【レジメン】
Brigatinib(ブリグチニブ:アルンブリグ)=1回90mg:1日1回 経口 7日間 連日投与
その後 1回180mg:1日1回 経口 連日投与 PD(増悪)まで
基本事項
【適応】
ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
【奏効率】
<海外第Ⅲ相臨床試験 ALTA-1L試験:未治療例>
・客観的奏効率(CR+PR)
74%
・無増悪生存期間(中央値)
24.0カ月(18.5~未到達)
<国内第Ⅱ相臨床試験 J-ALTA試験:既治療例、未治療例(一部)>
・客観的奏効率(CR+PR)
29.8%(3.7~9.3)
・無増悪生存期間(中央値)
7.3カ月
【副作用】(ALTA-1L試験/J-ALTA試験)
<ALTA-1L試験>
・CK上昇:All Grade=46%、Grade3以上=24%
・下痢:All Grade=52%、Grade3以上=2%
・悪心:All Grade=30%、Grade3以上=2%
・リパーゼ上昇:All Grade=23%、Grade3以上=14%
・AST上昇:All Grade=26%、Grade3以上=4%
・アミラーゼ上昇:All Grade=18%、Grade3以上=6%
・ALT上昇:All Grade=21%、Grade3以上=4%
・高血圧:All Grade=32%、Grade3以上=12%
・間質性肺疾患:All Grade=3%、Grade3以上=<1%
<J-ALTA試験>
・CK上昇:All Grade=76%、Grade3以上=19%
・下痢:All Grade=43%、Grade3以上=0%
・悪心:All Grade=38%、Grade3以上=0%
・リパーゼ上昇:All Grade=33%、Grade3以上=14%
・AST上昇:All Grade=29%、Grade3以上=1%
・アミラーゼ上昇:All Grade=31%、Grade3以上=4%
・ALT上昇:All Grade=18%、Grade3以上=0%
・高血圧:All Grade=40%、Grade3以上=11%
・間質性肺疾患:All Grade=6.9%、Grade3以上=1.4%
レジメンチェックポイント
①副作用に対する休薬・減量および中止基準の確認
副作用が発現した場合には、以下の基準を考慮して、本剤を休薬・減量または中止すること。ただし、本剤1日1回90mgを超える投与量の投与時において、14日間以上休薬し、再開する場合、本剤の投与量は休薬の理由を問わず7日間は1日1回90mgとすること。7日間の投与後の投与量は、副作用や患者の状態に応じて1日1回120mgまたは180mgとすることができる
<用量レベル(Brigatinibの1日用量(1日1回投与)>
・レベル2:180mg
・レベル1:120mg
・レベル0:90mg
・レベル-1:60mg
・中止:60mgで忍容性が得られない場合は本剤の投与を中止すること
<副作用に対する休薬・減量・中止基準>
・間質性肺疾患:Grade1=ベースラインに回復するまで休藥する。回復後、同一用量で投与再開できる。再発した場合、投与中止する。Grade2=ベースラインに回復するまで休薬する。回復後、1用量レベル減量して投与再開できる。再発した場合、投与中止する。Grade3または4=投与中止する
・高血圧:Grade3=Grade1以下に回復するまで休薬する。回復後、1用量レベル減量して投与再開できる。Grade4=Grade1以下に回復するまで休薬する。回復後、1用量レベル減量して投与再開できる。再発した場合、投与中止する
・徐脈:Grade2または3=Grade1以下または心拍数が60回/分以上に回復するまで休薬する。徐脈を起こすことが知られている併用薬があり、当該併用薬が投与中止または減量された場合、回復後、同一用量で投与再開できる。徐脈を起こすことが知られている併用薬が投与中止・減量されない場合、または当該併用薬がない場合、回復後、1用量レベル減量して投与再開できる。Grade4=Grade1以下または心拍数が60回/分以上に回復するまで休薬する。徐脈を起こすことが知られている併用薬があり、当該併用薬が投与中止または減量された場合、回復後、1用量レベル減量して投与再開できる。徐脈を起こすことが知られている併用薬がない場合、投与中止する。再発した場合、投与中止する
・視覚障害:Grade2または3=Grade1以下に回復するまで休薬する。回復後、1用量レベル減量して投与再開できる。Grade4=投与中止する
・クレアチンキナーゼ(CK)上昇:Grade3または4(Grade2以上の筋肉痛または脱力を伴う)=Grade1以下またはベースラインに回復するまで休薬する。回復後、同一用量または1用量レベル減量して投与再開できる。再発した場合、Grade1以下またはベースラインに回復するまで休薬する。回復後、1用量レベル減量して投与再開できる
・リパーゼまたはアミラーゼ上昇:Grade3=Grade1以下またはベースラインに回復するまで休薬する。回復後、同一用量で投与再開できる。再発した場合、Grade1以下またはベースラインに回復するまで休薬する。回復後、1用量レベル減量して投与再開できる。Grade4=Grade1以下またはベースラインに回復するまで休薬する。回復後、1用量レベル減量して投与再開できる
・高血糖:適切な治療を行っても250mg/dLを超える高血糖が持続する場合=血糖がコントロールできるまで休薬する。回復後、1用量レベル減量して投与再開できる
・上記以外の副作用:Grade3=ベースラインに回復するまで休薬する。回復後、同一用量または1用量レベル減量して投与再開できる。再発した場合、Grade1以下に回復するまで休薬する。回復後、1用量レベル減量して投与再開できる。Grade4=ベースラインに回復するまで休薬する。回復後、1用量レベル減量して投与再開できる。再発した場合、投与中止する
②重度の腎機能障害(eGFR30mL/min/1.73m2未満)のある患者は減量を考慮する
③重度の肝機能障害のある患者(Child-Pugh分類C)は減量を考慮する
④併用薬の確認
・CYP3A阻害薬〔アゾール系抗真菌薬(イトラコナゾールなど)やクラリスロマイシン〕、グレープフルーツ(ジュース)等の併用によりCYP3Aを阻害し、Brigatinibの血中濃度が上昇して副作用が強くあらわれることが考えられる
・CYP3A誘導薬(リファンピシンやフェニトイン等)によりBrigatinibの血中濃度低下のおそれがある
副作用対策と服薬指導のポイント
①間質性肺疾患:治療開始早期に急性肺障害、間質性肺疾患があらわれることがあるので、患者には初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱等の有無)を伝え、早期の医療機関への受診について指導する
②高血圧:治療開始早期(半数以上が4週以内)に高血圧があらわれることがあるため、患者には自宅で定期的に血圧を測定し、記録を行うように指導する。高血圧による嘔気や頭痛、呼吸苦、胸痛、めまいなどの症状が認められた場合、または、収縮期血圧180mmHg、拡張期血圧11OmmHg以上の場合には、速やかに連絡するよう伝える
③下痢:治療開始早期(半数以上が2週以内)に下痢があらわれることがあるが、重度の下痢の頻度は低い。下痢の発現時には、脱水症状を予防するため水分摂取を心がけるように指導する。持続する場合には、ロペラミドなどの止瀉薬の使用を考慮する
④クレアチンキナーゼ(CK)上昇:比較的高頻度にCK上昇が生じるため、筋肉痛や脱力感が生じる場合には医療機関に相談するように促す。CK上昇を引き起こす可能性のあるスタチン系薬剤やフィブラート系薬剤等の脂質異常症治療薬や抗精神病薬、ARBなどの併用薬を確認しておく