皮膚がんの中で最も発症頻度が高い基底細胞がんは、早期発見と適切な治療により良好な予後が期待できるがんです。
この記事では、基底細胞がんの検査方法から最新の治療法、予後について詳しく解説します。
基底細胞がんとは|皮膚がんの約25%を占める最多タイプ
基底細胞がんは皮膚がんの約25%を占め、皮膚がんの中で最も多いタイプです。主に紫外線の影響により発症し、高齢者に多く見られる特徴があります。他の皮膚がんと比較して転移する可能性は低く、適切な治療を受けることで良好な予後が期待できます。
基底細胞がんは顔面、特に鼻や目の周辺、耳などの紫外線にさらされやすい部位に発生しやすい傾向があります。初期段階では小さな黒い点や盛り上がりとして現れることが多く、しばしばホクロと間違われることもあります。
基底細胞がんの検査方法|ダーモスコピーから確定診断まで
ダーモスコピー検査による初期診断
基底細胞がんの検査は、まず「ダーモスコピー」と呼ばれる専門的な検査器具を使用して行われます。このダーモスコピーは病変部を10倍に拡大して観察することができる優れた検査ツールです。
検査方法は比較的簡単で、ホクロや気になる部分に超音波検査で使用されるゼリーを塗布し、その上にレンズを当てて観察します。内蔵されたライトにより光の乱反射が抑えられ、病変の状態を詳細に確認できるのが大きな特徴です。
ダーモスコピー検査では、基底細胞がんに特徴的な所見を確認することができます。具体的には、血管の拡張パターンや色素の分布、表面の構造などを詳細に観察し、他の皮膚疾患との鑑別を行います。
超音波(エコー)検査による病変の評価
ダーモスコピーによる診断の後、治療計画を立てるために「超音波(エコー)検査」が追加で実施されます。この検査により、がん細胞の水平方向への広がりと垂直方向への深さを正確に測定することができます。
超音波検査の結果は、手術の範囲や方法を決定する上で重要な情報となります。病変の深さや周囲組織への浸潤の程度を把握することで、より精密で効果的な治療計画を策定できます。
組織生検による確定診断
2025年現在の診断基準では、ダーモスコピーと超音波検査に加えて、必要に応じて組織生検が実施されることもあります。特に診断が困難なケースや、他の皮膚がんとの鑑別が必要な場合には、小さな組織片を採取して病理学的検査を行います。
基底細胞がんの治療法|手術療法を中心とした最新アプローチ
外科手術による治療
基底細胞がんの治療における第一選択は「外科手術」です。手術による完全切除は最も確実な治療法であり、取り残しを防ぐために十分なマージン(安全域)を設けて切除することが重要です。
手術方法の選択は、がんの大きさ、発生部位、患者さんの年齢、全身状態などを総合的に考慮して決定されます。以下に主要な手術方法を示します。
| 手術方法 | 適応 | 特徴 |
|---|---|---|
| 開放手術 | 小さな病変 | 切除後は自然治癒を待つ |
| 単純縫合 | 中程度の病変 | 皮膚のシワに沿って縫合し、傷跡を目立たなくする |
| 皮弁手術 | 広範囲の病変 | 周囲の皮膚を移動させて欠損部を覆う |
| 植皮手術 | 大きな欠損 | 他部位から皮膚を移植して修復 |
モース手術(Mohs手術)の活用
2025年現在、日本でも導入が進んでいるモース手術は、基底細胞がんの治療において注目される手法です。この手術では、切除した組織をその場で病理検査し、がん細胞の残存がないことを確認しながら段階的に切除を行います。
モース手術の利点は、正常組織の切除を最小限に抑えながら、確実にがん細胞を除去できることです。特に顔面など美容的配慮が重要な部位や、再発リスクが高い部位での治療に有効です。
放射線療法による治療選択肢
高齢の患者さんや手術が困難な場合には、「放射線療法」が選択されることがあります。放射線療法は外来通院で実施でき、患者さんの身体的負担が少ないという利点があります。
現在の放射線療法では、正常組織への影響を最小限に抑えた照射技術が用いられています。治療期間は通常数週間にわたり、分割照射により効果を高めています。
凍結療法とその他の治療法
