
食道がんの手術後は、飲み込み機能の低下だけでなく、呼吸や発声に関する問題が生じることがあります。
これらの問題は日常生活に影響を与えますが、適切なリハビリテーションによって改善が期待できます。
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こんにちは。17年間の活動実績を持つ、
「プロのがん治療専門アドバイザー」本村ユウジです。
がんを治すために必要なことは、たった1つです。
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→がんを治すための「たった1つの条件」とは?
食道がん手術後に生じる主な問題
食道がんの手術では、食道の切除とともに周囲の組織やリンパ節を取り除きます。この際、声帯そのものを切除しない場合でも、発声に関係する反回神経などの神経が影響を受けることがあります。
術後に現れやすい症状として、高い声が出しにくくなる、声量が低下する、声がかすれる、声が震えるなどの発声に関わる問題があります。また、深い呼吸がしにくい、痰がからむのに排出しにくい、咳をする力が弱まるといった呼吸機能の低下も見られます。
これらの症状は、胸部や頸部の手術による影響、術後の痛みによる呼吸制限、長期間の安静による体力低下などが原因となります。適切なリハビリテーションを行うことで、これらの機能を段階的に回復させることができます。
術前からのリハビリテーション準備
食道がん手術後のリハビリテーションを効果的に進めるには、術前からの準備が重要です。手術前に呼吸法や痰の出し方を練習しておくことで、術後の回復がスムーズになります。
深呼吸の練習方法
術後すぐに深呼吸をしようとしても、痛みや手術の影響でうまくいかないことがあります。術前から深呼吸の練習をしておくと、術後の呼吸が楽になります。鼻からゆっくり息を吸い込み、口からゆっくり吐き出す練習を1日数回繰り返します。
腹式呼吸の習得
腹式呼吸は、術後の呼吸機能維持に重要な役割を果たします。仰向けに寝た状態で、お腹に手を置き、息を吸うときにお腹が膨らむことを確認しながら練習します。胸で呼吸するのではなく、横隔膜を使ってお腹で呼吸する感覚を身につけます。
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術後の呼吸リハビリテーション
食道がん手術後は、胸部の切開や痛みにより呼吸機能が低下します。呼吸リハビリテーションは、肺炎などの合併症を予防し、呼吸機能を回復させるために欠かせません。
痰を排出させる方法
仰向けに寝ていると、痰が背中側にたまってしまいます。体位を変えることで、痰が移動して排出しやすくなります。具体的には、ベッドの頭側を少し高くする、横向きになる、座位をとるなどの方法があります。
痰を出すときは、まず腹式呼吸で深く息を吸い込み、お腹に力を入れながら「ハッハッ」と短く強く息を吐き出します。これにより、弱った咳の力を補って痰を排出しやすくなります。
呼吸訓練の進め方
術後の呼吸訓練は、段階的に進めることが大切です。最初は浅い呼吸から始め、徐々に深い呼吸へと移行します。痛みがある場合は、創部を手で押さえながら呼吸することで痛みを軽減できます。
インセンティブスパイロメトリーという器具を使用することもあります。これは、息を吸い込むことで器具内のボールが上がる仕組みで、目標を視覚的に確認しながら深呼吸の練習ができます。
嚥下リハビリテーションの実践
食道がん手術後は、嚥下機能が低下し、飲み込みがスムーズにいかなくなることがあります。誤嚥性肺炎を予防するためにも、嚥下リハビリテーションは重要です。
嚥下訓練の基本的な流れ
嚥下訓練は、飲食物を使わない間接訓練から始め、徐々に実際の飲食物を使った直接訓練へと進めます。間接訓練では、頬や舌を動かす、唾液を飲み込む、発声練習をするなど、嚥下に関わる筋肉を鍛えます。
直接訓練では、とろみのついた飲み物やゼリー状の食品から始めます。これらは誤嚥しにくく、飲み込みやすい性状をしています。徐々に形態を変えながら、通常の食事に近づけていきます。
安全な飲み込み方のポイント
飲み込むときの姿勢は重要です。顎を引いて、やや前かがみの姿勢をとることで、気管への誤嚥を防ぎやすくなります。食べ物を口に入れたら、しっかり咀嚼してから飲み込みます。
一度に多くの量を口に入れず、少量ずつゆっくり食べることも大切です。食後は咽頭に食べ物のかけらが残っていることがあるため、複数回の空嚥下(何もない状態で飲み込む動作)を行います。
| 食品の形態 | 特徴 | 導入時期の目安 |
|---|---|---|
| とろみ付き飲料 | 誤嚥しにくく、飲み込みやすい | 嚥下訓練の初期 |
| ゼリー・プリン | まとまりがあり、口腔内で安定 | 訓練開始後1〜2週間 |
| ペースト食 | 滑らかで飲み込みやすい | 訓練開始後2〜3週間 |
| 軟飯・軟菜 | 咀嚼が必要だが柔らかい | 訓練開始後4〜6週間 |
| 通常食 | 制限なし | 個人差あり(数ヶ月〜) |
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誤嚥性肺炎への対応
誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液が気管に入ることで起こる肺炎です。食道がん手術後は嚥下機能が低下しているため、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
