中心静脈カテーテルについて
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
がん治療を受ける患者さんの中には、抗がん剤治療や栄養補給のために「中心静脈カテーテル」という医療器具を使用する方がいます。
医師から「CVポート」や「PICC」といった言葉を聞いて、どのようなものか分からず不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、中心静脈カテーテルとは何か、どのような種類があるのか、そして感染や合併症のリスクについて、患者さんやご家族が理解しやすいように説明します。
中心静脈カテーテルとは
中心静脈カテーテルとは、心臓近くの太い静脈(中心静脈)に細い管(カテーテル)を入れて、薬剤や栄養剤を投与するための医療器具です。
通常の点滴では腕などの細い静脈を使いますが、抗がん剤のように刺激の強い薬剤を長期間投与する場合、細い血管では炎症を起こしてしまうことがあります。
中心静脈は太く血流が豊富なため、薬剤が素早く薄まり、血管への刺激が少なくなります。そのため、長期間にわたる治療に適しています。
中心静脈カテーテルが必要になる場面
中心静脈カテーテルは、以下のような状況で使用されます。
抗がん剤などの刺激性の強い薬剤を投与する場合、高カロリー輸液などの栄養補給が長期間必要な場合、腕の血管が細く通常の点滴が困難な場合、繰り返し採血が必要な場合などです。
特にがん治療では、化学療法を何回も繰り返すことが多いため、患者さんの負担を軽減する目的で使用されることがあります。
中心静脈カテーテルの種類
中心静脈カテーテルには、いくつかの種類があります。主なものとして、従来型の中心静脈カテーテル(CVカテーテル)、CVポート(皮下埋め込み型中心静脈ポート)、PICC(末梢挿入型中心静脈カテーテル)の3つがあります。
それぞれに特徴があり、治療の内容や期間、患者さんの状態によって使い分けられます。
従来型の中心静脈カテーテル(CVカテーテル)
首や鎖骨の下、足の付け根などの太い静脈から直接カテーテルを挿入し、カテーテルの一部が体外に出ている形式です。
比較的短期間の使用を想定したもので、入院中の集中的な治療などに用いられます。カテーテルが体の外に出ているため、管理には注意が必要です。
CVポート(皮下埋め込み型中心静脈ポート)
CVポートは、100円硬貨程度の大きさの本体(ポート)とカテーテルで構成されており、皮膚の下に完全に埋め込んで使用します。
通常は胸の皮膚の下に埋め込みますが、状態によっては腕に埋め込むこともあります。カテーテルは鎖骨下静脈などから心臓近くの太い血管まで通されます。
薬剤を投与する際は、皮膚の上からポート部分に専用の針を刺して使用します。投与が終われば針を抜くため、日常生活での制限がほとんどありません。入浴や軽い運動も可能です。
PICC(末梢挿入型中心静脈カテーテル)
PICCは、上腕の静脈からカテーテルを挿入し、心臓近くの太い血管までカテーテルの先端を通すものです。
腕から挿入するため、首や胸から挿入する従来のカテーテルに比べて、挿入時の重篤な合併症のリスクが低いという特徴があります。
カテーテルは体の外に出ていますが、適切に管理すれば長期間使用することができます。週に1回程度の消毒と管理が必要です。
それぞれの特徴を比較
3つのカテーテルの主な特徴を表にまとめました。
| 種類 | 挿入部位 | 体外への露出 | 使用期間の目安 | 主な利点 |
|---|---|---|---|---|
| 従来型CVカテーテル | 首・鎖骨下・足の付け根 | あり | 短期(数日〜数週間) | 緊急時に素早く挿入できる |
| CVポート | 胸または腕(皮下) | なし | 長期(数ヶ月〜数年) | 日常生活への影響が少ない |
| PICC | 上腕 | あり | 中〜長期(数週間〜数ヶ月) | 挿入時の重篤な合併症が少ない |
感染について
中心静脈カテーテルを使用する上で最も注意が必要なのが、感染のリスクです。
カテーテルを通じて細菌が血液中に入ると、カテーテル関連血流感染(CRBSI)という状態になり、発熱や悪寒などの症状が現れます。
感染の原因
感染は主に次のような経路で起こります。
カテーテルを挿入する際に皮膚の細菌が入り込む場合、挿入部位から細菌が侵入する場合、カテーテルの接続部から細菌が入る場合などがあります。
2024年に世界保健機関(WHO)が公開したガイドラインでは、血管内カテーテル関連の感染症は、適切な予防措置を行えばそのほとんどが予防可能であるとされています。
カテーテルの種類による感染リスクの違い
