乳がんの手術後に行われれる薬物療法では、「術前薬物療法と同じもの」を使います。
術後薬物療法の対象となるのは、手術前に抗がん剤による治療を受けていない人になります。すでに十分な抗がん剤を用いているケースでは、抗がん剤による術後薬物療法は原則、行いません。
HER2陽性の乳がんでは手術後もトラスツズマブ(ハーセプチン)を使います。この薬の治療期間が1年だからです。術前と術後を足して1年にする必要があることから、術前が3カ月間なら、残りの9カ月間、トラスツズマブを使うことになります。ホルモン受容体が陽性なら、ホルモン剤による治療を開始します。
進行、再発、転移した乳がんの場合
転移や再発した乳がんになると、かなり治療法が複雑になります。また、患者さんの希望や全身状態、薬に対する副作用の出方などによっても大きく変わってきます。次の内容は最も多いケースになります。
トリプルネガティブの乳がんでは、初回治療としてパクリタキセルが使えるかどうかを検討します。術前や術後にタキサン系を使った場合は、それより12力月以上たっていないと効果が期待できません。
パクリタキセルが使える場合は、ベバシズマブを併用する方法が初回治療となります。パクリタキセルの効果が見られない場合は、2次治療としてエリブリンを単独で用います。その後は、乳がんの適用のある抗がん剤を順次、使います。
HER2陽性の乳がんでは、初回治療として、原則として抗がん剤にトラスツズマブを併用します。ホルモン受容体が陽性の場合、ホルモン剤とトラスツズマブを併用する選択肢もあります。
トラスツズマブが効かなくなったら、2次治療としてラパチニブにカペシタビンを併用する治療を行うのが一般的です。その後は、もう1度、トラスツズマブに戻すこともあります。HER2に対する作用をもつ薬を長く続けたほうがいいというのが、いまの乳がんの専門家の共通した意見です。
ホルモン受容体が陽性の乳がんでは、ホルモン剤による治療を、薬の種類を変えて続けます。ホルモン剤が使えなくなったら、抗がん剤治療に切り替えます。
以上、乳がんの薬物療法についての解説でした。