【レジメン】
Capecitabine(カペシタビン:ゼローダ):経口(1日
Lapatinib(ラパチニブ:タイケルブ)=1,250mg/day:経口(1日1回、食事中・食事の前後1時間を避けて内服)
基本事項
【適応】
転移・再発症例
・HER2陽性(IHC3+またはFISH陽性)で、アントラサイクリン系薬剤、タキサン系薬剤およびTrastuzumabによる治療後増悪例、もしくは再発症例
【奏効率】
・全生存期間(中央値)
75週
【副作用】
・下痢:Grade1=27%、Grade2=20%、Grade3=12%、Grade4=1%
・悪心:Grade1=29%、Grade2=13%、Grade3=2%、Grade4=0%
・嘔吐:Grade1=18%、Grade2=6%、Grade3=2%、Grade4=0%
・口内炎:Grade1=10%、Grade2=4%、Grade3=0%、Grade4=0%
・手足症候群:Grade1=10%、Grade2=32%、Grade3=7%、Grade4=0%
・腹痛:Grade1=8%、Grade2=6%、Grade3=1%、Grade4=0%
・便秘:Grade1=9%、Grade2=1%、Grade3=0%、Grade4=0%
・胃腸症状:Grade1=8%、Grade2=3%、Grade3=0%、Grade4=0%
・皮疹:Grade1=20%、Grade2=7%、Grade3=1%、Grade4=0%
・皮膚乾燥:Grade1=11%、Grade2=0%、Grade3=0%、Grade4=0%
・倦怠感:Grade1=10%、Grade2=6%、Grade3=2%、Grade4=0%
・粘膜炎:Grade1=7%、Grade2=4%、Grade3=0%、Grade4=0%
・頭痛:Grade1=5%、Grade2=4%、Grade3=0%、Grade4=0%
・四肢痛:Grade1=8%、Grade2=4%、Grade3=<1%、Grade4=0%
・背部痛:Grade1=5%、Grade2=4%、Grade3=1%、Grade4=0%
・食欲不振:Grade1=11%、Grade2=4%、Grade3=<1%、Grade4=0%
・呼吸困難:Grade1=5%、Grade2=3%、Grade3=3%、Grade4=0%
レジメンチェックポイント
①投与量の確認
<Capecitabine:減量の目安>
・体表面積1.36m2未満:減量段階1=900mg、減量段階2=600mg
・体表面積1.36m2以上1.41m2未満:減量段階1=900mg、減量段階2=600mg
・体表面積1.41m2以上1.51m2未満:減量段階1=1,200mg、減量段階2=600mg
・体表面積1.51m2以上1.66m2未満:減量段階1=1,200mg、減量段階2=900mg
・体表面積1.66m2以上1.81m2未満:減量段階1=1,200mg、減量段階2=900mg
・体表面積1.81m2以上1.96m2未満:減量段階1=1,500mg、減量段階2=900mg
・体表面積1.96m2以上:減量段階1=1,500mg、減量段階2=900mg
※いったん減量した後は増量は行わないこと2回、朝・夕食後 30分以内に内服)
<Capecitabine投与量>
・体表面積1.36m2未満=1,200mg
・体表面積1.36m2以上1.66m2未満=1,500mg
・体表面積1.66m2以上1.96m2未満=1,800mg
・体表面積1.96m2以上=2,100mg
<Capecitabine:有害事象発現時の休薬・減量の規定>
・Grade2:休薬(最大14日間)Grade1以下に回復後は右記の基準に従う、治療再開時の投与量1回目=減量不要または減量段階1、2回目=減量段階1、3回目=減量段階2、4回目=投与中止
・Grade3:休薬(最大14日間)Grade1以下に回復後は右記の基準に従う、治療再開時の投与量1回目=減量段階1、2回目=減量段階2、3/4回目=投与中止
・Grade4:休薬(最大14日間)Grade1以下に回復後は右記の基準に従う、治療再開時の投与量=減量、継続、再開などは事象ごとに判断
<Capecitabine:血液検査異常発現時の休薬・減量の規定>
・500/mm3≦Neu<1,000/mm3、25,000/mm3≦Pt<75,000/mm3、6.59/dL≦Hb<9.0g/dL、1.5mg/dL<Cre≦6×ULN、Ccr<40mL/min:休薬(最大14日間)Grade1以下に回復後は右記の基準に従う、治療再開時の投与量1回目=減量不要または減量段階1、2回目=減量段階1、3回目=減量段階2、4回目=投与中止
・Grade4:休薬(最大14日間)Grade1以下に回復後は右記の基準に従う、治療再開時の投与量=減量、継続、再開などは事象ごとに判断
<Lapatinib:有害事象発現時の休薬・減量および中止基準(駆出率低下、間質性肺炎、肝機能検査値異常以外)>
・Grade2:継続、治療再開時の投与量1/2回目=減量不要、3回目=減量不要または減量(1,000mg/day)、4回目=減量(1,000mg/day)
