三重大学医学部附属病院
- 肝臓がんのラジオ波焼灼療法と肝動脈化学塞栓療法の選択基準とは - がんプラス
