こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
腎臓がんの手術を受けられた患者さん、またはこれから手術を検討されている患者さんにとって、手術後の回復期間や日常生活への影響、そして将来の見通しは大きな関心事です。
この記事では、2026年の最新医療情報をもとに、腎臓がん手術後の回復プロセス、起こりうる合併症や後遺症、日常生活での注意点、そしてステージ別の生存率について詳しく解説します。
腎臓がんの主な手術方法
腎臓がんの治療は、病期により決まりますが、手術治療が中心となります。手術方法は大きく分けて2つあります。
根治的腎摘除術
根治的腎摘除術は、副腎や周囲の脂肪組織を含めて腎臓を被っているゲロタ筋膜ごと腎臓を摘出する方法です。腎臓がんが腎臓の上部にあるときは副腎も同時に摘出しますが、腎臓の中央部や下部にあるときは副腎を残すこともあります。
このとき、腎門部のリンパ節も摘出しますが、原則として反対側のリンパ節の摘出は行いません。
腎部分切除術
腫瘍サイズが小さな腎臓がん、特に4センチ以下の場合は、腫瘍とその周囲の正常部分を摘除する腎部分切除術が行われます。この方法は、残った腎臓の機能を温存できるという利点があり、長期的な視点で見たときに、腎機能の低下とそれに伴う合併症への影響を小さくできます。
がんの組織から少なくとも1センチ外側まで切除するため、がんが腎臓の中央部や重要な血管の近くにあるときは実施が難しくなります。
手術のアプローチ方法
手術のアプローチとしては、腹部を大きく切って行う開腹術と、内視鏡下に行う腹腔鏡下手術があります。さらに2026年現在、多くの施設でロボット支援手術が保険診療として実施されています。
| 手術方法 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 開腹手術 | おなかや背中側から切開する | 大きい腎臓がんにも対応可能、確実な視野確保 | 傷が大きい、回復に時間がかかる |
| 腹腔鏡手術 | 数か所の小さな孔から器具を入れる | 傷痕が小さい、早期退院が可能 | 手術時間がやや長い、局所再発リスクがわずかに高い |
| ロボット支援手術 | ロボットを遠隔操作して行う | 繊細で正確な操作、出血量が少ない、腎機能温存に優れる | 実施できる施設が限られる |
最近では、腹腔鏡手術やロボット支援手術が普及してきており、傷痕が小さく、手術後早期に退院できる長所があります。ただし、腎臓がんを摘出するためにある程度の切開が必要です。
大きくない腎臓がんの場合は、ミニマム創手術という第11肋骨の一部を切除する小さな後腹膜切開で、腹腔鏡手術に劣らない早期回復が可能な手術が行われるようになっています。
腎臓がん手術後の回復期間
手術後の回復期間は、手術方法や患者さんの状態によって異なりますが、一般的な経過は次のとおりです。
入院期間
手術後の経過が良好であれば、数日で歩行できるようになり、約1週間で糸を抜いて退院となります。
腹腔鏡手術やロボット支援手術の場合、術中出血の低減や入院期間の短縮といった利点があり、開腹手術と比較して早期の社会復帰が可能です。
ただし、腎部分切除術の場合は手術後の出血や尿の漏れの心配がありますので、安静にしている必要があり、入院期間が少し延長されることがあります。
退院後の生活
退院後は、日常生活では特に制限はありませんが、過度に負荷がかかる運動(筋力トレーニングなど)や飲酒は控えるようにしてください。通常、退院後1か月以上経過すれば、飲酒なども可能になります。
手術中や手術終了後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の体活動などをリハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。
手術に伴う合併症と後遺症
腎臓がんの手術には、いくつかの合併症のリスクがあります。手術前の説明で十分に理解しておくことが重要です。
一般的な手術合併症
手術に伴う合併症として、出血、感染による発熱、腸管損傷などがあります。腎臓がんが大きかったり、貧血があるときは輸血を準備しますが、多くは輸血は行いません。
通常、手術後2〜3日は発熱します。発熱が持続する場合でも一般的には抗菌薬の投与で軽快します。また、感染などにより傷が開くこともあります。
腎部分切除術に特有の合併症
腎部分切除術では、切り取った部分からの出血や尿漏れなど、腎摘除術にはない合併症が発生する危険性があります。
縫い合わせた部分から出血すること(後出血)があった場合には、経皮的に動脈塞栓術を行うか、開腹して再度縫い合わせます。尿漏については、カテーテルを留置してしばらく様子をみますが、止まらない場合には腎摘除術を検討することもあります。
腎機能への影響
片方の腎臓を摘出して腎臓が1つになったとしても、残った腎臓が正常に働いていれば、通常は生活に支障を来すことはありません。
ただし、手術前にすでに腎機能が低下していたり、重症の糖尿病、高尿酸血症などを合併している場合は注意が必要です。がんがなくても将来透析が必要になると予想されるときは、透析可能施設で治療を受けるか、その必要が出てくることを考えておかなければなりません。
手術後の病理検査と追加治療
