肝臓がんの外科治療(肝切除)では、切除する範囲によってそれぞれ手術名がつけられています。肝臓は、血管の枝分かれに合わせて8つの「亜区域」に分けられます。しかし、もっとおおまかには、右葉と左葉をそれぞれ2つに分け、4つの「区域」として扱います。
切除した範囲、区域によって肝臓へのダメージは異なりますが、一般的な手術~入院に要する日数や術後の注意点は以下のとおりです。
手術後の管理
現在では、肝切除手術から退院までの平均入院日数は2週間以内であり、多くの場合は、10日前後で退院できます。手術直後しばらくは、患者の状態により、集中治療室(ICU)に入ったり、回復室で治療を受けます。この間に、おもに水分管理を中心とした治療が行われます。
この期間中は、糖に関する機能を積極的にコントロールするため、インスリンを投与したり、消化性潰瘍予防薬を投与するなどの処置も行われます。抗生物質、ステロイドホルモンも使用されます。
これらの処置は、手術後5日間ほど続けられます。しかし、通常は手術の翌日からベッドで起き上がれるようになり、早ければその日にはベッド脇に立てるようになります。
近年は麻酔技術や鎮痛薬が進歩したため、かつてのように、手術後は激しい痛みのために動くことができないということはありません。3日間程度で痛みはかなり和らぎ、順調なら手術後3~4日間で通常の病室に戻ることができます。
この時期にはまだ、患者の腹部にはドレーンと呼ばれるチューブが入っています。これは、切除部分からもれ出す液体が腹部にたまるのを防ぐためですが、これも手術後1~2週間で抜き取ることができます。
手術後の合併症
肝切除にともなうもっとも危険な合併症は、肝臓の機能が足りなくなる肝不全です。かつては、手術後に肝不全を発症して、そのまま死亡することが少なくありませんでした。
現在では、手術前の肝臓の機能の評価を正確に行えるようになっているため、手術後の肝不全による死亡率は、全国平均で2パーセント、専門施設の場合は1パーセント以下と報告されています。
このほかにも、手術後の合併症として、後出血(ドレーンからの出血が止まらない)、胆汁漏(肝臓の切除部分から胆汁がもれてドレーンから流れ出る)などがあります。しかし、これらは入院期間内に確認できるため、何か起きれば対処されます。
肝臓がん手術後の再発率
肝細胞がんの切除後の3年再発率は60パーセントに達します。そのため患者は退院後も、肝機能や腫瘍マーカーの測定、超音波診断などのため、3カ月に1回程度の外来通院を行って観察を続けます。
以上、肝臓がんの手術についての解説でした。