
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
喉頭がんと診断された患者さんやご家族にとって、どのような治療を選択するかは重要な決断となります。特に放射線治療は、声を残せる可能性があることから、多くの患者さんが関心を持つ治療法です。
この記事では、喉頭がんの発生部位によるタイプの違い、ステージ別の放射線治療の進め方、治療効果、後遺症や副作用について詳しく解説します。
喉頭がんの主な原因と近年の傾向
喉頭がんの原因として最も大きな割合を占めるのは喫煙です。長期間の喫煙習慣がある方は、喉頭がんのリスクが高まることが知られています。
ただし、喫煙歴のない方でも喉頭がんを発症するケースがあります。この場合、胃液や胃酸などの逆流による慢性的な刺激が誘因として考えられています。
近年、食生活の欧米化に伴って胃食道逆流症の患者さんが増加しています。このため、今後日本においても喉頭がんの患者数が増える可能性が指摘されています。予防の観点からも、喫煙習慣の見直しや逆流性食道炎への適切な対処が重要です。
喉頭がんの3つのタイプと発生部位による特徴
喉頭がんは発生する部位によって、大きく3つのタイプに分類されます。それぞれのタイプで症状の現れ方や治療方針が異なります。
声門上部がん
声門上部がんは、声帯より上の部分に発生するがんです。喫煙と飲酒の両方が関係していると考えられています。
このタイプの特徴として、初期段階では声がれの症状が必ずしも現れないことが挙げられます。そのため、発見が遅れる傾向があります。無症状のまま病巣が大きくなり、気道が狭くなる気道狭窄や、飲み込みが困難になる嚥下困難などの症状で初めて発見されることもあります。
声門部がん
声門部がんは、声帯そのものに発生するがんで、喉頭がんの中で最も発生頻度が高いタイプです。主な原因は喫煙とされています。
声帯に直接がんが発生するため、早い段階から声がれの症状が現れます。このため、他のタイプと比較して早期発見されやすい傾向があります。早期に発見されれば、声を残す治療の選択肢が広がります。
声門下部がん
声門下部がんは、声帯より下の部分に発生するがんです。飲酒が関係していると考えられています。
声門上部がんと同様に、初期には声がれが現れにくいため、発見が遅れることがあります。咳や呼吸困難などの症状で見つかるケースもあります。
| タイプ | 発生部位 | 主な原因 | 初期症状 | 発見のしやすさ |
|---|---|---|---|---|
| 声門上部がん | 声帯より上 | 喫煙・飲酒 | 声がれが出にくい | やや遅れやすい |
| 声門部がん | 声帯 | 喫煙 | 声がれが早期に出る | 比較的早い |
| 声門下部がん | 声帯より下 | 飲酒 | 声がれが出にくい | やや遅れやすい |
喉頭がんの病期(ステージ)分類と治療方針
喉頭がんの治療方針を決定する際には、がんの進行度を示すステージが重要な判断材料となります。ステージは腫瘍の大きさ、リンパ節への転移の有無、他の臓器への転移の有無などによって判定されます。
早期がん(ステージI・II)では、がんが喉頭内に限局しており、声帯の動きが保たれているか、軽度の制限がある程度です。この段階では放射線治療が第一選択となることが多く、声を残せる可能性が高くなります。
進行がん(ステージIII・IV)では、腫瘍が大きくなっているか、リンパ節への転移がある、または声帯の動きが固定されている状態です。以前は喉頭全摘術という手術が標準的な治療でしたが、現在では患者さんの生活の質を重視して、化学放射線療法を選択するケースが増えています。
声門部がんに対する放射線治療の詳細
声門部がんは喉頭がんの中で最も多いタイプであり、早期発見されやすいことから、放射線治療の対象となることが多いタイプです。
早期がんと進行がんの治療方針の違い
従来は、早期がんには放射線治療単独、進行がんには喉頭全摘術という手術が標準的な治療方法でした。
しかし近年では、患者さんの生活の質(QOL)を重視する考え方が広まり、進行がんに対しても化学放射線療法(抗がん剤と放射線治療の併用)が積極的に検討されるようになっています。
