「医療保険」とは?
医療保険とは、病気やケガで入院したり、手術を受けたりしたときに給付金を受け取ることのできる保険です。三大疾病(脳卒中・心筋梗塞・がん)に特化した保険や、女性特有の病気(婦人科がん・乳がん・子宮筋腫など)に対する保障が手厚いものなど、さまざまな特徴をもった商品があります。
また、「特約」と呼ばれるオプションを追加することで、特定の病気や治療などに対する保障を手厚くすることができます。とくに最近は、がんにかかったときに備えて「がん保険」や「がん特約」に加入している人が増えています。
がん保険は、がんになった場合の保障に特化された医療保険で、一般的な総合医療保険よりも比較的少ない掛金で保障が受けられるという利点があります。
一方、がん特約は総合医療保険などに追加するオプションです。掛金を追加することで、がんになった場合に重点的に保障を受けることができます。
しかし、どちらも条件によっては保障が受けられないこともあるので、保険会社に任せたままにせず、ご自身でしっかり内容を確認しておく必要があります。
「がん保険」の5つの特徴
一般的な総合医療保険に比べて、がん保険には次の①から⑤のような特徴があります。ちなみに、脳卒中や心臓病などの病気が対象に含まれる「総合医療保険」でも、がんは保障の対象になっていますが、保障額はがん保険ほどではありません。
①診断給付金
がん保険は、入院・手術の際の保障が基本ですが、最近のがん保険のほとんどは、これに加えて、がんと診断されたときに一時金として100万円程度の「診断給付金」が受けられる特約をつけています。
診断給付金とはいいますが、入院や治療のための進備、通院のための交通費や食事代などはもちろん、子どもの教育費や生活費など、何に使っても問題ありません。
商品によって、給付金の支払いが1度だけに限られるものと、がんが再発した場合や別の部位に新たにがんが見つかった場合に再度給付金が受け取れるものがあります。
また、がんの初期状態である「上内皮がん」と診断された場合は、一般的ながんである「悪性新生物」と同等に給付金が受け取れる場合と、減額される場合、給付の対象外となる場合があります。
②入院給付金の日数が無制限
総合医療保険では、1回の入院における入院給付金の支払い限度日数が一般的には60日と決まっていますが、がん保険にはそのような制約がありません。
最近では、がん治療の入院期間は短くなる傾向にありますが、長期に入院せざるを得なくなった場合でも、日数に応じた給付金を受け取ることができます。
③通院給付金
近年、がん治療では抗がん剤や分子標的薬などによる薬物療法(以下、抗がん剤治療)、放射線療法の進歩により、通院治療が可能なケースが増えています。
従来のがん保険では通院時には給付金が受けられないものがほとんどでしたが、最近では、特約により通院給付金が受け取れる商品も増えています。
ただし、商品によっては対象が入院前や退院後の通院に限られるものや、日数が制限されるものもあります。また、通院給付金は通院日数に応じて支払われることが多く、その場合は通院にかかった費用がすべて保障されるわけではありません。
④抗がん剤治療特約
抗がん剤治療は、数カ月から半年以上の長期にわたるため、その間、治療費を払いつづける必要があります。とくに近年登場している分子標的薬を使う場合、1日の治療費が数万円に及ぶことも多く、治療を続けることが困難になるケースも少なくありません。
こうしたニーズに応える商品はこれまでほとんどありませんでしたが、最近になって通院給付金とは別に、抗がん剤治療を行った場合に月額10万円程度の給付金を受け取ることができる「抗がん剤治療特約」を追加できる商品も出ています。ただし、商品によっては、給付金の支払い対象となる抗がん剤の種類が限られる場合もあります。
⑤先進医療特約
がんの治療では、重粒子線治療などの先進医療も行われています。しかし、健康保険が適用されないため、治療を受けるには多額の費用がかかります。そのため、最近のがん保険の中には、先進医療を受けた場合に1000万円程度の保障が受けられる商品もあります。
ただし、先進医療特約の対象は、厚生労働省から先進医療と認定された治療に限られており、保険がきかない民間の免疫療法などは対象となりません。
また、がんの状態や全身状態などによって、先進医療による治療が適当と判断されない場合も多く、実際に受けられる人はわずかという現状も知っておいたほうがいいでしょう。
給付金をきちんと受け取る
がん保険の給付金は治療完了後に支払われるものだと思っている人もいますが、実は、手術・入院・通院などの給付金は、治療が完了していなくても、申請すればその時点までの給付金を受け取ることができます。
申請の際には、医師の診断書と保険会社が指定する請求書のほか、入院や通院の日数が記載された医療機関の領収書などが必要な場合もあります。領収書は医療費控除を受ける際にも必要になるので、保険会社にはコピーを渡し、原本はきちんと保存しておくことが大切です。
保険会社にもよりますが、通常は申請書類が保険会社に到着してから3日から2週間程度で給付金が支払われます。詳しくは、各保険会社の担当者か相談窓口に尋ねましょう。
なお、がん保険は、申し込みを完了した後、すぐに保障期間が始まるわけではありません。初期のがんは自覚症状がない場合も多く、保険の加入時に本人も気づかないうちにがんにかかっていることもあります。
このような場合の保険金の支払いを防ぎ、契約の公平性を保つために、がん保険には通常90日程度の免責期間が設けられています。免責期間中にがんと確定診断されても、保障を受けることはできません。もし、がんであることを隠して加入した場合は、告知義務違反となり、契約が解除されます。
がん保険を選ぶとき、見直すときのポイント
家族ががんにかかると「自分もがん保険に入っておいたほうがいいのでは・・・」と考える人も多いかもしれません。しかし、内容をよく確認せずに、保険に加入してしまうのは早計です。
がんの治療には法外なお金がかかると思い込みがちですが、高額療養費制度などの公的な制度を利用すれば、自己負担額を低額に抑えられることもあります。
ある生命保険会社が、がんの治療を受けた人に対して行った調査では、治療にかかった金額の総額(入院・食事・交通費等を含む)は「50万円以下」「100万円以下」という回答が6割を超えています。
100万円以下なら、診断一時金だけでも十分まかなうことができます。がん保険を検討するなら、本当に必要な保障みを選択し、あとは貯蓄で準備しておくのも方法です。
病気はがんだけに限りません。さまざまな病気のリスクと掛金、保障額を総合的に判断し、バランスよく備えることがポイントです。
一方、すでにがん保険に加入している場合は、定期的に保障の内容を見直すことが大切です。がんの治療法は日々進歩しており、それに合わせてがん保険の保障内容も変化しています。
従来のがん保険には、入院・手術の際の保障のみのタイプも数多くありましたが、本文でも触れたように、最近では通院による治療が増えており、そうした保険だといざというときに必要な保障が受けられない可能性もあります。加入後でも診断一時金や通院給付金を特約の形で追加できる商品もあるので、保険会社に確認してみましょう。
特約が追加できない場合は、新たな商品に加入し直した方がいいのか、それともその分を貯蓄などの別の方法で準備した方がいいのか、検討が必要です。解約して新たに加入し直した場合、現在の年齢が加入年齢となり、以前に比べて掛金が増えてしまうので注意しましょう。
以上、がんに関する保険についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。