こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
抗がん剤治療を受けることになった患者さんやご家族から「どんな副作用が出るのか」「いつから症状が始まるのか」「どのくらい続くのか」といった質問を多くいただきます。
抗がん剤の副作用は、使用する薬の種類や患者さんの体調によって異なりますが、ある程度の傾向を知っておくことで、心の準備や対処がしやすくなります。
この記事では、2026年の最新情報をもとに、抗がん剤治療で起こりうる副作用の種類、発現時期、対処法について分かりやすく解説します。
抗がん剤の副作用はなぜ起こるのか
抗がん剤は、がん細胞の増殖を抑えたり、がん細胞を死滅させたりする働きを持つ薬です。
血液を通じて全身に行き渡り、手術では取り除けない小さながん細胞や、離れた場所に転移したがん細胞にも作用します。これが抗がん剤治療の大きな利点です。
しかし、抗がん剤は細胞分裂が盛んな細胞に作用するという特徴があります。がん細胞は確かに分裂が活発ですが、正常な細胞の中にも、骨髄の造血細胞、消化管の粘膜細胞、毛根の細胞など、活発に分裂している細胞が存在します。
抗がん剤はこれらの正常細胞にも影響を与えてしまうため、さまざまな副作用が現れるのです。
抗がん剤の種類による副作用の違い
現在使用されている抗がん剤は、大きく分けて以下の種類があります。それぞれ作用する仕組みが異なるため、副作用の種類や程度も変わってきます。
細胞障害性抗がん剤
従来から使われている抗がん剤で、がん細胞のDNAや細胞分裂に必要な構造を破壊することで効果を発揮します。
細胞分裂が盛んな正常細胞にも影響を与えやすいため、吐き気、脱毛、骨髄抑制(白血球や血小板の減少)、口内炎、下痢などの副作用が比較的高い頻度で現れます。
アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、植物アルカロイドなど、さまざまな種類があります。
分子標的薬
がん細胞に特有の分子(タンパク質や受容体など)を狙い撃ちする薬です。
正常な細胞への影響を抑えながら、がん細胞をピンポイントで攻撃できるため、細胞障害性抗がん剤と比べて副作用は軽減される傾向にあります。
ただし、皮膚障害(にきび様の発疹、乾燥、かゆみ)、下痢、肝機能障害、高血圧などの特有の副作用が出ることがあります。また、薬剤によっては間質性肺炎などの重篤な副作用が報告されています。
免疫チェックポイント阻害薬
患者さん自身の免疫の力を利用してがんを攻撃する薬です。T細胞の働きを抑制する「免疫のブレーキ」を解除することで、がん細胞を免疫の監視下に引き戻します。
免疫が活性化されることに伴う副作用として、関節炎、かゆみ、だるさ、吐き気、下痢のほか、間質性肺炎、重度の皮膚障害、肝機能障害、甲状腺機能障害などが現れることがあります。
従来の抗がん剤とは異なるタイプの副作用が出るため、適切なモニタリングが必要です。
抗がん剤の主な副作用一覧
抗がん剤治療で起こりうる主な副作用を一覧表にまとめました。すべての副作用が必ず起こるわけではなく、個人差があることを理解しておいてください。
| 副作用の種類 | 主な症状 | 影響を受ける組織 |
|---|---|---|
| 吐き気・嘔吐 | 胸のあたりのムカムカ感、実際に吐いてしまう | 消化管粘膜、脳の嘔吐中枢 |
| 食欲不振 | 食べ物を受け付けない、食べたいと思わない | 消化管粘膜 |
| 口内炎 | 口の中の粘膜が赤く腫れる、潰瘍ができる、痛み | 口腔粘膜 |
| 下痢 | 水様便、頻回の排便 | 腸管粘膜 |
| 便秘 | 排便回数の減少、腹部の張り | 腸管の運動機能 |
| 脱毛 | 頭髪、眉毛、まつ毛、体毛が抜ける | 毛根細胞 |
| 骨髄抑制 | 白血球減少、血小板減少、貧血 | 骨髄の造血細胞 |
| 感染症 | 発熱、肺炎、尿路感染など | 免疫機能(白血球減少による) |
| 倦怠感 | だるさ、疲れやすさ | 全身 |
| 末梢神経障害 | 手足のしびれ、感覚異常 | 末梢神経 |
| 皮膚の異常 | 色素沈着、乾燥、発疹、手足症候群 | 皮膚 |
| 肝機能障害 | 検査値の異常(自覚症状は少ない) | 肝臓 |
| 腎機能障害 | 検査値の異常(自覚症状は少ない) | 腎臓 |
副作用の発現時期と持続期間
抗がん剤の副作用は、出現する時期がある程度予測できます。特に細胞障害性抗がん剤では、過去の治療経験から、どの時期にどのような症状が出やすいかが分かっています。