声を失うことは、他者とのコミュニケーションに大きな支障をきたし、日常生活や仕事、社会生活において深刻な問題となります。そのため、可能な限り声を温存できる治療法が選ばれる傾向にあります。
放射線治療の具体的な照射方法
早期喉頭がんの放射線治療では、4メガボルト(MV)のエックス線が使用されます。これは体内の深い部位にあるがん細胞まで十分な線量を届けることができるエネルギーレベルです。
照射野の設定は、声門を中心として5センチメートル×5センチメートル、または6センチメートル×6センチメートルの範囲となります。照射する範囲は以下のように設定されます。
- 喉頭の皮膚表面から約1.0センチメートル程度離す
- 上側:上甲状切痕の上方まで
- 下側:輪状軟骨下縁まで
- 後側:椎体前縁の位置まで
照射は左右対向2門照射という方法で行われます。これは左右両側から均等に放射線を当てる方法です。また、線量分布を改善して正常組織への影響を減らすために、ウエッジフィルタという器具が使用されるのが原則です。
治療期間と総線量
標準的な照射スケジュールは、1回あたり2グレイ(Gy)の線量を、30日間かけて照射し、総線量60グレイとなります。週5日の照射で約6週間の治療期間となります。
治療中は、頸部を正確な位置に固定するために「シェル」と呼ばれる固定具が使用されます。これにより、毎回同じ位置に正確に放射線を照射することができます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 使用するエックス線 | 4メガボルト(MV) |
| 照射野の大きさ | 5cm×5cm または 6cm×6cm |
| 照射方法 | 左右対向2門照射 |
| 1回線量 | 2グレイ(Gy) |
| 総線量 | 60グレイ(Gy) |
| 治療期間 | 約30日間(6週間) |
| 固定具 | シェル(頸部固定具) |
放射線治療の効果と制御率
放射線治療の効果は、がんの進行度(ステージ)によって異なります。治療効果の指標として、5年制御率が用いられます。これは、治療後5年間にわたってがんが制御されている(再発していない)患者さんの割合を示します。
早期がんの制御率
早期喉頭がん(ステージI・II)に対する放射線治療の5年制御率は、69パーセントから94パーセントと報告されています。この数値は、早期に発見された喉頭がんに対して放射線治療が高い効果を示すことを意味しています。
声を温存しながら、これだけ高い治療効果が得られることが、早期喉頭がんにおいて放射線治療が第一選択となる理由です。
進行がんの制御率
進行喉頭がん(ステージIII・IV)の場合、5年制御率は42パーセントから67パーセント程度となります。早期がんと比較すると制御率は低下しますが、手術と組み合わせた治療や、化学療法との併用によって成績の向上が図られています。
進行がんでは、がんの広がりやリンパ節転移の有無によって個々の患者さんで状況が大きく異なるため、治療方針は主治医と十分に相談して決定することが重要です。
| 進行度 | 5年制御率 | 治療方針 |
|---|---|---|
| 早期がん(I・II期) | 69~94% | 放射線治療単独が第一選択 |
| 進行がん(III・IV期) | 42~67% | 化学放射線療法、または手術との組み合わせ |
放射線治療による後遺症と副作用
放射線治療には、治療中や治療後に現れる後遺症や副作用があります。これらを理解しておくことで、適切な対処が可能になります。
主な後遺症と副作用
喉頭がんの放射線治療で見られる主な後遺症や副作用は以下の通りです。
声がれの悪化
治療前から声がれがある場合、治療中にさらに悪化することがあります。これは放射線による喉頭の炎症や浮腫(むくみ)が原因です。治療終了後、数週間から数か月かけて徐々に改善していくことが多いですが、完全には元に戻らないこともあります。
咽頭痛
喉の痛みは多くの患者さんが経験する副作用です。照射部位の粘膜に炎症が起こることで生じます。痛みのために食事が取りにくくなることもあります。