「凍結療法」は液体窒素を使用してがん組織を凍結破壊する治療法です。小さな基底細胞がんや、手術が適さない患者さんに対して選択されることがあります。
2025年の最新治療では、イミキモドクリーム(免疫調節剤)や光線力学的療法(PDT)なども治療選択肢として検討される場合があります。これらの治療法は、特定の条件下で有効性が認められています。
基底細胞がんの予後と余命|早期発見の重要性
基底細胞がんの予後について
基底細胞がんの予後は、皮膚がんの中でも良好とされています。適切な治療を受けた場合の5年生存率は95%以上と報告されており、転移のリスクも極めて低いのが特徴です。
ただし、治療が遅れたり不完全な切除が行われたりすると、局所再発のリスクが高まります。そのため、早期発見と適切な治療が重要となります。
再発リスクと長期フォローアップ
基底細胞がんの治療後は、定期的な経過観察が必要です。再発の多くは治療後5年以内に発生するため、この期間は特に注意深い観察が求められます。
また、基底細胞がんの既往がある患者さんは、新しい病変が発生するリスクも高いため、定期的な全身の皮膚チェックが推奨されています。
基底細胞がんの予防と早期発見のポイント
紫外線対策の重要性
基底細胞がんの主要な原因は紫外線への長期間の曝露です。日常生活では日焼け止めクリームの使用、帽子や長袖の着用、午前10時から午後4時までの外出を避けるなどの対策が有効です。
セルフチェックの方法
月に一度程度、全身の皮膚をチェックすることが推奨されています。新しいホクロや既存のホクロの変化、なかなか治らない傷や盛り上がりなどに注意を払うことが重要です。
ABCDEルール(非対称性、境界の不整、色調の不均一、直径、隆起・発展)を参考にして、気になる変化があった場合は早めに医療機関を受診しましょう。
2025年における基底細胞がん治療の最新動向
分子標的治療薬の開発
進行した基底細胞がんに対しては、分子標的治療薬であるビスモデギブ(商品名:エリベージ)が使用されています。この薬剤はヘッジホッグ経路を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。
免疫療法の研究進展
2025年現在、基底細胞がんに対する免疫療法の研究も進められています。特に従来の治療法に抵抗性を示すケースに対する新たな治療選択肢として期待されています。
医療機関選びと専門医との連携
基底細胞がんの治療を受ける際は、皮膚科専門医や皮膚がんの治療経験が豊富な医療機関を選択することが重要です。特に顔面などの目立つ部位の治療では、形成外科との連携も考慮すべきポイントです。
セカンドオピニオンを求めることも、患者さんの権利として重要な選択肢の一つです。治療方針に不安がある場合は、遠慮なく別の専門医の意見を聞くことをお勧めします。
まとめ|基底細胞がんは早期発見・適切治療
基底細胞がんは皮膚がんの中で最も頻度が高いものの、早期発見と適切な治療により良好な予後が期待できるがんです。ダーモスコピーや超音波検査による正確な診断、そして患者さんの状況に応じた最適な治療選択が重要となります。
参考文献・出典情報
この記事の作成にあたり、以下の信頼できる医学文献および公的機関の情報を参考にいたしました。
- 国立がん研究センター がん情報サービス「皮膚がん」
- 日本皮膚科学会
- 日本皮膚悪性腫瘍学会
- Basal Cell Carcinoma: Epidemiology, Diagnosis and Treatment
- American Academy of Dermatology - Basal Cell Carcinoma
- World Health Organization - Ultraviolet radiation
- Recent advances in basal cell carcinoma treatment
- The Skin Cancer Foundation - Basal Cell Carcinoma
- American Cancer Society - Basal and Squamous Cell Skin Cancer
- 厚生労働省 がん対策情報