・Grade3:休薬(最大14日間)Grade1以下に回復後は右記の基準に従う、治療再開時の投与量=減量不要または減量(1,000mg/day)して投与再開
・Grade4:休薬(最大14日間)Grade1以下に回復後は右記の基準に従う、治療再開時の投与量=減量、継続、再開などは事象ごとに判断
<Lapatinib:血液検査異常発現時の休薬・減量の規定>
・500/mm3≦Neu<1,000/mm3、25,000/mm3≦Pt<75,000/mm3、6.59/dL≦Hb<9.0g/dL、1.5mg/dL<Cre≦6×ULN、Ccr<40mL/min:休薬(最大14日間)Grade1以下に回復後は右記の基準に従う、治療再開時の投与量1回目=減量不要、2回目=減量不要または1,000mg/day、3回目=減量不要または1,000mg/day、4回目=投与中止
・NeU<500/mm3、Pt<25,000/mm3、Hb<6.5g/dL、Cre>6×ULN:休薬(最大14日間)Grade1以下に回復後は右記の基準に従う、治療再開時の投与量=減量、継続、再開などは事象ごとに判断
<Lapatinib:肝機能検査値異常による休薬・減量および中止基準>
・T-Bil>2.0×ULN(D-Bil>35%)、ALT>3.0×ULN=中止
・T-Bil上記以外、ALT8.0×ULN / >5.0×ULN(無症候性にて2週間継続)/ >3.0×ULN(症候性)=休薬(2週後に再検査)、有効性が得られている場合は1,000mg/dayに減量して再開可能
・T-Bil上記以外、ALT>3.0×ULN(無症候性)=継続(1週間ごとに再検査)、ALT>3.0×ULNが4週間継続した場合は中止
・ALT≦3.0×ULN=継続
<Lapatinib:駆出率低下および間質性肺炎による休薬・減量および中止基準>
・無症候性の駆出率低下:発現回数1回目=投与継続(1~2週後に再検査)→回復:投与継続
・無症候性の駆出率低下:発現回数1回目=投与継続(1~2週後に再検査)→持続:休薬(3週以内に再検査)→回復:1,000mg/dayに減量して再開可能
・無症候性の駆出率低下:発現回数1回目=投与継続(1~2週後に再検査)→持続:休薬(3週以内に再検査)→持続:中止
・無症候性の駆出率低下:発現回数2回目(減量前)=1回目に準じる
・無症候性の駆出率低下:発現回数2回目(減量後)=中止
・症候性の駆出率低下、間質性肺炎(Grade3、4)=中止
②併用薬の確認
・Capecitabine
ワルファリンとの併用によりワルファリンの効果が強く出てしまうため、また、フェニトインとの併用によりフェニトインの血中濃度が上昇することがあるため、併用薬の確認を行う(CapecitabineがCYP2C9の酵素活性を低下させている可能性が考えられている)
・Capecitabine
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(ティーエスワン)は併用禁忌(ギメラシルによりCapecitabineの代謝活性体であるフルオロウラシルの代謝が阻害され、著しくフルオロウラシルの血中濃度が上昇するため)。投与されていないこと、および投与中止後7日以上あいていることを確認する
・Lapatinib
CYP3A4、CYP2C8、P糖タンパク、BCRP、OATP1B1の基質、もしくは、これらの阻害作用をもつため,、これらの酵素や輸送タンパクに関連する薬剤との相互作用に注意する。特に抗不整脈薬は、本剤との併用によりQT間隔延長が発現、または悪化する可能性があり、必要な観察を行うなど十分に注意する
副作用対策と服薬指導のポイント
①Lapatinibは高脂肪食摂取後内服によりAUCが4.25倍になる(白色人種のデータ)との報告があり、食事の影響を受けやすいため、食事前後1時間を避けて内服する
服用期間中はグレープフルーツ食品を摂取しないように指導する(Lapatinibの血中濃度が上昇することがある)
Capecitabineは食後30分以内に内服となっており、服用のタイミングが異なることから、Lapatinibは起床時に内服するなど、患者の理解を得られやすい用法を相談して決める
②手足症候群
LapatinibおよびCapecitabineは手足症候群の発症頻度が高いため、手や足の裏に痛みや違和感などの症状があらわれたら、申し出るように伝える
③下痢
LapatinibおよびCapecitabineは下痢により脱水症状があらわれる可能性があるため、下痢になった場合はぬるま湯などで水分補給を行うように伝える。特にひどい場合は申し出るように伝える
④皮膚症状
Lapatinibにより発疹や掻痒、皮膚乾燥、爪の障害、手足症候群などの皮膚症状が高い頻度で認められている。主に頭部・顔部を含む上半身での発現を認めるため、予防として保湿クリームの塗布などにより乾燥を防ぐこと、紫外線を避けることを説明する
⑤間質性肺炎
Lapatinibにより間質性肺炎のリスクがあるため、息切れや呼吸困難などの症状があれば、直ちに申し出るように伝える
⑥口内炎
Capecitabineの長期間の使用により口内炎などのリスクも高くなるため、口腔内の清潔保持について説明し、生活指導も含め理解してもらう