大腸がんだけでなく、食道がんや胃がんなど、消化管のがんは食生活と大きなかかわりがあるといわれています。
日本人に大腸がんが増えてきたのも、食生活の変化、特に高脂肪・低食物繊維の欧米型の食事になったことが大きく影響していることは、さまざまな研究からも明らかです。
世界的に見ても、脂肪の摂取量が多い国ほど大腸がんの発生率が高い傾向にあります。
逆に、菜食主義者(ベジタリアン)や、牛肉や豚肉などの赤身肉の摂取量が少ない国や地域では、大腸がんの発生率が低いと報告されています。
肉に含まれる動物性脂肪をとると脂肪を分解するために胆汁酸が多く分泌されます。
脂肪の分解の過程で産生される二次胆汁酸は、発がん物質であるため、大腸がんになる確率も高くなると考えられています。
二次胆汁酸は、動物性脂肪のほかにも、コレステロールの多い食品(卵黄や乳製品など)をとり過ぎても増えます。
いっぽう食物繊維を多くとっている人は、あまりとっていない人に比べて、大腸がんの発生率が低いと報告されています。
食物繊維は、胃や小腸で消化・吸収されずに大腸に入ってくるので、便の量を増やし、便に含まれる発がん物質を薄めることで、その影響を弱めます。
さらに便通もよくなって、大腸の粘膜が発がん物質にさらされる時間も短くなります。
大腸がんと食物繊維の関係
食物繊維は善玉の腸内細菌の餌となって善玉菌を増やすため、発がん物質をつくる悪玉菌よりも優位になり、それが大腸がんを予防する、といわれています。
いっぽうで、食物繊維に予防効果は認められないという報告もありましたが、現在はかなり食物繊維と大腸がんとの関係が明らかになってきています。摂らなくてよい理由はないので大腸の健康のためには適量の食物繊維をとったほうがよいでしょう。
生活習慣では、肥満が結腸がんのリスク因子となることが確実であると報告されています。
運動不足や肥満から、「高インスリン血症」になると大腸がんが発生する危険性はさらに高くなるといわれています。
また、喫煙や飲酒も、大腸がんのリスク因子といわれています。
がんの発生とタバコには密接な関係があります。
タバコは、がんの発生や老化にかかわる活性酸素を発生させる大きな原因の一つです。
一方、お酒は、タバコほど悪者扱いはされていません。しかし、「大量の飲酒」は、大腸がんの明らかなリスク因子であるといわれています。
大腸がんの発生や再発を予防する食事「青魚を食べる」
さば、あじ、いわし、さんまなどの青魚に含まれる不飽和脂肪酸(EPA=エイコサペンタエン酸、DHA=ドコサヘキサエン酸など。植物油にも含まれている)は、がんの発生を抑える作用があるといわれています。
ただし、焦げの部分には、ニトロソアミンなどの発がん物質が含まれています。
少量なら神経質になる必要はありませんが、焦げの部分を好んで食べることは避けましょう。
大腸がんの発生や再発を予防する食事「ビタミンをとる」
がん抑制に効果のある栄養素としては、緑黄色野菜に多いベータカロチンや、ビタミンC、D、Eなどがあげられます。
中でも果物、野菜、緑茶などに多く含まれるビタミンCは、腸内の善玉菌を増やし、整腸作用があるといわれています。
また、ビタミンの一種である葉酸も、腸の粘膜の機能を正常にする働きがあります。
食事以外の再発予防策
大腸がんの再発予防「肥満はリスクと考える」
肥満が結腸がんのリスクになることが明らかになっています。
運動不足や肥満から、「高インスリン血症」になると、大腸がんが発生する危険性は
さらに高くなるといわれています。
インスリンの血中濃度が高くなり過ぎると、男性では大腸がんにかかるリスクが最大3.2倍に高まることが報告されています。
大腸がんの再発予防「適度な運動を続ける」
多くの研究から、運動が結腸がんの予防として、有効であることがわかってきています(直腸がんについては、まだ結論は出ていません)。
大腸の働きには腹筋(腹直筋)が深くかかわっています。運動によっておなかの筋力を維持することは、大腸の健康につながります。
また、適度にからだを動かすことは、大腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスを整え、ストレスを解消することにもなります。
激しいトレーニングをする必要はなく、ウォーキングや水泳、サイクリングなど、脂肪を燃やす有酸素運動がお勧めです。
大腸がんの再発予防「便通を整える」
便の中には、二次胆汁酸などの発がん物質が含まれています。
大腸がんを予防するには、大腸を通る発がん物質の量を減らすことと、発がん物質が大腸に長くとどまらないようにすることが大切です。そのため、なるべく便秘をしないように心がけましょう。
便通を整えるには、食物繊維をとること、水分をしっかりとること、朝食をきちんととること、適度な運動をすること、などがあげられます。
不規則な生活や睡眠不足なども、便通の異常を起こしやすい要因となります。