乳がんの放射線治療は主に温存手術後に再発予防の手段として行われます。この記事では放射線治療の副作用と、副作用をできるだけ軽くするためのケアについて解説しています。
放射線治療は手術や検査の結果をふまえて治療方針が決められます。治療計画用のCTで画像撮影を行い、照射の範囲や、1回あたりの放射線量、照射回数などが細かく検討されます。
さらに患者さんの体表に照射範囲をインクでマーキングします。
放射線治療の進め方
放射線照射は、一般的に、1日1回、週末以外の5日間を通院して受けます。
治療時間は数分程度ですので、仕事を続けながらの治療も可能です。週5日の照射のローテーションを5週間続けます。最近では、患者さんの条件により1回の照射線量を増やし、照射日数を減らすことも行われるようになりました。
照射中に痛みや熱さを感じることはありません。
乳がん放射線治療の副作用のほとんどが皮膚のトラブル
放射線療法は、がん病巣に限局して放射線を照射するため、副作用の大半は照射した部位にあらわれます。
乳がんの放射線療法の場合は副作用のほとんどが、皮膚炎(放射線皮膚炎)です。髪の毛が抜けたりめまいや吐き気が起こることは、基本的にはありません。
治療中~治療後早期にあらわれる副作用
照射から短期間であらわれる副作用を「急性障害」といいます。
放射線療法の開始直後から3~4週間くらいまでのあいだに、放射線が当たった場所の皮膚が日焼けのように赤くなってヒリヒリしたり、かさかさしてかゆみを感じることがあ
ります。
放射線が当たったことで、皮脂腺や汗腺の機能が低下したためです。こうした症状は、治療が終われば、徐々に回復していき、やがてもとどおりの状態になります。
照射が終了してまもなく、皮膚が黒ずんだり、乳房が少し硬くなることもあります。多くの場合、日常生活に支障はなく、次第に回復します。
治療終了後、数か月~数年後にあらわれる副作用
放射線療法が終了してから数か月~数年後にあらわれる副作用を「晩期障害」といいます。
皮膚や乳腺が硬くなる、毛細血管が浮き出るといった症状があらわれることがあります。また、放射線が肺に当たったことで、まれに肺炎を起こすことがあります。放射線療法による肺炎を「放射線肺臓炎」といいますが、適切に治療すれば回復します。
咳や微熱、息苦しさといった症状があれば、病院を受診しましょう。
なお、放射線療法後に出産する場合、照射した側の乳房からは母乳がほとんど出ません。しかし、反対側の健康な乳房には影響しないため授乳は可能です。
放射線治療中~後、日常生活での副作用を軽減させるケア
放射線療法による皮膚炎の対処法では、皮膚への刺激を避けることが大切です。
治療開始からしばらくして疲れを感じることがあります。その場合は、十分な休息や眠をとるなど、体調管理につとめましょう。
スキンケア
爪を立てて皮膚をかかないようにしましょう。かゆみが強い場合は、主治医に相談して、ステロイド入りの軟膏などを使うことなどで対応できます。絆創膏や湿布を貼らないようにすることも大切です。
皮膚の赤みがとれたら、保湿ローションなどで保湿すると回復が早いです。
入浴時
低刺激の石けんを使い、肌をゴシゴシ洗わないよう気をつけましょう。石けんを泡立ててやさしく洗うとよいでしょう。照射後1か月は、刺激の強い入浴剤を避けるのがよいです。
体調管理
疲労感が強いときは無理をせず、休息を心がけましょう。咳や微熱、息切れなどがある場合は病院を受診して肺に異常がないか確認しましょう。
服装は締め付けず、ゆとりのある下着を選ぶこと。素材の柔らかい衣類を選ぶことで回復が早くなります。