【レジメン】
Osimertinib(オシメルチニブ:タグリッソ)=1回80mg:1日1回 経口 連日投与 PD(増悪)まで
※患者の状態により適宜増減するが、1日1回50mgまで増量できる
基本事項
【適応】
EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がん
【奏効率】(国際共同第Ⅲ相臨床試験(AURA3試験/FLAURA試験))
<FLAURA試験(一次治療)>
・奏効率(CR+PR)
80%
・病勢コントロール率(CR+PR+SD)
97%
・無増悪生存期間(中央値)
18.9カ月
<AURA3試験(二次治療)>
・奏効率(CR+PR)
71%
・病勢コントロール率(CR+PR+SD)
93%
・無増悪生存期間(中央値)
10.1カ月
【副作用】(国際共同第Ⅲ相臨床試験(AURA3試験))
・発疹:All Grade=34%、Grade3以上=1%
・皮膚乾燥:All Grade=23%、Grade3以上=0%
・爪囲炎:All Grade=22%、Grade3以上=0%
・下痢:All Grade=41%、Grade3以上=1%
・口内炎:All Grade=15%、Grade3以上=0%
・悪心:All Grade=16%、Grade3以上=1%
・食欲減退:All Grade=16%、Grade3以上=1%
・倦怠感:All Grade=16%、Grade3以上=1%
・血小板減少:All Grade=10%、Grade3以上=<1%
・好中球減少:All Grade=8%、Grade3以上=1%
・AST上昇:All Grade=5%、Grade3以上=1%
・ALT上昇:All Grade=6%、Grade3以上=1%
・QT延長:All Grade=5.0%、Grade3以上=0.9%
・間質性肺疾患:All Grade=3.7%、Grade3以上=1.2%
レジメンチェックポイント
①EGFR遺伝子異常のタイプの確認
ほかのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬による治療歴を有し、病勢進行が確認されている患者では、EGFR T790M変異を確認する。一次治療の患者においてもEGFR遺伝子変異の有無を確認する
②副作用に対する休薬・減量および中止基準の確認
・間質性肺疾患/肺臓炎=本剤の投与を中止する
・QT間隔延長:500msecを超えるQTc値が認められる=481msec未満またはベースラインに回復するまで本剤を休薬する。481msec未満またはベースラインに回復した後、本剤を減量(1日1回40mg)し、投与を再開する3週間以内に回復しない場合は本剤の投与を中止すること。重篤な不整脈の症状/兆候を伴うQT間隔延長=本剤の投与を中止する
・その他の副作用:Grade3以上=Grade2以下に改善するまで本剤を休薬する。Grade2以下に回復した後、必要に応じて本剤の減量を考慮し、投与を再開する。3週間以内にGrade2以下に回復しない場合は本剤の投与を中止すること
③併用薬の確認
・QT延長を引き起こしやすい薬剤(抗不整脈薬、向精神薬など)を使用している患者は、併用によりQT延長が増強する可能性があるため、特に注意が必要である
・フェニトイン、リファンピシンなどのCYP3A誘導薬と併用することで、本剤の血中濃度が低下する可能性がある
・本剤はbreast cancer resistance protein(BCRP)を阻害することが示されているため、BCRPの基質であるロスバスタチン、サラゾスルファピリジンなどの血中濃度を上昇させる可能性があるため注意する
④注意喚起カード携帯の確認
担当医から「注意喚起カード(タグリッソを服用される患者さんへ)」を受け取っていることを確認する。調剤する際には、緊急時の連絡先が担当医より案内されていることを確認する
副作用対策と服薬指導のポイント
①間質性肺疾患:急性肺障害、間質性肺疾患があらわれることがあるので、患者には初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱など)を伝え、早期の医療機関への受診について指導する
②QT延長:QT延長を引き起こす可能性があるため、定期的に心電図や電解質検査を実施しているか確認する。特にQT延長を引き起こしやすい薬剤を併用している場合には、注意が必要である
③皮膚障害:発疹、ざ瘡様皮疹が強くあらわれることが多いため、あらかじめ症状などを説明しておく必要がある。対応については以下のアルゴリズムを参照
<ざ瘡様皮疹の治療指針>
・軽症
副腎皮質ステロイド外用薬を用いる。部位により、medium~very strongの軟膏、クリーム、ローション基剤を選択する。頭部はローション剤、顔面・体幹は軟膏、クリーム剤が使いやすいが、ローション剤やクリーム剤は時に刺激を感じることがあり、基剤選択にも留意する。なお、ミノサイクリンの予防内服も有用である。原疾患の治療は継続可能である
・中等症
軽症よりランクアップした副腎皮質ステロイド外用薬を用いる。なお、掻痒を伴う場合は、抗アレルギー薬を併用するが、接触性皮膚炎や白癬を併発していることがあり、悪化するときには皮膚科専門医の介入が必要である。なお、原疾患の治療は継続可能である。ミノサイクリン100~20Omg/日内服が目安となる
・重症
原疾患の治療薬を休薬のうえ、皮膚科専門医へ紹介する。基本的には、2週間を目安に副腎皮質ステロイドを内服で投与する
③下痢:重篤な下痢を発症する場合もあるため、患者観察時には脱水などの症状に留意し、早期の対処療法(整腸剤、ロペラミドなど)を行う