はじめに:語れなかった「本当の気持ち」、ありませんか?
がんと向き合う家族の一人として、支える立場にいるあなた。
毎日必死で気を張って、笑顔で接して、落ち込む時間さえ我慢してきたかもしれません。
でも、ふとした瞬間にこみ上げてくるどうしようもない感情があるはずです。
「自分だけ、取り残されたような気がする」
「怖い。先のことを考えるのが怖すぎる」
「何もできていない自分が嫌になる」
この記事では、口に出せなかった気持ちの正体に静かに目を向けてみたいと思います。
1. 「悲しみ」より先に来るのは「怒り」かもしれない
がんという現実を前にして、真っ先に湧き上がってくるのが「怒り」だった・・・
そんな声を多く聞きます。
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なぜ、あの人が病気にならなければいけなかったのか
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なぜ、自分には何もできないのか
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なぜ、普通の日々を続けられないのか
でもその怒りの裏側には、圧倒的な無力感や理不尽さへの悲しみがあります。
怒りを感じてしまう自分を、どうか責めないでください。それは人間として自然な反応です。
2. 「逃げたい」気持ちにフタをしない
誰にも言えなかったけれど、
「もう限界」「何もかも忘れて逃げたい」と思ったことはありませんか?
その感情を持ったこと自体に、罪悪感を覚える必要はありません。
人は、自分を守るために「感じないようにする本能」が働くものです。
逃げたい、という感情が湧いたとき、こう思ってください。
「それだけ自分が頑張っている証拠だ」
「ちゃんと限界に気づけているってことだ」
大切なのは、逃げずに耐えることではなく、一度立ち止まって深呼吸することです。
3. 誰にも話せない理由は「迷惑をかけたくない」から
支える人ほど、「周囲に迷惑をかけたくない」という思いが強いものです。
でもそれは、本当は“話したい気持ち”の裏返しかもしれません。
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「話してもどうにもならないし」
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「誰かに打ち明けたところで、重くなりそう」
そんなふうに思って、気持ちを封じ込めてしまう人がとても多いのです。
でも実は「誰かに聞いてもらうだけ」で、驚くほど心が軽くなることがあります。
4. 感情は「言葉にする」ことで整理できる
「何を感じているか、分からない」
そう思うときこそ、言葉にしてみることが大切です。
ノートに書くでもいい、スマホにメモするでもいい。
「怖い」「さみしい」「腹が立つ」ただ単語だけでも構いません。
言葉にすることで、混乱していた感情が整理されはじめます。
それが、次の一歩を踏み出すための大きな助けになります。
5. 受け止めてくれる「たった一人」がいればいい
すべてを話せる人は、何人もいなくていい。
あなたの気持ちを受け止めてくれる“たった一人”がいれば十分です。
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家族以外の友人
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同じ立場を経験した人
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支援団体の相談員
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あるいは、匿名で話せる第三者
「話してもいいんだ」と思える場所が、あなた自身の支えになります。
おわりに:「その気持ちがあるからこそ、あなたは支えている」
誰にも話せなかった気持ちがあるということは、
それだけあなたが真剣に、深く、相手のことを思っている証でもあります。
不安になるのも、怒りが湧くのも、逃げたくなるのもすべて、自然で尊い感情です。
そのままのあなたを認めてあげてください。
弱さを認めることは、強さの証でもあるのです。
▼このシリーズについて
このブログでは、がん患者とそのご家族を支えるための言葉や接し方について、シリーズでお届けしています。