「大腸がん」といっても実はがんの形や組織タイプは異なり、それによってがんの進行度合いなども異なります。その違いはがんの治療を進めるうで重要な情報だといえます。
大腸がんの肉眼的な形の分類
大腸がんを見た目で分類する方法は、胃がんと同様に1~4型と、これに表在型の0型、これに分類できない特殊型をふくめて6つの型に分けられています。
大腸がんの大部分は2型で、全体の7Oパーセントを占め、続いて3型、1型が多いですが、最近では早期がんが多く発見されるようになったので、0型も増えてきています。このように大腸がんは限局性のものが多く、4型は非常にまれで、せいぜい1パーセントです。
1型=腫瘤(しゅりゅう)型
2型=潰瘍限局(かいようげんきょく)型
3型=潰瘍浸潤(かいようしんじゅん)型
4型=びまん浸潤型
大腸がんの組織タイプ
大腸がんは組織のタイプ・細胞の成熟度によって高分化腺がん、中分化腺がん、低分化腺がんと、特殊型として粘液がんなどに分類されます。
大腸がんの90パーセントは乳頭状ないし管状の分化した腺がんで、たち(質)の良い高分化、中分化の腺がんが大部分を占めます(高分化ほど正常細胞に近くたちがよいとされています)。このほかに少数ですが、粘液がんがあります。粘液がんは肛門直腸部および回盲、上行結腸にやや多く見られるのが特徴です。
低分化腺がんや未分化がんが5~10パーセントに認められ、これらは一般的に進展が急で予後不良です。このほか、まれには印環細胞がんや粘液がんがあります。
特殊な悪性腫瘍としてはカルチノイド、嚢腫型がんがあり、嚢腫型は虫垂が嚢腫状に拡張したもので悪性度は低いのですが、嚢腫が破れ腹膜播種が起こると治療が難しくなります。
大腸がんの進行
大腸がんは大部分が高分化、中分化の腺がんのため、ゆるやかに、長く局所にとどまって進行します。発生に関しては腺腫のがん化、あるいは新生の説がありますが、とくに腺腫内がんとされるものやポリープがんが多く見られるのは、腺腫のがん化がかなりあるということと同時に、がん化しでも進行がゆるやかです。
実際、腺腫を発見してそれを放置しても、1~2年で進行がんになるものは非常に少ないといえます。また、過去に何回か注腸造影X線検査をして「異常なし」とされ、何年後かにがんが発見されて過去のX線画像を見直すと、同じところにしばしば小さな病変があることがあります。
がんは粘膜上皮から発生して、しだいに細胞が分裂増殖を繰りかえして大きくなるとともに、周辺の組織に浸潤して広がり、リンパ管や血管の中に入ります。周辺のリンパ節や血管に入ったがん細胞は血流に乗って全身に広がり、肝や肺に新しく腫瘍を作って増悪していきます。こうなった状態を転移といいます。転移した大腸がんは、最終的にはその臓器の正常な機能を破壊するようになります。
たちの良いがん、悪いがん
同じ大きさでもたちの良いがん、つまり進行が遅く、広がりにくいがんと、小さくても進行が早く、再発・転移しやすいたちの悪いがんがあります。
分化度の高いがん(高分化腺がん)、隆起型のがん、浸潤傾向の弱いがんは比較的おとなしいがんで、多少大きくても手術をすれば治療完了となるものが多いです。反対に低分化や未分化のがん、潰瘍を作って周辺への浸潤する傾向の強いがんは、手術しても再発しやすいといえます。
組織タイプの特徴
大腸がんの大きな特徴は、その90パーセントが分化型腺がん、とりわけ高分化型が多いことで、肉眼的にも2型(限局潰瘍型)ないし1型(腫瘤型)が多いことです。その進行も比較的ゆるやかで、腹膜播種やリンパ節転移のために手術もできない、となることは少ないのですが、大腸がんは肝転移を起こしやすいので楽観視はできません。
いっぽう、3型、4型の特徴のある低分化腺がんは頻度は高くないのですが、その進行はとても早く、予後は不良のものが多いといえます。
大腸がんの特徴の1つに、多発がんが多いことがあげられます。つまり、がんができたときに大腸の一か所に存在するのではなく複数の箇所に存在することが多いということです。大腸は長い管なので、治療にあたっては他部位にがんがないかどうか慎重な検査が必要であり、また術後にも、新しい別のがんの発生を定期的に追跡調査すること重要になります。
以上、大腸がんのタイプについての解説でした。