治療直後から24時間以内
アレルギー反応、急性の吐き気・嘔吐、血圧低下、不整脈、呼吸困難などが現れることがあります。
急性嘔吐は抗がん剤治療前に制吐薬を投与することで、多くの場合予防できます。
治療開始から1〜2週間
吐き気や食欲低下、だるさ、口内炎、下痢などの症状が現れやすい時期です。
24時間以降から1週間ほどの間に起こる遅発性嘔吐もこの時期に含まれます。
また、白血球(特に好中球)の数が減少し始めるのもこの時期です。一般的に、抗がん剤治療開始後の1週間から10日目頃に白血球の減少が始まります。
治療開始から2週間前後
脱毛、手足のしびれ、皮膚の異常(色素沈着や乾燥など)が現れ始めます。
脱毛は抗がん剤投与開始の2〜3週間後に始まることが多く、治療中は続きます。治療終了後、3〜6ヶ月程度で発毛に向かうケースが多いです。
骨髄抑制も10日目から2週間頃に最低値となりますが、3週間後程度で回復してきます。
治療開始から4週間以降
末梢神経障害による手足のしびれ感、耳鳴りなどの神経毒性が現れることがあります。
これらの症状は、治療が終わった後も影響が残る場合があります。
副作用の程度には個人差がある
同じ抗がん剤を使用しても、副作用の出方は患者さんによって異なります。
副作用の出現頻度、程度、時期には、使用する抗がん剤の種類のほか、患者さんの体調、体質、年齢、がん以外の病気の有無、別の薬との飲み合わせ、特定の食品との食べ合わせなどが影響します。
また、副作用の程度とがんに対する効果は必ずしも比例しません。「副作用が強く出たから効果もある」「副作用が出なかったから効果もない」というわけではないのです。
主な副作用の詳細と対処法
吐き気・嘔吐
抗がん剤治療で最も代表的な副作用の一つです。消化管の粘膜や脳の神経(嘔吐中枢)が刺激されて起こります。
症状が生じやすさ(催吐リスク)に応じた制吐療法が行われます。多くの場合、急性嘔吐は抗がん剤治療前に制吐薬を投与すれば予防できます。
吐き気を感じた際は、内服薬や座薬で症状の改善ができるため、我慢せずに医師に相談することが大切です。
食事は無理に取らず、食べられるものを少しずつ口にすることから始めます。冷たいもの、さっぱりしたもの、においの少ないものが食べやすい傾向があります。
脱毛
高頻度で発現する副作用の一つです。抗がん剤は毛根にある毛母細胞にダメージを与えて、毛髪だけでなく眉毛、まつ毛、体毛などの脱毛を引き起こします。
ただし、すべての薬剤で必ず脱毛が起こるわけではなく、薬剤の種類や投与方法によって程度は異なります。
2025年時点では、頭皮を冷却することで血流を抑え、薬剤が毛根に届きにくくする「スカルプクーリング」と呼ばれる方法が使われることもあり、一定の条件下では脱毛の軽減が期待されています。
治療中は頭皮への刺激が強いパーマやカラーリングは避け、帽子、スカーフ、バンダナなどを活用して紫外線対策や頭皮のケガ予防を心がけます。
普段と変わらない生活を送りたい方や、治療をしながら仕事を続ける方は、あらかじめウィッグを準備しておくとよいでしょう。
骨髄抑制(白血球・血小板の減少、貧血)
抗がん剤によって骨髄の機能が低下することで、白血球(特に好中球)、血小板、赤血球の数が減少します。
好中球は体内に侵入した病原菌から体を守る働きがあるため、好中球が減少すると免疫力が低下し、さまざまな部位(口、肺、皮膚、尿路、腸など)で感染症が起こりやすくなります。
人は誰でも常在菌と呼ばれる菌を有しており、健康時には問題になりませんが、好中球数が減少し免疫力が低下している時には、常在菌による感染(日和見感染)を起こす可能性があります。
対策としては、手洗いやうがいをこまめに行う、人が集まる場所はなるべく避ける、十分な睡眠と栄養を取るなどが大切です。
好中球が減少し高熱を伴うような場合(発熱性好中球減少症)には、抗生物質を投与したうえで、好中球を増やす薬(G-CSFなど)を使用することもあります。
血小板が減少すると出血しやすくなるため、鼻血、歯茎からの出血、皮下出血などに注意が必要です。
貧血になると、立ちくらみ、息切れ、動悸などの症状が現れます。必要に応じて輸血が行われることもあります。
口内炎
口の粘膜細胞は抗がん剤の影響を受けやすく、炎症や潰瘍ができて、口内炎が発生することがあります。痛みや刺激に敏感になるため、食事や会話に支障をきたすことがあります。
