がん専門のアドバイザー、本村です。
この記事では「永久気管孔(えいきゅうきかんこう)」について解説します。
永久気管孔の基礎知識
人間が呼吸をするとき、空気は鼻または口から入り、咽頭、喉頭、気管、気管支を通って肺に運ばれます。また、食事をするときは食べものや飲みものが口から入り、咽頭、食道を通って胃へと運ばれます。
呼吸による空気の入り口と、食事による食べものの入り口の2つの入り口の部分がのど(咽頭と喉頭)です。のどのうち空気の通り道としての喉頭には、呼吸をする最初の通り道であると同時に声帯を震わせて声を出す働きと、食事のときに食べものや飲みものが気管に入らないようにする働きがあります。
手術で喉頭を切除した場合には、新しく呼吸のための出入り口をつくらなければ呼吸ができなくなり、また、そのままでは食べものや飲みものが口から入ると、気管に誤嚥(誤って飲み込むこと)してしまいます。
そのために、気管を前のほうに出して首の皮膚に縫いつけて、呼吸をする入り口をつくり、食事の通り道と分けてしまいます。この呼吸のためにあけた穴を「永久気管孔」といいます。この穴は、一生ふさがらないようになっています。
永久気管孔をつくれば喉頭を切除したあとでも、呼吸ができ、食事も摂取できるようになります。しかし、声帯もなくなるため、従来の発声ができなくなります。
永久気管孔の管理
永久気管孔の管理について注意すべき点は、まず、鼻や口から息を吸ったり吐いたりができなくなるため、匂いをかいだり、食べものや飲みものをすすることができなくなります。匂いがわかりづらくなるので刺激物などの摂取には、くれぐれも注意が必要です。
また、気管孔からは、ほこりや冷気、乾燥した空気などが、直接肺に入り込むため、ガーゼやマスク、市販のエプロンなどで穴を保護するようにします。
気管孔がふさがれると、息ができなくなりますから、水泳や入浴時に首までつかることはできません。ただ、多少水が入っても、穴から咳や痰は出るので、それほど神経質になる必要はないといえます。
永久気管孔後の発声法
残念ながら、声帯がなくなると声は出せなくなりますが、いろいろな発声法で代用することができます。その方法として、「食道発声法」と「電気発声法」などがあります。
・食道発声法
口や鼻から空気を食道に入れ、それを吐き出して発声する方法です。道具の必要もなく、大変便利です。この方法を習得すると嗅覚(匂いに対する感覚)も戻り、すすり込みや鼻をかんだりできるようにもなります。習得するまでには多少の時間を要しますが、一般的には、約2週間で第一声が出せるようになります。日常会話の習得には、3~6か月かかるようです。
食道発声法は、1人で習得するのは難しいので、全国にある発声教室で練習するのが一般的です。
・電気発声法
エレクトロラリンクス、ネオボックス、ゼルボックスなどの人工発声装置がよく使われます。小さな電気カミソリのような器械をのどの皮膚にあてて、電気で振動させながら、口を動かして声を出す方法です。マイクが振動を発し、その振動がのどと口を通ることで、声をつくります。
特別な訓練は必要なく、練習すれば誰にでも比較的簡単に習得できます。ただ、片手で器械を持たなければならないので、どうしても不自由さがつきまといます。また、電子的な声になります。
器械は高価なものなのですが、身体障害者に認定されると補助金が出ます。器械の購入方法は病院で尋ねてみましょう。
なお喉頭全摘術を受けられた人は、身体障害者障害程度等級の3級に認定されます。住んでいる市町村役場の福祉係の窓口で、手続きの方法や申請できる条件、優遇措置の内容などを聞きましょう。