手術で取り出された腎臓がんの組織は、病理医による診断が行われますが、結果が出るのに1〜2週間かかります。
病理検査では次の項目が診断されます。
- がんの悪性度
- 病理組織の形
- がんの周囲への広がり(局所浸潤の程度)
- がんの血管内への入り込み(静脈浸潤の有無)
- がんのリンパ管内への入り込み(リンパ管浸潤の有無)
- リンパ節、副腎、腎臓の周りの脂肪組織へのがんの転移の有無
- がんの病期
取り出したがんの組織の病理診断で、リンパ節に転移が認められたり、がんが血管のなかに入っていたり(静脈浸潤)、手術後の経過に好ましくない因子が認められたときは、追加の予防的な治療法として、インターフェロンなどのサイトカインの投与か分子標的薬の投与が検討されます。
ただし、2026年時点でも術後補助療法(薬物療法・放射線治療)による明確な再発抑制効果は示されていないため、術後の定期的な画像検査による早期再発の発見と対応が、最も有効な予防策とされています。
日常生活での注意点
根治を目的とした腎摘出術が行われた場合は、手術後に腎臓の機能を検査し、生活における注意点があるかどうか確認します。
腎機能を守るための生活習慣
残った腎臓の機能を保つために、以下の点に注意しましょう。
| 項目 | 具体的な注意点 |
|---|---|
| 食生活 | 暴飲暴食を避け、消化のよいものを規則正しく食べる。塩分をとりすぎないようにし、水分をしっかりとる |
| 体重管理 | 肥満防止に努め、適正体重を維持する |
| 血圧管理 | 日常的に家庭で血圧を測定し、高血圧に注意する |
| 運動 | それぞれの状態に合わせた、疲れすぎない程度の運動を心がける。適度に有酸素運動を行う |
| 生活習慣 | 禁煙すること、飲酒をひかえること、過労を避け、過度なストレスがかからない生活を心がける |
高血圧や糖尿病といった腎臓そのものの機能を悪化させる病気を抱えている場合は、そうした病気を悪化させないために、日常生活での注意や服薬が必要になる場合があります。担当医の注意をよく聞いて生活するよう心がけてください。
薬剤使用時の注意
内服薬や、画像検査で使う造影剤の中には、腎臓の機能に影響を与える可能性のある薬剤もあります。他の医療機関で検査を受けたり、新たに処方された薬を服用したりするときは、事前に担当医に相談しましょう。
定期検査と経過観察の重要性
腎臓がんでは、手術治療以外に治癒を期待できる治療法がないため、手術後の経過観察が重要です。
経過観察の目的
経過観察の最も大きな目的は2つあります。
1つ目は腎機能低下を含めた合併症の確認です。腎臓がんは、腎臓の働きをする実質的な組織である腎実質にできるがんです。そのため、どんな治療を行っても少なからず腎臓の機能に影響します。
2つ目は再発や転移の早期発見です。がんが腎臓にとどまっていて、根治的に腎摘除を行った場合でも、その後、20〜30%の人に再発が見られるとされています。
定期検査の内容と頻度
手術後の定期検査は、再発・転移の有無を調べる画像検査が中心となります。腎臓がんは、肺や腹部のリンパ節、骨、肝臓などに転移しやすいため、これらの部位を重点的に検査します。
経過観察は再発・転移のリスクに応じて計画されますが、手術を受けたすべての患者さんに必要です。がんの病期(ステージ)と組織型によって、その頻度を変えて行います。高いステージの方にはより頻回で、より長い経過観察を行います。
転移がない方の場合は定期的に採血やCTを行い、再発の心配がないかを確認していきます。通常、最初の3年間は3か月から半年おきにCTを行います。
長期的な経過観察の必要性
通常、がんは5年再発しなければ治ったとみなされますが、腎臓がんでは治療後10〜20年にわたって再発の危険があります。そのため、腎臓がんの経過観察は、各患者さんのリスクなどに応じて計画し、5年以上継続して行います。
定期的な検査を受け続けることが重要です。いつもと違う症状や体調の変化を感じた場合は、早めに医師や医療スタッフに連絡して相談してください。
腎臓がん手術後の生存率
2026年の最新データに基づく腎臓がんの生存率について解説します。生存率はあくまでも統計的なデータに基づく傾向であり、一人ひとりの患者さんに必ずしも当てはまるものではありませんが、治療の効果を客観的に知るための重要な指標です。
全体の生存率
腎臓がん全体の5年生存率は、約81.9%(ネット・サバイバル)、実測生存率では75.4%となっています(2015年診断)。全がんの5年生存率が64.1%であることを考えると、腎臓がんは比較的予後の良いがんといえます。
10年生存率は、ネット・サバイバルで67.9%、実測生存率で59.3%です(2012年診断)。
ステージ別の5年生存率
| ステージ | がんの状態 | 5年生存率(ネット・サバイバル) |
|---|---|---|
| ステージI | がんが7cm以下で腎臓内にとどまる | 95.0% |
| ステージII | がんが7cmを超えるが腎臓内にとどまる | 87.6% |
| ステージIII | 腎臓周囲への進展、静脈浸潤、またはリンパ節転移1個 | 77.5% |
| ステージIV | 遠隔転移または複数のリンパ節転移 | 18.5% |
ステージI期の腎臓がんでは、5年生存率が95%と高く、手術によって治る可能性が高い段階です。腎臓がんが見つかった人のうち、ステージIの人が約7割を占めます。
