甲状腺がんの治療は、病期などをもとに選択し、進めていくことになります
治療法には大きくは外科療法と薬物療法があり、外科療法は、最も確実な治療法とされています。
手術はがん病巣の大きさによって、「葉切除術」(左右に分かれている甲状腺の片方を切除する)、「亜全摘」(ごく一部を残して甲状腺を切除する)、「全摘術」(甲状腺全体を切除する)の3つの術式(手術の仕方)があります。
全摘術の対象になるのは、
1.悪性度が高いとされる高齢者(50歳以上)のがん
2.大きな(5cm以上)のがん
3.再発の可能性の高いがん、
4.髄様がんの中の遺伝性髄様がん
5.病期3のすべてのがん、などです。
葉切除術の対象になるのは、1期および2期の乳頭がんと濾胞がんで、左右に分かれている甲状腺の片方を切除する葉切除を行ないます。Ⅲ期および大きながんや悪性度の高いがんの場合は、全体を切除する全摘術を行ないます。
気管や食道、喉頭、頸部リンパ節にも及んでいる場合は、これらの切除も必要です。
入院期間は数日から一週間程度になります。
手術によって喉に縦10cmほどの手術創が残りますが溶けるタイプの、抜糸の必要のない糸を使うので、経過とともに傷は目立たなくなります。
また、甲状腺を全摘しても甲状腺ホルモンを補充していれば、日常生活に支障はありません。
全摘出の場合は、副甲状腺という臓器まで一緒に摘出されるので、新たに血液中のカルシウムの代謝を観察する必要が生じます。
甲状腺がんの薬物治療(抗がん薬治療とホルモン療法、分子標的薬)
抗がん剤の対象になるのは、髄様がん、未分化がん、および4期の乳頭がんです。
シスプラチン(商品名・プラ卜シン、ブリプラチン、ランダ)をはじめ多種類の抗がん薬が使われることがあります。主な手段は以下の2つです。
1.ドキソルビシン+シスプラチン
両剤を3週間ごとに静脈に投与します。この治療法が非常に効果を発揮する患者もあり、まれにがんがいったん消滅し、その後2年以上生存する例もあります。
2.ブレオマイシン+ドキソルビシン+シスプラチン(BAP療法)
未分化がん以外の再発したがんでも、この治療法が用いられる例があります。
しかし、これらは有効性は明確に確認されておらず、保険適応となっていません。
ホルモン療法は甲状腺ホルモンを補充して再発の可能性をおさえる目的で行う治療法ですが日本ではあまり行われていません。
現在、薬物療法の中心になるのは分子標的薬です。
甲状腺分化がんではレンバチニブとソラフェニブ、髄様がんではバンデタニブ、レンバチニブ、ソラフェニブを使用することが多いです。未分化がんでは、手術が困難な場合にレンバチニブを用いることがあります。
甲状腺がんの放射線治療
放射線療法の対象になるのは3期および4期の乳頭がんと濾胞がんで、悪性度の高い未分化がんの治療に用いることもあります。いずれも体の外から放射線を当てる外部照射法が使われることが一般的です
一方、これ以外の病期や病状のがんには、内部照射が行われています。内部照射とは、がん病巣に直接放射線源の放射性元素を入れ、がんを死滅させる治療法です。
甲状腺がん独特の内部照射にヨウ素(ヨード)を放射線源に使う治療法があります。
手術で取り残したがん細胞に放射線の出るヨウ素を吸収させ、内部から放射線を照射してがんを死滅させるという方法です
ただし、未分化がんは、放射性ヨードを取り込まないので、外部照射が行なわれます。