アフィニトール(エベロリムス)はもともと、腎臓がんや膵臓の内分泌腫瘍向けに使われていた分子標的薬です。乳がん向けとしては2014年の3月に承認されました。
アフィニトールの作用とは
アフィニトールは毒性の強い、いわゆる「抗がん剤」ではなく、分子標的薬というタイプの薬です。具体的にはがん細胞の増殖に関わるmTOR(エムトール)というたんぱく質に作用し、がんの増殖を止めるという作用があります。
また、mTORは、がん細胞特有の動きである「新生血管を作る」動きにも作用します。がんは新たに血管を作って、養分を得て増殖しますが、その働きも阻害する効果がアフィニトールにはあります。
アフィニトールの効果
アフィニトールは、再発・進行した乳がん向けの薬です。臨床(承認が得られる前のテスト)は世界24か国、724人を対象に行われました。
これは乳がん向けのホルモン薬を単独で使用した場合と、ホルモン薬+アフィニトールの併用の場合を比較し、どちらが有効であったか確認する臨床試験でした。結果、ホルモン療法単独だった「無増悪生存期間」が2.8か月であったのに対し、アフィニトールを併用した場合は6.9か月という報告でした。
無増悪生存期間とは「がんの進行を抑えて生存している」期間の平均値です。これによりアフィニトールの乳がん抑制効果は確かにあると認められ、実際の医療現場で使われるようになりました。
アフィニトールの副作用
効果は確認されたものの、アフィニトールも副作用のある薬です。代表的な副作用としては口内炎、間質性肺炎などがあります。特に口内炎は約64%の患者さんに起きており、粘膜に与えるダメージが強いとされています。
その他、発疹、疲労・倦怠感、食欲不振、下痢、味覚異常、悪心、貧血などがおよそ20%程度の確率で起きることが分かっています。
なお、間質性肺炎は命に関わる副作用です。これが起きる確率は10%以下ですが、咳や呼吸の苦しさを訴えるレベルの症状は60~80%くらいの確率で起こります。
・投与に関するポイント
アフィニトールを食後に内服すると、薬物効果に影響があるため(CmaxとAUCの低下)、必ず空腹時に内服すること。
相互作用が多い薬剤であるため他の医療機関を受診するときや、薬局で市販薬を購入するときは、アフィニトールを内服中であることを医師や薬剤師に伝えましょう。
また、この薬には免疫抑制効果があり、感染症にかかりやすくなります。人ごみを避けること、外出時のマスク着用、外出後の手洗い・うがいなど感染予防対策を講じましょう。
【飲み忘れた場合の対処方法】
・2日分まとめて内服しないこと。
・飲み忘れに気づいたら、できるだけ早い空腹時に1日分を内服する。そのときは、翌日に内服する時間に注意する。
以上、乳がんで使われる分子標的薬についての解説でした。