悪性リンパ腫は、身体のリンパ組織と呼ばれるところから発生する悪性腫瘍です。リンパ組織には、全身に分布するリンパ節のほかにリンパ管、胸腺、脾臓、扁桃、それから骨髄までが含まれます。"がん"化したリンパ球は、病気の進展とともにリンパ組織だけでなく全身の臓器へも拡がっていきます。
遺伝子の異常
悪性リンパ腫では多くの場合、明らかな原因はわかっていません。しかし、悪性リンパ腫細胞では、少なからず染色体(細胞の中にあって遺伝子が載っているヒモのようなもの)の異常が見つかっているので、染色体異常に伴った遺伝子の異常が発症に深く関わっていると考えられています。
遺伝子異常をきたす原因としては、加齢、放射線の曝露などが関連しているともいわれていますが、はっきりとしたことはわかっていません。
ウイルス
いっぽう、成人T細胞白血病・リンパ腫では、HTLV-1というウイルスが原因であることがはっきりしており、人から人へと感染することがあります。
また、バーキットリンパ腫や後天性免疫不全症候群(エイズ)に合併した悪性リンパ腫などでは、EBウイルスの関与が示されています。全ての悪性リンパ腫において、現在のところ親から子へ遺伝するという証拠はありません。
非ホジキンリンパ腫とホジキンリンパ腫
悪性リンパ腫と診断するためには、腫れている組織(ほとんどの場合はリンパ節)の病理検査の結果が大変重要です。その病理検査の結果により、大きく非ホジキンリンパ腫とホジキンリンパ腫とに分けられます。非ホジキンリンパ腫とホジキンリンパ腫とでは、治療方針も治癒率も異なります。
非ホジキンリンパ腫については、さらに細かく分類されますが、タイプの違いによって治療薬の選択も異なってくるので、この分類は非常に重要なものです。
悪性リンパ腫の発症率
国内で悪性リンパ腫を新たに発症する人は10万人に10人(罹患率といいます)程度ですが、その数はだんだん増加してくる傾向にあります。高齢者が増加している影響もありますが、1970年代以降の年齢調整罹患率(人口の高齢化の影響を除いた罹患率)を見てみても、男女とも明らかに増加傾向にあります。
日本人の場合、悪性リンパ腫全体の90%以上が非ホジキンリンパ腫であり、ホジキンリンパ腫は5~10%にすぎません。非ホジキンリンパ腫の中では、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と呼ばれるタイプが30~40%と多くを占めています。
悪性リンパ腫の生存期間(予後)
悪性リンパ腫の治療成績、予後はホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫とで異なり、また非ホジキンリンパ腫の中でもタイプによって変わってきます。
さらに、同じタイプでも、患者さんの年齢や内臓機能を含めた身体の状態、病変部の拡がり具合などによって予後は影響されます。
以上、悪性リンパ腫についての解説でした。