乳がんは働き盛りの年代に多いため、自身の体調もさることながら、仕事と治療の両立をどうするかが重大な問題となります。
検査から診断までは、ほとんどが通院で可能なため、最初に仕事をまとまって休む必要があるのは、手術による入院時です。
手術後、最終的な治療方針が決まり、必要に応じて通院しながら放射線療法や薬物療法などを受けます。
いずれの治療法も長期にわたる通院が必要になるため、仕事のやりくりを考える必要はありますが、多くの場合、仕事と治療は両立可能です。
確かに、仕事を続けながら治療を受けるのは、体力的にも精神的にも大変です。必ずしも治療に理解のある職場ばかりではないのが現実です。
しかし、仕事があることで治療のための経済的な安定が得られますし、仕事でやりがいを感じたり、社会的なつながりを保つことは、精神面からも重要なことです。
ところが実際には手術や通院治療を前にして仕事を辞めてしまう患者さんが少なくありません。
最終的な治療方針は、手術後の病理検査の結果で決まります。それによって、手術前に説明を受けていた治療方針と変わることもあります。仕事を辞める決断を急ぐ必要はないので焦らず、慌てず時間をかけて検討することが重要です。
周囲の理解とサポートを得る
乳がんと診断されたら、職場の就業規則や福利厚生制度などを確認することが大切です。また、上司や人事担当者に治療内容を説明して、入院中の仕事のやりくりや、退院後の職場復帰について相談しましょう。
なかには、「周囲に心配をかけたくない」「病気だと偏見をもたれたくない」「仕事がなくなるのではないか」といった理由で職場に相談しない人もいます。しかし、安心して治療を続けるためにも、職場の協力は不可欠です。
また、「最終的な治療方針がわからないと、職場にどう相談すればいいかわからない」という声も聞きます。それなら、主治医に可能性の高い治療スケジュールを出してもらい、それをもとに職場と事前相談する、ということも可能です。
相談開始は早いにこしたことはありません。手術後、最終的な治療方針が決定したら、改めて職場に伝えればよいです。
職場と信頼関係を保つためにも、随時、報告することのほうが大切です。
無理をしないことが仕事を継続するためのポイント
職場に復帰し、治療との両立を始めたものの、副作用や体調不良などで、以前と同じような仕事のパフォーマンスを発揮できないことがあります。
しかし、忙しい同僚を見て「これ以上迷惑はかけられない」と、不調を隠してがんばってしまう人がいます。そうして無理を続けていると、やがて長期に仕事を休まなければならなくなり、治療面にまで支障が出る可能性があります。
そうなる前に上司に相談するのが理想的ですが、自分から言い出せない場合は、大きな会社であれば職場の産業医や産業看護師から、会社や上司に説明してもらうのがよいです。産業医がいない場合は、地域産業保健センターに相談してみましょう。
さまざまな理由から、退職や、非正規社員への変更などを考える場合でも、早急に結論を出すのはやめましょう。主治医や会社,家族と話し合ってからでも遅くはありません。
労働に関する相談窓口として、地域のがん相談支援センター、産業保健総合支援センター、総合労働相談コーナーなどがあります。
治療と仕事を両立するための会社の制度やサポート
・時差出勤・時間単位の休暇制度
・治療目的の休暇・休業制度
・失効年次有給休暇の積立制度
・フレックスタイム制度
・在宅勤務制度
・治療日を考慮したシフト編成 など
※自分の職場にどのような制度やサポート体制があるのか確認しておきましょう。