肺がんで使われるようになった免疫チェックポイント阻害薬「イミフィンジ(一般名ー名デュルバルマブ)」について、適応となる条件や効果、副作用、薬価(費用)について分かりやすく整理します。
イミフィンジは肺がんで適応となった4つ目の免疫チェックポイント阻害薬です(1.オプジーボ、2.キイトルーダ、3.テセントリク)。
イミフィンジはどのような薬か?
がん細胞は、その表面に「PD-L1」という物質を作ることで、免疫システムによる攻撃から逃れようとすることが分かっています。
イミフィンジはがん細胞の「PD-L1」に結合することで「免疫システムががん細胞を攻撃できるようにする」作用のある薬です。
イミフィンジが適応となる人
今後、様々ながんの部位でイミフィンジの利用が承認される可能性がありますが、ここでは肺がんに対して、現時点で承認されているものについて記載します。
肺がんにおいては、「非小細胞肺がん」が対象で、使える状況は「切除不能な局所進行(ステージ3)がんで、手術の代わりに行った化学放射線療法(薬物+放射線治療)の後に維持療法として(進行を防ぐための治療手段として)承認されています。
原則として、化学放射線療法終了後、42日以内に投与するというルールになっています。昨今、肺がんにおいてはPD-L1の発現率を調べますが、イミフィンジはPD-L1の発現の有無、発現の度合に関わらず使用が可能です(ヨーロッパではPD-L1未発現の人には承認されていない)。
手術後の投薬や、一次治療薬としての投与については2019年上旬の段階では承認されていませんが、今後適応条件が拡大する可能性はあります。
イミフィンジの効果
海外で行われた臨床試験での結果は以下のとおりです。
【対象】:プラチナ系の抗がん剤を用いた化学放射線療法後に進行が認められなかった切除不能なステージ3(局所進行)の非小細胞肺がん患者さん
【試験方法】:プラセボ群(偽薬)とイミンフィンジ投薬群を比較。
【効果】:プラセボ群の無増悪生存期間の中央値(PFS)が5.6ヶ月に対して、イミフィンジ群は16.8ヶ月という結果。
無増悪生存期間とは、がんが進行しないで生きている期間のことです。
イミフィンジの副作用
自己免疫疾患の既往歴のある患者さんは、自己免疫疾患が増悪するおそれがあるため要注意(慎重投与)となっています。
また間質性肺疾患(放射線性肺臓炎を含む)のある患者さんも肺炎の増悪リスクがあるため要注意(慎重投与)となっています
なお、臨床試験において確認された主な副作用は発疹(15.4%)、甲状腺機能低下症(10.5%)、下痢(9.7%)、間質性肺疾患・肺臓炎(9.5%)などです。
その他イミフィンジの副作用として明らかになっている主な症状は以下のとおりです。すべての症状が起きるわけではありません。副作用として考えられるもの、ということです。
肺機能に関するもの
咳、胸の痛み、息切れ、呼吸しにくい
消化器に関するもの
下痢、頻便、腹痛、出血
内分泌(ホルモン系)に関するもの
冷え、倦怠感、体重の増加・減少、食欲の増加、多汗、動悸、頻脈、手指のふるえ、めまい、吐き気、嘔吐、便秘、抜け毛、頭痛、頻尿など
肝機能に関するもの
吐き気、嘔吐、食欲低下、黄疸、眠気、内出血しやすいなど
腎機能に関するもの
血尿、下肢の浮腫みなど
筋肉に関するもの
筋力の低下、倦怠感、痛みなど
イミフィンジの投与法
静脈の点滴になります。通常は2週間間隔で、1回につき10mgを60分間以上かけて点滴で静脈内に注射します。使用期間は最大で12カ月までとなっています。
イミフィンジの薬価
イミフィンジ120mg 1瓶で11万2938円、500mg 1瓶で45万8750円です。実際にかかる費用は保険適応の度合などによって異なりますので病院に確認しましょう。