遺伝子治療とは、遺伝子の働きをコントロールする新しい治療法です。がん抑制遺伝子とは、がんの増殖を抑える働きをもつ遺伝子ですが、がんになった人の大半で、がん抑制遺伝子に変異が生じています。
肺がんでも、その発症とp53遺伝子というがん抑制遺伝子との関連が報告されています。このp53遺伝子が壊れるとがんの増殖を抑えることができなくなり、がん発症につながってしまいます。肺がんの遺伝子治療ではp53遺伝子製剤を体内に投与することで、遺伝子ががんを抑制する本来の働きを取り戻すことが狙いです。
また、がん細胞を自殺させる働きもあることから、がん細胞が死滅して小さくなる効果が期待されています。
肺がんで遺伝子治療が適応となる人
遺伝子治療は手術がむずかしく、放射線療法や化学療法でも効果が十分ではない人、転移や再発した人が対象となります。ただし、p53伝子製剤を使った遺伝子治療で効果があるのは、p53遺伝子に変異のある患者さんだけです。
ちなみに喫煙者は非喫煙者と比べて、p53遺伝子の変異が多いといわれています。また、p53遺伝子に変異がある人では、抗がん剤や放射線の効果が出にくいこともあることから、遺伝子治療を放射線治療や抗がん剤と組み合わせて使うこと(集学的治療)で、相乗効果が期待できるともいわれています。
遺伝子治療の方法と費用
遺伝子治療法では、まずがん細胞中のp53遺伝子に変異があるかどうかを調べます。そして、p53遺伝子に変異が発見された場合のみに治療をおこないます。
点滴または局部注射でおこなう治療法であり、局部注射の場合には、気管支鏡やCTを用いて体内外からがん組織にp53遺伝子製剤を注射します。基本的には1週間に1回の投与をおこない合計6回1クールとします。
しかし遺伝子治療も免疫療法と同じように研究段階の治療法であるため保険適用外となっています。治療費の自己負担額は病院によっても異なりますが、1クールでおよそ100~200万円程度が目安となるでしょう。
遺伝子治療は正常な細胞へのダメージが少ないため、副作用が少ない治療法です。主な副作用としては、投与後に調度前後の発熱があらわれます。しかしこれは一過性のもので、多くの場合は自然に軽快します。
以上、肺がんの遺伝子治療についての解説でした。