放射線治療とは、高いエネルギーをもつX線などの電磁波や電子線、重粒子線などを使って、がん細胞の遺伝子を傷つけ、がん細胞を死滅させる治療法です。
放射線治療は、手術と同様に限られた範囲のみを治療する局所治療ですが、臓器の形態を温存することは可能です。
放射線をからだの外から照射する方法(外照射)と、食道の内腔に放射線をあてる機械を挿入し、からだの中から照射する方法(腔内照射)の2つがあります。
まず、CTやレントゲンなどで放射線をあてる(照射といいます)場所を決め、印をつけます。多くの場合、毎日少量ずつに分けて放射線を照射します。実際に1回の照射に必要な時間は、着替えなどの準備を含めても15分程度です。
食道がんに対して放射線治療を行う目的は、大きく分けて2つあります。1つめは、放射線治療によってがんを完全に消滅させることを目的とする治療(根治照射)です。
根治照射の対象は、がんの広がりが放射線の治療範囲内にとどまっている場合です。この場合は、外照射だけを週5日、6~7週続けて行う方法と、外照射5~6週に2~3回の腔内照射を組み合わせる方法があります。
2つめは、がんによって引き起こされる症状を和らげることを目的とした照射(姑息(こそく)治療)です。骨への転移により引き起こされる痛みや、転移したリンパ節による気道狭窄による息苦しさ、血痰などの症状の改善のために行われます。症状の改善が目的ですので、根治照射のように長い治療期間は必要とせず、通常2~4週くらいの期間で行われます。
食道がん放射線治療の副作用
放射線治療による副作用は、一般的に放射線をあてている部分に起こりますが、副作用の頻度や程度は、放射線をあてる方法や量、治療期間、患者さんの状態などによって異なります。
治療を行っている期間に起こる「早期合併症」と、治療期間数か月~数年たって起こる「晩期合併症」があります。主な早期合併症と晩期合併症には、次のようなものがあります。
<早期合併症>
・皮膚炎、食道炎、肺炎(放射線をあてたところ)。
・倦怠感、食欲不振、骨髄抑制(白血球や血小板の減少)。
・頸部、胸部に照射したときは、咽頭痛、嚥下時の違和感。
<晩期合併症>
・胸部に照射したときは、放射線性肺炎。
・脊髄にも照射が及んだ場合は、神経症状。
・胸水貯留、心のう液貯留、食道潰瘍、穿孔(穴)ができる。
重粒子線治療は慎重に検討を
新しい放射線の照射技術として「重粒子線治療」があります。重粒子とは電子より重い粒子のことで、これを患部に照射することでがん組織を攻撃します。
重粒子線治療の最大の特長は、ピンボイントでがんを攻撃できるため、効果が高く、健康な細胞へのダメージが少ないことです。ただ、大規模な装置が必要なため受けられる施設はごく限られており、すぐには受療できないのが現状です。また保険外のため約300万円の治療費がかかります。
あくまで放射線治療の一部であり、「ピンポイント性が高い放射線治療」です。がんが広く浸潤している場合やその疑いがある場合はせっかく治療を受けても再発するリスクは残ります。過剰な期待をせず、経済的、時間的な問題も含め、慎重に検討しましょう。
食道がんの化学放射線治療とは
食道がんに対しては、放射線のみで治療を行うよりも、抗がん剤を投与(化学療法)しながら治療を行ったほうが、治療の効果が高いことが知られています。また、放射線と化学療法を順番に行う方法よりも、両者を同時に行ったほうが効果が高いとされています。
そこで、現在日本では、腫瘍の原発巣などの局所の制御をする場合には、放射線治療と化学療法を同時に行う「化学放射線治療」が行われるのが一般的となっています。
主な治療内容は、フルオロウラシル(5-FU)とシスプラチンの2剤を組み合わせた化学療法に、外照射を28回~30回行う放射線治療を併用します。
病変部がすべて放射線治療の範囲内に入る場合で、手術可能な症例も含まれますが、手術を望まない患者さんや、基礎疾患などにより手術のリスクが高い人なども含まれます。また、がんが気管や大動脈などに広がっていて、手術を行うのが困難な場合にも、化学放射線治療が選択されることがあります。
化学放射線治療の副作用
化学療法と放射線治療を併用することで、治療の効果は上昇しますが、副作用も増加します。食欲不振、口内炎、食道炎などの自覚症状を伴う副作用や白血球減少などの骨髄抑制を起こす頻度が増加します。
副作用の出る時期やその対策をとることで治療を続けられる可能性はあるので担当の医師とよくご相談しましょう。
以上、食道がんの放射線治療に関する解説でした。