子宮体がんにおいて、がんを小さくすることが実証されている抗がん剤には、プラチナ製剤のシスプラチン、カルボプラチンのほか、アドリアマイシン(ドキソルビシンの慣用名)や、タキサン系のパクリタキセルやドセタキセルがあります。実際の治療では、これらの薬を組み合わせて行われることが多くなります。
アドリアマイシンは、放線菌を培養してつくられたアンスラサイクリン系の抗がん性抗生物質で、子宮体がんの「キードラッグ(鍵となる薬)」として、以前から重用されています。
ただし、ある程度以上の量を使うと心臓にダメージを与え、心不全などを起こすことがあるため、投与は総投与量500mg/m2までに制限されています。
この欠点を改善すべく開発されたのが、エビルビシンです。アドリアマイシンより心臓に対する問題や骨髄抑制が少ないのが利点です。
もう1本の柱が、プラチナ製剤です。代表格はシスプラチンですが、シスプラチンと同程度の効果があって、つらい副作用が少ないカルボプラチンもよく用いられます。タキサン系製剤のパクリタキセルとドセタキセルもよく使われます。
ホルモン療法に通常用いられるのは、メドロキシプロゲステロン(MPA)という錠剤の黄体ホルモン剤です。まれに血栓症という重大な副作用がありますが、リスクのある人は、予防的に抗血小板薬を一緒に服用します。
なお、欧米における術後補助療法は、長い間、放射線療法が中心でした。ところが、2006年にアメリカで行われた放射線療法と「AP療法(アドリアマイシン+シスプラチン)」を比較した試験で、AP療法が生存率で優れていたという結果が報告され、化学療法が広がるきっかけになりました。
いまではAP療法が世界標準になっており、術後化学療法でも、全身化学療法でも第1選択とされる治療法となっています。ただし、昨今では新しい抗がん剤も出ており、それらを組み合わせた子宮体がんに対する薬物療法の研究も進んでいます。
例えば、AP療法とパクリタキセル+カルボプラチンの「TC療法」、ドセタキセル+シスプラチンの「DP療法」の3つの多剤併用療法を比較した臨床試験の追加調査が日本では進んでいます。
パクリタキセル+アドリアマイシン+シスプラチンの「TAP療法」の3剤併用療法はAP療法より治療効果が高いことが証明されましたが、副作用が強く出てしまったため普及しませんでした。子宮体がんの化学療法についてはまだまだ検証が必要で、新薬の開発を含め、発展途上の段階といえます。
子宮体がんによく使われる薬
<抗がん剤>
・プラチナ製剤
シスプラチン(CDDP):製品名ブリプラチン、ランダ
カルボプラチン(CBDCA):製品名パラプラチン
・代謝拮抗薬
フルオロウラシル(5-FU):製品名5-FU
・植物アルカロイド
パクリタキセル(PAC):製品名タキソールなど
ドセタキセル(DOC):製品名タキソテール
・抗がん性抗生物質
アドリアマイシン(ADM)[ドキソルビシン(DXR)]:製品名アドリアシン
エピルビシン(EPI):製品名ファルモルビシン
・アルキル化剤
シクロホスファミド(CPA):製品名エンドキサン
<黄体ホルモン剤>
メドロキシプロゲステロン(MPA):製品名ヒスロンH
以上、子宮体がんの薬物療法についての解説でした。