【レジメン】
CDDP(シスプラチン)=80mg/m2:点滴静注(2時間以上)
VNR(ビノレルビン)=25mg/m2:静脈注射(10分以内)
<放射線併用時>
CDDP=80mg/m2:点滴静注(2時間以上)
VNR=20mg/m2:静脈注射(10分以内)
放射線=2Gy/回:1日1回 合計60Gy
【投与前】
1,000~2,000mLの輸液
【制吐対策】
①5-HT3受容体拮抗薬(Day1)
②アプレピタント:125mg (Day1) ,80mg(Day2~3)
③デキサメタゾン:9.9mgIV(Day1),8mgPO(Day2~4)
④オランザピン:5mg(Day1~4)(糖尿病患者には禁忌)
【投与後】
①1,000~2,000mLの輸液
②20%マンニトール200~300mL、フロセミド注10mg(必要に応じ投与)
③Day8(VNR単剤投与の場合):VNR投与直後に200mL程度の生理食塩液などの輸液で血管内を流す
※VNRは血管痛および静脈炎の頻度が高く、予防をする必要がある
基本事項
【適応】
非小細胞肺がん
・StageⅢBおよびStageIV
・放射線併用:StageⅢaT1-3N2M0の外科的切除不能症例およびStageⅢB
【奏効率】
・奏効率
33.1%
・生存期間(中央値)
11.4カ月
・1年生存率
48.3%
・2年生存率
21.4%
【副作用】
・白血球減少:Grade2=25%、Grade3=51%、Grade4=16%
・貧血:Grade2=43%、Grade3=25%、Grade4=5%
・悪心:Grade2=33%、Grade3=14%
・嘔吐:Grade2=29%、Grade3=7%、Grade4=0%
・食欲不振:Grade2=29%、Grade3=20%、Grade4=1%
・便秘:Grade2=40%、Grade3=14%、Grade4=0%
・倦怠感:Grade2=23%、Grade3=3%、Grade4=0%
・注射部位反応:Grade2=27%、Grade3=0%
レジメンチェックポイント
①投与前の確認:輸液の前負荷、制吐薬
②投与量の確認
<CDDP:腎障害時の減量基準>
・GFR(mL/min)=10~50:25%減量、10>:50%減量
または
・Ccr(mL/min)=60~46:25%減量、45~31:50%減量、30≧:使用中止
<VNR:肝障害時の減量基準>
・T-Bil=2,1~3.0mg/dL、VNR投与量=50%減量
・T-Bil=>3.0mg/dL、VNR投与量=75%減量
<VNR>
投与前の白血球数が2,000/mm3未満の場合には投与を延期し、2,000/mm3以上に回復するのを待って投与する
③点滴速度の確認
・CDDP:2時間以上かけて点滴静注
・VNR:生理食塩液50mLに溶解し、静脈内に暖徐に注射(投与開始から10分以内に終了)
④相互作用
VNR:アゾール系抗真菌薬、マクロライド系抗菌薬、カルシウム拮抗薬、ベンゾジアゼピン系薬剤など、CYP3A4阻害薬の併用により代謝が阻害され副作用が強くあらわれることがある。また、CYP3A4誘導薬およびCYP3A4を基質とする薬剤との併用はVNRおよび併用薬の体内動態に対して影響を及ぼす可能性がある
CDDP:アミノグリコシド系抗菌薬、バンコマイシン、注射用アムホテリシンB、フロセミドとの併用で腎障害リスク増大。アミノグリコシド系抗菌薬、バンコマイシン、フロセミドとの併用で聴器障害リスク増大。フェニトインとの併用でフェニトインの血漿中濃度が低下したとの報告がある
副作用対策と服薬指導のポイント
①悪心・嘔吐:CDDPは90%に急性、30~50%に遅発性の悪心・嘔吐の発現があり得る。患者の症状に留意し必要に応じて制吐薬の追加を行う。また、デキサメタゾン、アプレピタント、オランザピンの服用意義を説明する
②腎障害:CDDPでは予防として水分の摂取を心がけるように伝える(目安:1.5~2L/日程度)。アミノグリコシド系抗菌薬との併用で増強されることがある。尿量の確保、体重測定を行い、適宜、利尿薬を併用する
③神経障害:CDDPでは手足のしびれなどの末梢神経障害と4,000~8,000Hz付近の高音域聴力障害が問題とされている。一般的にCDDPの総投与量が300~500mg/m2以上になると聴器障害の頻度が高くなると報告されており、軽度なものは投与中止により軽減することもあるが、不可逆的な場合も少なくない
④血管外漏出:血管外漏出時は冷却は避け、保温が望ましい
⑤イレウス・便秘:VNRではイレウス、便秘の頻度が高いため、激しい腹痛、嘔吐などの発現があり得る。排便コントロールを行うなどの患者観察が必要である
⑥白血球・好中球減少:VNRの用量規制因子は白血球・好中球減少であり、重篤な白血球減少に起因した治療関連死が認められている。そのため、頻回に臨床検査を行うなど、患者の状態を十分に観察し、患者には感染予防(手洗い、うがい、マスクの着用など)の励行を指導する必要がある