脳腫瘍の治療では、まず手術で腫瘍を切除し、その後、放射組治療や化学療法を追加します。脳腫瘍に有効な抗がん剤は限られています。
その理由のひとつは、大部分の脳腫瘍の腫瘍細胞(がん細胞)が、抗がん剤に対する抵抗力をもっているためです。
もうひとつの理由として血液脳関門の存在があげられます。
これは、不要な物質が脳の実質に侵入しないよう脳内を走る血管が特殊な構造で内張りされているものです。
ほとんどの抗がん剤は、血液中に投与されてもこの血液脳関門を通過して脳内に入ることができません。
分子サイズの小さい一部の抗がん剤のみが、血液脳関門を通って脳の実質に到達します。
その代表的なものが、ニトロソ尿素系のアルキル化剤です。
日本では、ニムスチンとラニムスチンが承認されています。
脳腫瘍に対する化学療法の目的は以下の通りです。
①化学療法や化学放射線療法により術後の再発を予防して患者を完治に導く
②手術時に切除しきれなかったがんを化学療法や化学放射線療法により破壊し延命を目指す
③がんの進行を止めて延命を図る、または痛みなどの症状を緩和する
脳腫瘍に対する抗がん剤の投与法
脳腫瘍に対して、抗がん剤はおもに以下の2つの方法で投与されます。
①全身療法
抗がん剤が全身に到達するように静脈に投与したり、口から服用する方法です。
②髄腔内注入法
脳脊髄液に直接、抗がん剤を注入します。脳脊髄液とは、脳と脊髄の周囲を循環し、これらを保護する液体です。
髄腔内注入法には、背中の腰の部分から脊椎中の脳脊髄液に注入する手法、それに頭蓋内に小さなタンクを設置し、脳の髄腔内へ抗がん剤を注入する方法があります。
生分解性の高分子物質(ポリマー)に抗がん剤をしみ込ませ、これを脳腫瘍の切除部位に埋め込む手法も行われています(後出のグリアーデル・ウェハー)。
髄腔内注入法は副作用が強く脳出血を起こしたり、認知力の低下を招いたりするおそれがあります。