【レジメン】
・Pertuzumab(ペルツズマブ:パージェタ)
初回 840mg:点滴静注(60分)
2回目以降 420mg:点滴静注(30分)
・Trastuzumab(トラスツズマブ:ハーセプチン)
初回 8mg/kg:点滴静注(90分)
2回目以降 6mg/kg:点滴静注(30分)
・DTX(ドセタキセル:タキソテール)=75mg/m2:点滴静注(60分以上)
【前投薬】
デキサメタゾン6.6mgIV(Day1)
※Pertuzumabを単独投与した場合の有効性および安全性は確立していない
基本事項
【適応】
HER2陽性の手術不能または再発乳がん
【奏効率】(Pertuzumab+Trastuzumab+Docetaxel療法)
・奏効率
80.2%
・無増悪生存期間(中央値)
18.5カ月
・生存期間(中央値)
56.5カ月
【副作用】
・下痢:All Grade=66.8%、Grade3以上=7.9%
・脱毛:All Grade=60.9%
・好中球減少:All Grade=52.8%、Grade3以上=48.9%
・悪心:All Grade=42.3%、Grade3以上=1.2%
・疲労:All Grade=37.6%、Grade3以上=2.2%
・発疹:All Grade=33.7%、Grade3以上=0.7%
・食欲減退:All Grade=29.2%、Grade3以上=1.7%
・粘膜の炎症:All Grade=27.8%、Grade3以上=1.5%
・無力感:All Grade=26.0%、Grade3以上=2.5%
・末梢性浮腫:All Grade=23.1%、Grade3以上=0.5%
・便秘:All Grade=15.0%、Grade3以上=0%
・発熱性好中球減少症:All Grade=13.8%、Grade3以上=13.8%
・皮膚乾燥:All Grade=10.6%、Grade3以上=0%
レジメンチェックポイント
①休薬期間・投与量・投与速度の確認(Pertuzumab+Trastuzuma)
・Pertuzumabは前回投与から6週間未満のときは420mgを投与する。前回投与から6週間以上のときは改めて初回投与量の840mgで投与を行う
・Trastuzumabは初回8mg/kg、2回目以降6mg/kg。予定より1週間を超えて遅れた場合は、改めて8mg/kgから開始
・Pertuzumabは初回60分かけて投与。初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分まで短縮できる
・Trastuzumabは初回90分かけて投与。2回目以降、Infusion reactionなどのアレルギー反応がなければ30分まで短縮
②投与量の確認(DTX)
国内において承認されている乳がんにおけるDTXの用量は60mg/m2であるが、本レジメンの国際臨床試験では100mg/m2、または75mg/m2で行われ、本邦では75mg/m2で行われた添付文耆を参考に、投与量は適宜増減を行う
③延期の基準(DTX)
好中球数が1,500/mm3未満まで減少した場合、または血小板数が100,000/mm3未満まで減少した場合は、回復するまで投与を延期する
④アルコール過敏症の確認
DTX(タキソテール)の添付溶解液にはエタノールが含まれているので、アルコールに過敏な患者に投与する場合は、添付溶解液を使用せずに生理食塩液、または5%ブドウ糖液で溶解すること。アルコールで希釈された製剤ではアルコールを抜くことはできないため注意する。なお、現在はプレミックス製剤でも、アルコールを含有しない製剤も発売されている
※DTX製剤について
現在、本邦においては、アルコールを含む添付溶解液にて希釈後使用する製剤と、すでにアルコールなどで希釈された製剤、およびアルコールを含有しない液体製剤などが販売されており、濃度、アルコール含有量が異なるため注意が必要である
⑤心機能検査の確認(Pertuzumab+Trastuzumab)
定期的な心機能モニタリングにおいて、LVEF40%未満、あるいは40~50%で、ベースラインからのLVEFの低下が10%以上となった場合は、投与を延期する
※通常患者で12週間ごと、無症候性心機能障害患者で6~8週ごと
⑥減量基準(DTX)
・発熱性好中球減少症、または1週間を超えて持続する好中球数500/mm3未満の発現により投与延期した場合と、血小板減少が100,000/mm3未満の発現により投与を延期した場合、再開時に75mg/m2から55mg/m2に減量
・高度または次第に増悪する皮膚反応の発現のときに、75mg/m2から55mg/m2に減量
⑦中止基準(DTX)
3週間を超えて投与延期しても毒性の回復が認められない場合、または下記のときは投与を中止する
・好中球減少
発熱性好中球減少症が回復しない
500/mm3まで回復しない
・血小板減少
100,000/mm3以上まで回復しない
・過敏症
高度な過敏症
・末梢神経障害
Grade3以上
・皮膚反応
55mg/m2まで減量後も高度、または次第に増悪する皮膚反応が発現
・総ビリルビン
正常値上限以下まで回復しない
・肝酵素
AST、ALT>正常値上限×1.5かつALP>正常値上限×2.5
⑧相互作用
アゾール系抗真菌薬(ミコナゾールなど)やエリスロマイシン、クラリスロマイシン、シクロスポリン、ミダゾラムの併用によりCYP3A4を阻害、または、DTXとの競合によりDTXの血中濃度が上昇し、副作用が強くあらわれることがある
副作用対策と服薬指導のポイント
①Infusion reaction
PertuzumabとTrastuzumabは、投与24時間以内にInfusion reactionが報告されている。投与中に悪寒、発熱、疲労、悪心、紅斑、高血圧や呼吸困難などがみられた場合は、医療者に申し出るように伝える
第Ⅲ相臨床試験において、軽度のInfusion reactionが起こった場合、次回以降の投与前に副腎皮質ホルモン、抗ヒスタミン薬および解熱薬の前投与が許容された
②心機能モニタリング
PertuzumabとTrastuzumab投与により、心障害、うっ血性心不全が起こることがある。平らな道を歩いただけでも心臓がドキドキするような動悸、息切れ、または、脈が速くなったりする頻脈があった場合は、施設へ連絡するように伝える。投与中は通常患者で12週間ごと、無症候性心機能障害患者で6~8週間ごとにLVEFのモニタリングを行う
③アルコールに関する問診(DTX)
自動車の運転など、危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること
④DTXは添加剤としてポリソルベート80を含有しているため、重篤な過敏症の報告がある患者観察には十分留意を要する
⑤DTXの用量規制因子は白血球(主に好中球)減少であり、重篤な白血球減少に起因した治療関連死が認められている。患者には感染予防(手洗い、うがい、マスクの着用など)の励行を指導する必要がある。また、発熱性好中球減少症の治療として、抗菌薬の投与を迅速に行う体制を整えておく必要がある
⑥脱毛
通常、DTXの投与開始2~3週間経過後に発現し、治療中止後、半年~1年で回復することを伝える
⑦浮腫(DTX)
浮腫などの体液貯留が高頻度にみられ、総投与量が350~400mg/m2を超えると発現頻度が上がるため、足のむくみなどの症状が出れば申し出るように伝える。浮腫の発症は毛細血管漏出症候群によるもので、発症後はデキサメタゾンなどを投与する