肺がんは2010年代に入ってから70歳代以上で著しく増加しています。1990年代と比べるとその数は3倍以上になります。社会の高齢化にともなって今後も肺がんの患者数は増加し、おのずと高齢で肺がんと診断される人も増えることは確実です。
体力的に、70歳以上の高齢者は若い人と比べて全身状態が相対的に悪く、動脈硬化や高血圧、心疾患、糖尿病など他の病気を抱えていることが多いといえます。
そのため治療後の生活の質もふくめ、さまざまな観点を考慮して治療法を選択する必要があります。
高齢者に対する肺がんの手術は可能か
肺がんの手術に関して「何歳まで手術を受けることができるか」については一致した意見やルールは存在しません。
確かに70歳以上の高齢者では、それより若い肺がん患者さんと同様の治療をおこなうのはむずかしいことがあります。
しかし、術前に全身状態や心肺機能のチエックを十分におこない、手術の方法をきちんと選ぶことで手術をおこなうことができるといわれています。また、ほかの病気の有無や、術後の生活にどのような影響を与えるかについても考慮されます。
ちなみに、ほかに危険な条件がない場合で、平らな場所を6分間で200m歩くことができれば、手術ができるとされています。さらに、高齢者には小範囲切除術といって、通常よりも縮小した形で手術をおこなうこともあります。
ただし、高齢者の手術は全体として、肺炎や心不全など術後合併症の可能性が高くなるので注意が必要です。
高齢者に対する肺がんの化学療法について
シスプラチンが肺がんでもっともよく使用される抗がん剤ですが、消化器障害や腎機能障害などの副作用がしばしば出ます。同じプラチナ製剤でもカルボプラチンでは副作用の出現が少ないので、高齢者ではシスプラチンの代わりに、カルポプラチンを使うことがあります。
あるいはプラチナ製剤を使わず、ビノレルビン(VNR)やドセタキセル(DOC)といったほかの抗がん剤を単独で使うことも、高齢者の場合ではあります。また、イレッサやタルセバなど分子標的薬が使えるタイプのがんであれば、これらを優先することもあります。
以上、肺がんの手術についての解説でした。