食道がんのステージⅠ期の治療法は、内視鏡治療が最優先ですが、状態によっては「手術」、「化学放射線療法(抗がん剤+放射線)」が行われます。同じI期であってもがんの場所や進行状況に違いがあるからです。
具体的には明らかに内視鏡での治療が無理なケースは最初から手術、もしくは根治的化学放射線療法が選択されます。これまでは第一優先は手術でしたが、最近では化学放射線療法の効果が認められ、実施されることが増えてきました。
これは抗がん剤と放射線の両方を一緒に行うことで食道を温存でしようとするものです。治療成績は手術の方がわずかに優っていますが、ほとんど変わらないという結果がでています。
手術しかなかった食道がんⅠ期の治療でしたので、化学放射線療法は注目されている治療法です。それは、手術(胸腔鏡手術を含む)であれば食道を失い、胃を吊りあげたりすることで再建せざるをえませんが、化学放射線療法では食道を残すことができ、食道の機能を失わないからです。
ただし化学放射線療法には、まだ分からない点が残っています。それは"晩期障害"です。晩期障害とは放射線療法が終わった後、数か月から数年後に起こってくる副作用のことです。具体的には胸水がたまったり、照射したところに新たながん(2次がん)ができたりすることがあります。
長期のQOL(生活の質)を手術と比べたとき、本当に良いのかどうかはまだ分からないのです。胸水がたまって息苦しくなり、生活に制限がでてきたという患者も実際に存在するので、もう少し長期的に比較する必要があるといえます。
以上、食道がんの化学放射線療法についての解説でした。