咳
喉の刺激により咳が出やすくなります。特に乾燥した環境では症状が強くなることがあります。
皮膚発赤
照射部位の皮膚が赤くなったり、ひりひりとした感覚が生じたりします。日焼けのような状態になることもあります。
長期的な後遺症
治療後の長期的な影響として、以下のような症状が残る可能性があります。
- 声質の変化(かすれ声の持続)
- 喉の乾燥感
- 嚥下時の違和感
- 首の皮膚の色素沈着や硬化
- 唾液分泌の減少
治療中の注意点と生活上の配慮
放射線治療の効果を高め、副作用を軽減するためには、治療中の生活習慣に注意を払うことが大切です。
過度の声出しを避ける
治療中は咽頭痛や声がれなどの症状を悪化させないために、大声を出したり長時間話し続けたりすることは避けるべきです。声を使う職業の方は、休職や業務調整が必要になる場合があります。
飲酒を控える
飲酒は喉頭の浮腫(むくみ)を引き起こす原因となります。治療効果を低下させる可能性もあるため、治療中は飲酒を控えることが強く推奨されます。
禁煙の徹底
治療後に喫煙を継続すると、予後が不良となることが明らかになっています。再発リスクが高まるだけでなく、新たながんの発生リスクも上昇します。治療を機に完全に禁煙することが望ましいです。
その他の生活上の配慮
- 刺激の強い食べ物(辛いもの、熱いもの、酸っぱいもの)を避ける
- 十分な水分補給を心がける
- 室内の湿度を保つ
- 首の皮膚を清潔に保ち、刺激を避ける
- 栄養状態を良好に保つ
| 注意事項 | 理由 |
|---|---|
| 過度の声出しを避ける | 咽頭痛・声がれの悪化を防ぐ |
| 飲酒を控える | 喉頭浮腫の原因となる |
| 禁煙を徹底する | 予後不良、再発リスク上昇を防ぐ |
| 刺激物を避ける | 粘膜への刺激を減らす |
| 水分補給 | 喉の乾燥を防ぐ |
化学放射線療法について
進行した喉頭がんに対しては、放射線治療と抗がん剤治療を組み合わせた化学放射線療法が選択されることが増えています。
この治療法は、抗がん剤によってがん細胞を放射線に対して感受性を高める効果があり、放射線治療単独よりも高い治療効果が期待できます。一方で、副作用も強くなる傾向があります。
使用される抗がん剤としては、シスプラチンやカルボプラチンなどのプラチナ製剤が一般的です。治療スケジュールは患者さんの全身状態や年齢、他の疾患の有無などを考慮して決定されます。
治療後の経過観察と再発への対応
放射線治療終了後も、定期的な経過観察が必要です。治療後の経過観察では、以下のような検査が行われます。
- 喉頭の内視鏡検査
- 頸部の触診
- CT検査やMRI検査(必要に応じて)
- PET-CT検査(再発が疑われる場合)
経過観察の間隔は、治療後1~2年は1~3か月ごと、3~5年は3~6か月ごと、5年以降は6~12か月ごとが目安となります。
万が一再発した場合には、再発の部位や範囲、患者さんの全身状態などを総合的に判断して、追加の放射線治療、手術、化学療法などが検討されます。
声を残すための治療選択の重要性
喉頭がんの治療において、がんを治すことは最優先の目標ですが、同時に患者さんのその後の生活の質も重要な考慮事項です。
声を失うことは、仕事や家庭生活、社会生活において大きな影響を及ぼします。そのため、治療効果と声の温存のバランスを考えながら、最適な治療法を選択することが求められます。
早期に発見されれば、放射線治療によって声を残しながら高い治療効果を得ることが可能です。声がれなどの症状があれば、早めに耳鼻咽喉科を受診することが重要です。
治療を受ける医療機関の選択
喉頭がんの放射線治療は、専門的な知識と経験を持つ施設で受けることが望ましいです。
選択の際には、以下のポイントを確認すると良いでしょう。
- 放射線治療の実績(年間治療件数など)
- 放射線治療専門医の在籍
- 頭頸部がんの治療経験が豊富な耳鼻咽喉科医との連携
- 最新の放射線治療機器の有無
- 化学放射線療法の実施体制
- 治療後のフォローアップ体制
がん診療連携拠点病院や、頭頸部がんの専門的な治療を行っている施設を選ぶことが一つの目安となります。

