腎臓がんは、がんの大きさが4センチ以下では、がんの症状を自覚することは稀です。
それ以上に進行してくると、進行がんでは、血尿、腹部の腫瘤(しこり)、腹痛という3大症状が生じますが、これらが同時にみられることは稀です。
血尿は約半数の患者さんにみられます。最初は肉眼ではわからない程度で、大半は痛みや発熱をともなわない無症候性血尿です。次に、はっきりわかる血尿が出ますが、痛みなどの症状はなく、数日で止まります。
血尿が繰り返しあらわれながら、病状が悪化していきます。
やがて、わき腹がはれ、痛み、不快感、圧迫感を覚えます。
ときには尿管で血液が固まって詰まり、激痛をともなうこともあります。陰嚢の静脈が浮き上がってくる精巣静脈瘤が起こることもあります。
また体重減少、貧血などの全身症状や、腎臓がんから生まれる特殊な物質により、赤血球増多症、高カルシウム血症、高血圧が引き起こされることがあります。
転移した臓器の症状から発見されることも少なくありません。
近年は健康診断での超音波検査、CT検査などが普及したことで自覚症状(三大症状:側腹部の痛み、血尿、腹部の腫瘤)があらわれる前に発見される患者さんが増えています。
小さい腎臓がんの場合は、手術の前にがんかどうかをはっきりさせる検査が重要です。
良性の病気として、腎臓にできる血管腫と筋腫、脂肪腫の固まりである腎血管筋脂肪腫、腎臓に水のたまる袋ができる腎嚢胞、腎臓にできた水のたまる袋の中に偶然出血する出血性嚢胞などがあり、超音波検査、造影CT検査、MRI検査などを組み合わせて診断します。
どうしても診断が困難な小さな腎臓の腫癌は、経過を観察することもあります。
その他の特徴
肺に転移するとせきなどが、骨に転移すると骨の痛みや手足のしびれなどがあらわれます。
腎盂がんは最初から血尿が出やすいのが特徴です。出血が激しいと、尿管内の凝血により、腹部に鈍痛や激痛が走るようになります。
また、ときに腫瘍による尿流障害から水腎症を起こして腎臓がはれ、腎機能が低下します。
腎臓がんの発生に左右差はありません。また発生する部位も差はありません。全体の1%とわずかですが、両側の腎臓に発生することもあります。
腎臓がんは血液を介して全身に転移しやすく、肺転移、骨転移、脳転移などで発見される例が全体の10~20%あります。
腎臓がんの検査と診断方法
腎臓がんの診断は、CTスキャン、MRIなどの画像検査で行われます。腎臓がんは、血流に富む腫瘍であり、造影剤を使用した画像診断が有用です。
近年、検査機器の性能の向上で1~2cmの小さながんも発見できるようになってきました。組織生検は、血流が豊富な特徴から、生検時にがん細胞が血管内に入り転移することが危倶されるので、通常は行いません。
腎臓がんは、肺・骨・肝臓・リンパ節に転移することが多いので、CTスキャンや骨シンチグラフイで治療前に転移を調べます。
腎臓がんの画像診断で鑑別を要するのは、腎血管筋脂肪腫です。腎血管筋脂肪腫は、両方の腎臓に多発することが多い良性腫瘍と考えられています。
しかし大きくなると自然破裂して大出血したり、まれに悪性腫瘍のように他臓器にも病変がおよび、予後の悪い報告例もあります。
腎血管筋脂肪腫は血管・脂肪・平滑筋の3成分からなり、多彩な画像所見を示します。
とくに、脂肪成分が少ないか含んでいない場合には、腎臓がんとの鑑別が難しいことがあります。
また、転移があるかどうかの検査としては、肺転移や肝臓など内臓への転移は造影CT検査、脳への転移はMRI検査あるいは造影CT検査、骨への転移は骨シンチ検査があり、最近は全身の転移の部位の診断にPET-CT検査が有効かどうかの検討が行われています。
腎臓のがんが小さくて、部分切除術を検討する場合、従来から血管造影検査で腎臓がんに栄養を送る血管を確認して手術を行っていましたが、最近では三次元CT検査で栄養を送る血管を確認できるようになり、患者さんに負担の少ない検査ですむようになっています。