リンパ浮腫の予防法の1つは足を心臓より上に上げることです。これでリンパの流れは促進されます。
乳がんなどによる「腕の浮腫」は無意識のうちに上げたり、下げたりするので、とくに挙上を意識する必要はありませんが、子宮がんや卵巣がん手術による「脚のリンパ浮腫」は脚が常に心臓よりも下にあるので、意識しないとできません。
脚が疲れたときや長時間たち仕事を続けるときは、その合間に少し脚を上げて休憩をとる習慣を身につけましょう。
脚を上げる機会を見つけよう
会社でのデスクワークでは、可能なら机の下に台を置き、脚をのせると、むくみ予防に効果があります。家では、なるべく脚を上げる時間を作りましょう。
いすよりは脚を投げ出してたたみに座り、または横になる姿勢のほうが、脚を心臓より高く上げることができます。ただし、横になるとき、お尻の部分でVの字の谷間ができないように注意すること。谷間ができると、そこにリンパ液がたまるので、クッションなどでゆるやかな傾斜を作りましょう。
手術後は足を上げるだけではよくない
脚のむくみは鼠径部から始まり、周囲に広がります。初期では大腿部内側と下腹部、陰部になります。次いでむくみは脚に移り、大腿部内側膝上、最終的には下腿や足がむくみます。
手術後、大腿部内側などが少しむくんだからと脚ばかり一生懸命上げると、リンパ液が臀部や鼠径部にたまってしまい、むくむことがあります。むくんでいる部位が高くなるように行いましょう。
リンパ浮腫とリンパドレナージ
リンパドレナージは腕や脚のリンパ液を深部リンパ系に送り込み、鎖骨下の静脈角に合流させるマッサージです。
下肢のリンパ液は鼠径部のリンパ節を経て深部リンパ系に入り込みます。子宮がんや卵巣がんで鼠径部のリンパ節が切除されたりすると、リンパ液を深部に入れなくなります。そのため脚にリンパ液がたまり、むくみます。
そこで、脚にたまったリンパ液を深部に流し込むために、切除されたりしたリンパ節を避け、ほかのリンパ節(例えば同側の腋窩)に誘導し、そこから深部リンパ系を経て最終の到達地点である「頸静脈角」へ送り込みます。
深部への入り口から順に入り口に向かってマッサージする
リンパ液の送り方は、車の渋滞の解消方法に似ています。先が詰まっていると流れないので、まず頸静脈角に近い先頭から順に流していきます。
最終到達地点である頸静脈角と深部リンパ系の調整を行い、次に浮腫側の体側のドレナージを行い、最後に脚を行います。
リンパドレナージは専門家の指導を受けてから始める
自分で行うリンパドレナージを「セルフリンパドレナージ」といい、家庭でも旅行先でも手軽に行えます。ただし、間違った方法で行ったり、強すぎたりすると、逆にむくみをひどくすることがあります。
正しい方法やリンパ液を流す感覚を身につけるために、まず病院や治療院で医師のアドバイスを受け、セラピストの手技を自ら体験してから始めることが大切です。
以上、リンパ浮腫についての解説でした。