感染のリスクは、カテーテルの種類や挿入部位によって異なります。
研究によると、1000カテーテル日あたりの感染件数は、従来型の中心静脈カテーテルで7.0件、PICCで5.6件程度とされています。
CVポートは皮膚の下に完全に埋め込まれているため、感染のリスクが比較的低く、1000カテーテル日あたり1.04件という報告があります。
挿入部位では、鎖骨下静脈からの挿入が最も感染リスクが低く、次いで首の静脈、足の付け根の静脈の順にリスクが高くなります。
感染を予防するために
感染を防ぐためには、挿入時の適切な消毒と無菌操作、挿入部位の定期的な観察と清潔な管理、不必要に触らない、接続部の清潔な取り扱いなどが重要です。
2025年のWHOガイドラインでは、カテーテル挿入前には必ず適切な皮膚消毒を行うこと、0.5%以上のクロルヘキシジンアルコール製剤の使用が推奨されています。
患者さん自身も、挿入部位の発赤や腫れ、痛み、発熱などの異常があればすぐに医療スタッフに伝えることが大切です。
その他の合併症
感染以外にも、中心静脈カテーテルには以下のような合併症のリスクがあります。
挿入時の合併症
カテーテルを挿入する際には、針が血管や周辺の組織に当たることで起こる合併症があります。
動脈穿刺(動脈に針が刺さる)、気胸(肺に穴が開く)、血胸(胸に血液がたまる)などが報告されていますが、これらは適切な技術とエコーガイド下での挿入により、リスクを下げることができます。
PICCは腕から挿入するため、肺や大きな血管を損傷するような致死的な合併症のリスクが従来型のカテーテルより低いとされています。
使用中の合併症
カテーテルを使用している間には、次のような問題が起こる可能性があります。
静脈炎(血管の炎症)は、長いカテーテルが血管の中に入ることで起こることがありますが、多くは温めることで改善されます。
カテーテルの閉塞(詰まり)は、血栓ができたり薬剤が残ったりすることで起こります。使用後にしっかりとカテーテル内を洗浄することで予防できます。
カテーテル周辺の血栓症や、CVポートの場合はポート本体やカテーテルの破損、皮膚トラブルなども報告されています。
安全な管理のために
中心静脈カテーテルを安全に使用するためには、医療スタッフによる適切な管理とともに、患者さん自身の協力も重要です。
定期的な観察
挿入部位の状態を毎日観察することが大切です。発赤、腫れ、痛み、膿が出ていないか、カテーテルが抜けかけていないかなどを確認します。
CVポートやPICCを使用している場合、週に1回程度の消毒と包交(ガーゼ交換)が必要です。
清潔な取り扱い
カテーテルやその接続部に触れる際は、必ず手を洗い、清潔な手袋を使用することが推奨されています。
入浴時は、カテーテルが濡れないように保護する必要があります。濡れてしまった場合は、医療スタッフに相談してドレッシング材の交換を行います。
異常時の対応
発熱、悪寒、挿入部位の痛みや腫れ、カテーテルから液体が漏れる、カテーテルが詰まって薬剤が入らないなどの症状があれば、すぐに医療スタッフに連絡してください。
早期に対応することで、重篤な合併症を防ぐことができます。
治療方法の選択
どのタイプの中心静脈カテーテルを使用するかは、治療の内容、期間、患者さんの血管の状態、生活スタイルなどを考慮して決定されます。
例えば、長期にわたる抗がん剤治療で通院しながら治療を受ける場合はCVポートが、一定期間の栄養補給が必要だがCVポートの埋め込み手術を避けたい場合はPICCが選択されることがあります。
医師から提案された方法について疑問や不安がある場合は、遠慮せずに質問することが大切です。それぞれのメリットとリスクを理解した上で、自分に合った方法を選ぶことができます。
日常生活での注意点
中心静脈カテーテルを使用していても、基本的な日常生活は送ることができます。
CVポートの場合、薬剤投与をしていない時は、埋め込み前とほとんど変わらない生活が可能です。入浴やシャワー、軽い運動なども行えます。
PICCや従来型のカテーテルの場合、カテーテルが体外に出ているため、ひっかけないように注意が必要です。また、入浴時は挿入部位を濡らさないよう保護します。
重いものを持つ、激しい運動をするなど、カテーテルに負担がかかる動作については、医師や看護師に相談して指示を受けてください。
参考文献・出典情報
1. 吉田製薬株式会社 Y's Letter「血管内カテーテル使用による血流感染症およびその他の感染症の予防に関するWHOガイドライン パート1:末梢カテーテル」
2. カーディナルヘルス「PICCとは?PICCの基本知識と安全な取り扱い方法・看護のポイント」