ステージIIでも87.6%と高い生存率を示しており、他のがんのステージIIと比べても高い水準といえます。腎臓がんは大きいほうが転移や再発しやすい特徴がありますが、それでも比較的良好な予後が期待できます。
ステージIIIは、腎臓がんがある程度進行しているものの、腎臓から離れた場所には転移が見つからない状態です。5年生存率は77.5%で、手術によりがんを全て取り除くことができれば完治が望める方もいると考えられます。
ステージ別の10年生存率
| ステージ | 10年生存率(ネット・サバイバル) |
|---|---|
| ステージI | 83.6% |
| ステージII | 73.7% |
| ステージIII | 53.5% |
| ステージIV | 8.4% |
全体的にみると、腫瘍の直径が4cmまでのがんは、手術による治療成績が高い傾向があります。がんの直径が5cmを超えると、予後は明らかに悪くなりますが、それでも早期に発見され適切な治療を受ければ、良好な経過が期待できます。
生存率向上の要因
ここで示した数値は2014-2015年に診断された人々の治療結果であり、近年登場した効果の高い治療薬を使った人の結果が含まれていません。このため、現在の生存率がここで示した数値を上回ることは十分ありえます。
特に、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の開発により、進行例や再発例でも治療成績が改善してきています。インターフェロンαやインターロイキン2といった古典的な免疫療法しか治療として用いることができなかった時代には、再発例に対する有効な治療がなく、3年生存率は10%以下でしたが、最近の医療の発展によって予後は改善されつつあります。
再発について知っておくべきこと
腎臓がんでは、手術後の再発リスクについて理解しておくことが重要です。
再発のリスク
もともと転移がなかった腎臓がんに対して根治的腎摘出術を行った場合でも、約20〜30%に再発が認められることがわかっています。
再発する場合は術後1〜3年以内である場合が多く、特に術後2年以内に再発することが多いとされています。手術で腫瘍を取り除いても、目に見えないレベルで残っていたがん細胞が再び増殖することで再発が起こります。
再発しやすい部位
最も多い再発場所は肺で、約半数を占めます。肺の他にはリンパ節、骨、肝臓などに再発がよくみられます。腎臓がんは血行性に転移しやすいがんで、腎静脈から下大静脈、そして肺へと容易に到達できるため、肺転移が多くなります。
腎部分切除を行った場合、残された腎臓にも再発巣が見つかることもあります。ただし、4cm以下の腫瘍であれば残存腎への再発は1%程度と報告されています。
再発リスクを高める因子
特に以下のような場合、再発リスクが高まるといわれています。
- 腫瘍が大きい
- 悪性度が高い
- 静脈内進展がある
- 全身状態(パフォーマンスステータス)が悪い
2024年の最新研究では、腎臓がんと正常部との境界部の増殖パターンを詳細に分類することで、術後再発を起こしやすいパターンが特定されています。これにより、再発リスクの高い患者さんに術後補助療法を適切に行えるようになる可能性があります。
再発予防と早期発見
腎臓がんを再発させないためには、喫煙・高血圧・肥満といった生活習慣病の管理が重要です。特に禁煙と減塩、適正体重の維持は、再発リスクを抑える要因とされています。また、日常的な有酸素運動を行うことで、ストレス軽減や血流改善といった相乗効果が得られます。
再発した場合でも、早期発見、早期治療を行うことで命を延ばすことができる場合があります。腎臓がんになった際に、手術によって摘出したからといって油断せず、必ず医師の指示の通りに定期的に病院を受診し、適切なフォローアップを受けることが生存率の延長につながります。
まとめ
腎臓がんの手術後は、適切な管理と定期的な検査により、良好な経過が期待できます。片方の腎臓を失っても、残った腎臓が正常に機能していれば、通常の日常生活を送ることができます。
ただし、腎機能を守るための生活習慣の見直しや、長期的な経過観察は必要不可欠です。担当医とよく相談しながら、ご自身に合った生活スタイルを見つけていくことが大切です。
この記事が、腎臓がん手術後の生活を理解する一助となれば幸いです。
参考文献・出典情報
- 国立がん研究センター がん情報サービス「腎臓がん(腎細胞がん)治療」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「腎臓がん(腎細胞がん)療養」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「腎臓がん(腎細胞がん)患者数(がん統計)」
- 小野薬品工業「腎細胞がんの手術後に注意すること」
- 再発がん治療情報「腎臓癌が再発しやすい箇所や5年後生存率を調査」
- がんプラス「腎臓がんの基礎知識」
- オンコロ「腎臓がん(腎細胞がん)の転移・再発」
- じんラボ「腎がんの経過観察(フォローアップ)」
- 東京医科歯科大学「腎臓がんの術後再発リスクを見極める新たな鍵」
- クリニックC4「腎臓がんの生存率│5年・10年生存率やネットサバイバル」

