子宮頸がんにおいて、早期の場合は円錐切除術をまず行うのが標準治療です。円錐切除術で対応できないと考えられる場合は子宮の全摘手術が提案されます。
50歳以上の患者さんや45歳以上で月経が不順(閉経真近)な方の場合、子宮頸がんにおける円錐切除術にはリスクがあります。30歳代までの方の場合はがんが膣腔側にせり出してくるため、奥行きを1.5cmほど切除すれば断端陽性(がんの残存)は少ないのですが、閉経以後になると、病巣は奥に向かって伸びていく傾向が強まり、断端陽性となる可能性が高くなり、根治(目に見えるがんを全て取りきれる)確率が低くなります。
また、月経がなくなると、子宮頸部が狭くなり、子宮の奥側のがん検診ができなくなります。すると、適切な検診ができないため、がんが進行して初めて診断がつくという事態になってしまうことがあります。
そのため、多くの病院では閉経近くの方、50歳を超えている方には円錐切除術は行わずに、子宮全摘術が提案されるのです。
子宮全摘術にはおなかを切る方法(腹式単純子宮全摘術)と、おなかを切らずに膣のほうから子宮を全摘する方法(膣式単純子宮全摘術)がありますが、後者の膣式単純子宮全摘術を行うことが多いです。この手術は術前2日、術後5~7日の入院で、3週間程度で日常生活への復帰が可能です。
「膣式単純子宮全摘術」とは、卵巣やリンパ節は切除しないで、子宮だけを摘出する手術です。一般的には、早期の子宮頸がんで妊娠を希望しない方へ、円錐切除術に次ぐ選択肢として行われています。
「膣式単純子宮全摘術」は、良性の子宮筋腫の場合にも行う手術ですが、0期がんでは、子宮頸部に接する膣壁も5mm以上切除することと、子宮頸部筋層に切り込まずに子宮外膜の外側で切除することから「拡大」という言葉が付き、「膣式拡大単純子宮全摘術」といいます。
45歳以上の場合、子宮膣部円錐切除術より、膣式拡大単純子宮全摘術のほうがメリットが大きいといえます。子宮全摘術後に膣壁に0期がんが出てきたということもありますが、その頻度は少なく、99%は手術で根治が可能と考えられ、将来的な膣がん発生の可能性は低いといえます。
以上、子宮頸がんの手術についての解説でした。