予防と症状の緩和には、うがいや保湿、刺激の少ない食品の摂取が役立ちます。症状が重い場合は専用の薬剤を使用することもあります。
下痢
抗がん剤が腸の粘膜細胞に影響を与え、栄養吸収や腸の蠕動運動のバランスが崩れるために起こります。症状が続くと脱水や電解質異常のリスクが高まります。
十分な水分と電解質の補給を心がけ、症状が強い場合は早めに医療機関で相談しましょう。
なお、免疫チェックポイント阻害薬による下痢は、従来の抗がん剤や分子標的薬でみられる下痢とは対処法が異なります。下痢が続く場合は、すぐに主治医に連絡することが重要です。
末梢神経障害
一部の抗がん剤(パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、オキサリプラチン、シスプラチンなど)は末梢神経に作用し、手足のしびれや感覚異常を引き起こすことがあります。
症状は軽い違和感から、日常的な細かい動作が難しくなるほど強くなることもあります。治療が終わった後も症状が残る場合があるため、症状が現れたら早めに医師に相談することが大切です。
皮膚障害
分子標的薬では、にきびのような発疹や皮膚の乾燥、かゆみなどの皮膚障害がよく見られます。特にEGFR阻害薬を使用する場合に発症頻度が高いです。
細胞障害性抗がん剤でも、色素沈着、乾燥、手足症候群(手のひらや足底の痛み、赤く腫れる、皮膚がむける、水疱など)が現れることがあります。
症状が出る前から保湿剤を使ったスキンケアを行い、症状が現れたときにはステロイド外用剤などで早めに対処することが大切です。
副作用を軽減するために知っておきたいこと
抗がん剤治療を受ける前に、使用する薬の副作用とその対処法について、医師や薬剤師からしっかり説明を受け、確認しておくことが重要です。
「その抗がん剤はどういう副作用が、いつ、どんなふうに、どのくらい発現してくる可能性があるのか」「副作用の予防対策、また副作用に対処するために自分ができることは何か」を理解しておくことで、適切に対応できます。
副作用が現れたときは、我慢せずに正直に医療スタッフに伝えることがとても大切です。
近年では、副作用を抑える薬や症状を緩和させる漢方など、さまざまな支持療法があります。副作用が強い場合は、医師や薬剤師に相談して適切な処置を受けましょう。
また、副作用の影響で家事や仕事を続けられなくなることに不安を感じる場合は、通院スケジュールを調整してみることも一つの方法です。
家事や仕事になるべく支障を来さない日程で治療スケジュールを組めば、日常生活を送りながら治療を受けることが可能になります。
副作用との向き合い方
抗がん剤治療による副作用は、個人差や薬剤の種類、量にもよりますが、一般的に投与開始後から数週間でピークを迎え、徐々に回復するといわれています。
しかし、一部の副作用は治療後も発現する場合や、長期間残るケースがあります。
過度な不安や恐怖を抱くと身体的、精神的な負担が大きくなるため、焦らずリラックスしながら症状が改善するのを待つことも大切です。
自分の副作用症状の波を把握できれば、症状がつらくなりそうな日に備えて周囲の人にあらかじめサポートを頼んだり、仕事の量を調整したりすることが可能になり、日常生活に支障を来すリスクを最小限に抑えられます。
家族や友人からのサポートも大きな力になります。患者さんが悩んでいる副作用に合わせて、消化に良い料理を作ってあげる、保湿ケアを手伝ってあげるなど、できる範囲でのサポートが喜ばれます。
多忙でなかなかサポートできないという場合は、家事代行サービスを手配するなど、外部の助けを借りるのも一つの方法です。
抗がん剤治療は進歩を続けている
最近では副作用を抑える薬が登場し、抗がん剤の治療成績は向上しています。
以前は副作用が強く、体力の低下により治療の継続を諦めざるをえなかったケースも、今では副作用を抑えることで治療を続けることができるようになりました。
また、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、新しいタイプの薬も登場し、治療の選択肢が広がっています。
抗がん剤治療を受けることになった場合、副作用について正しい知識を持ち、医療スタッフとよく相談しながら、自分に合った治療法を選択していくことが大切です。
副作用は確かにつらいものですが、適切な対処法を知り、周囲のサポートを得ることで、治療を続けながら日常生活の質を保つことは可能です。
不安なことや疑問があれば、遠慮せずに医師や看護師、薬剤師に相談してください。

