子宮体がんにかかる人は年々増え、毎年8000人あまりの人に新たにがんが見つかっています。ピークは50~60代です。治療の原則は手術で、抗がん剤などの薬物療法は主に手術後や手術ができない進行がんや転移・再発がんのときに行われます。
ホルモン剤は効きにくいが抗がん剤は効きやすい
子宮体がんは乳がんのようにエストロゲンが関わるタイプと、無関係に発生するタイプとがあります。前者は、内因性または外因性のエストロゲンが過剰状態になることによって内膜が増殖し、がん化すると考えられています。しかし、薬物療法としてはホルモン療法ではなく、抗がん剤治療が中心となります。
体がんの約8割を占めるのが類内膜腺がんです。最近、子宮体がんの1つに加えられた絨毛がんは、妊娠したときに胎盤となる絨毛細胞からできたがんです。こちらは抗がん剤がとくに効きやすいがんです。
進行度は手術後に決定 リスク分類も重要な要素
子宮体がんでは、Ⅳ期(遠隔転移が認められる)以外は、子宮を全摘して、卵巣と卵管を切除する手術(単純子宮全摘術+両側付属器摘出術)をするのが、標準的治療です。
このため、がんの広がりや子宮の筋層への浸潤の有無をみる進行度は、手術で切除した組織の病理検査の結果をもとに決める「手術進行期分類」が採用されています。
最近では、病理検査の結果で分かったがんの分化度や広がりなどからリスク分類を行い、リスクの高い(高リスク群)患者さんに対しては、手術後に化学療法を行うのが一般的です。中リスク群に対する明確なエビデンス(確認された治療効果)はありません。
分化度では高分化型(グレード1)、中分化型(グレード2)、低分化型(グレード3)があり、低分化で悪性度が高い傾向にあります。妊娠を強く希望する場合、一部の早期がんであれば子宮や卵巣を残すこともできます。
子宮体がんの進行期(ステージ)分類と標準治療
・Ⅰ期
がんが子宮体部に限局している(とどまっている)
Ⅰa期
がんが子宮筋層の1/2以内
標準治療:手術(ホルモン療法)
Ⅰb期
がんが子宮筋層の1/2を超えている
標準治療:手術
・Ⅱ期
がんが頸部の間質に及ぶ
標準治療:手術
・Ⅲ期
がんが子宮外に広がるが、小骨盤腔(恥骨と仙骨の間の空間)を超えていない、または所属リンパ節に広がる
Ⅲa期
子宮漿膜や卵巣卵管に広がる
標準治療:手術+術後化学療法か放射線療法
Ⅲb期
膣や子宮周辺の組織へ広がる
標準治療:手術+術後化学療法か放射線療法
Ⅲc1期
骨盤リンパ節に転移
標準治療:手術+術後化学療法か放射線療法
Ⅲc2期
大動脈周囲のリンパ節に転移
標準治療:手術+術後化学療法か放射線療法
・Ⅳ期
がんが小骨盤腔を超えるか、明らかに膀胱や腸の粘膜に広がる、遠隔転移がある
Ⅳa期
膀胱や腸粘膜に広がる
標準治療:手術、放射線療法、全身化学療法
Ⅳb期
腹腔内や鼠径リンパ節を含む遠隔転移がある
標準治療:手術、放射線療法、全身化学療法、ホルモン療法
手術後の再発予防がメーン 妊娠希望ならホルモン療法
薬物療法は、再発防止や症状緩和によるQOL(生活の質)の向上、妊娠・出産までのつなぎ治療など、さまざまな目的で行われます。
・手術後の再発リスクが高い場合
リスク分類でいう、高リスク群に該当するケースです。再発予防を目的に術後補助療法として化学療法が行われます。Ⅲ期とⅣa期の人には必ず実施します。当院では中リスク群の場合でも化学療法を行います。
・手術ができない場合
Ⅳb期の転移がんをはじめ、高齢者、全身状態が悪い、重い持病があるなどの理由で、手術ができないこともあります。そういう場合は、がんの縮小を狙って、化学療法が実施されることがあります。
・再発した場合
再発の状況によりますが、症状をやわらげ、QOLをできるだけ低下させないようにする目的で、化学療法をします。
・妊娠を強く希望する場合
子どもを強く希望する人には、妊娠・出産の可能性を残すために黄体ホルモン剤を用いたホルモン療法が行われることがあります。Ⅰa期のごく一部で、黄体ホルモンの受容体があって、薬の効果が期待できることが条件です。
この治療は、黄体ホルモンの作用でがん増殖に関わるホルモンの作用を止めようという治療で、がんを治すことが目的ではありません。ホルモン療法で治ることもゼロではありませんが、多くはがんが再発します。
そのため病変が消失しているその間に、妊娠、出産を目指すという、きわめてリスクの高い治療です。治療中にがんが進行してしまうことや、ときには手術という選択肢もとれなくなることなども含め、よく検討する必要があります。
以上、子宮体がんについての解説でした。