誤嚥性肺炎の症状
誤嚥性肺炎は、通常の肺炎のような高熱や激しい咳などの症状があまり現れないことがあります。なんとなく元気がない、食欲が低下する、微熱が続く、痰の量が増えるなど、軽い症状が多いのが特徴です。
このため、症状に気づくのが遅れることがあります。体調の変化を見逃さず、異変を感じたら早めに医療者に相談することが大切です。
誤嚥性肺炎の治療と予防
誤嚥性肺炎と診断された場合は、抗菌薬の点滴などで治療します。繰り返し発症する場合は、耳鼻咽喉科で咽頭の状態を詳しく調べ、嚥下機能評価を再度行います。その結果に基づいて、飲み込みの訓練方法を見直します。
予防としては、食事の姿勢に注意する、食後すぐに横にならない、口腔内を清潔に保つなどが効果的です。また、定期的な嚥下訓練を継続することで、嚥下機能を維持・改善できます。
発声リハビリテーション
食道がん手術で喉頭を部分的または全体的に切除した場合、発声機能に影響が出ます。切除の範囲によって、必要なリハビリテーションの内容は異なります。
反回神経麻痺による発声障害
喉頭を温存できた場合でも、手術中に反回神経が影響を受けることで声帯の動きが悪くなり、発声に問題が生じることがあります。この場合、声帯の筋力を高める訓練や、残った機能を活用する発声法の練習を行います。
リハビリテーションでは、発声時の姿勢や呼吸法、声の出し方を工夫します。言語聴覚士の指導のもと、効率的な発声方法を身につけることで、コミュニケーションの質を改善できます。
喉頭全摘出後の発声法
喉頭を全て切除した場合には、永久気管孔(気管を首の前面で皮膚に固定した状態)となり、声帯を失うため従来の方法では声を出せなくなります。しかし、代替の発声法を習得することで、意思疎通が可能になります。
食道発声法は、空気を食道に取り込み、それを吐き出すときに食道入口部を振動させて音を出す方法です。習得には数ヶ月から1年程度の訓練期間が必要ですが、器具を使わずに発声できる利点があります。
電気式人工喉頭は、首に当てる器具から振動を与えて音声を作り出す方法です。比較的短期間で使用できるようになりますが、機械的な音質になります。最近では音質が改善された製品も開発されています。
永久気管孔の管理
永久気管孔にした場合、空気の通り道が食道と完全に分離されるため、飲食物が気管に入る危険性はなくなります。一方で、日常的なケアが必要になります。
永久気管孔のケアポイント
通常、鼻から空気を吸い込むと適度な湿り気が与えられますが、永久気管孔では直接外気が気管に入るため乾燥しやすくなります。孔をガーゼや専用の保護具で覆うことで、ほこりの侵入を防ぎ、適度な湿度を保つことができます。
気管孔周囲の皮膚は清潔に保ち、分泌物がたまらないように定期的に清拭します。入浴時には気管孔に水が入らないよう注意が必要です。専用の入浴用カバーを使用すると安全です。
なお、喉頭を全て切除した場合は、身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳(音声・言語機能障害3級)の交付を受けることができます。これにより、補装具の給付や医療費助成などの支援を受けられます。
リハビリテーションの期間と進め方
食道がん術後のリハビリテーション期間は、手術の範囲や個人の回復状況により異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
| 時期 | 期間 | 主なリハビリ内容 |
|---|---|---|
| 急性期 | 術後1〜2週間 | 呼吸訓練、体位変換、早期離床 |
| 回復期 | 術後2〜6週間 | 嚥下訓練開始、歩行訓練、日常生活動作訓練 |
| 維持期 | 術後6週間以降 | 機能維持・向上のための継続訓練 |
リハビリテーションは医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士などの多職種チームで進められます。患者さん一人ひとりの状態に合わせて、個別のリハビリテーション計画が立てられます。
退院後も、外来でのリハビリテーション継続や自宅での訓練が重要です。定期的な評価を受けながら、長期的な視点で機能回復を目指します。
リハビリテーションを効果的に進めるために
食道がん手術後のリハビリテーションを効果的に進めるには、いくつかのポイントがあります。
まず、痛みのコントロールです。痛みがあると十分な呼吸や運動ができないため、適切な鎮痛薬の使用が重要です。痛みを我慢せず、医療者に伝えることが大切です。
次に、栄養状態の維持です。リハビリテーションには体力が必要ですので、十分な栄養摂取を心がけます。経口摂取が難しい時期は、経腸栄養や静脈栄養で栄養を補います。
また、前向きな気持ちを保つことも重要です。リハビリテーションは時間がかかり、思うように進まないこともありますが、小さな改善を積み重ねていくことが大切です。家族のサポートや医療チームとのコミュニケーションも、モチベーション維持に役立ちます。
リハビリテーションは、単に機能を回復させるだけでなく、生活の質を向上させることを目指します。辛い症状があっても、あきらめずに適切なリハビリテーションを続けることで、呼吸が楽になり、痰も出しやすくなり、食事も楽しめるようになることが期待できます。

