
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
子宮体がんと診断された患者さんにとって、手術についての正しい理解は治療方針を考えるうえで欠かせません。この記事では、子宮体がんの標準的な手術の内容、所要時間、入院期間について、2026年時点での最新情報をもとに詳しく解説します。
子宮体がんの標準的な手術とは
子宮体がんの治療では、ステージⅠ期からⅢ期まで手術が第一選択となります。子宮頸がんでは手術と放射線治療の治療効果がほぼ同等とされていますが、子宮体がんでは日本でも欧米でも手術が優先されます。
標準的な手術では、子宮だけでなく周辺の器官も含めて切除します。具体的には「子宮全摘出+両側卵巣・卵管切除+骨盤リンパ節郭清」が基本となります。
2023年版の子宮体がん治療ガイドラインでは、再発リスクの評価に基づいてリンパ節郭清の範囲を決定するという個別化治療の考え方が明確になっています。全ての患者さんに同じ範囲の手術を行うのではなく、がんの性質や広がりに応じて手術範囲を調整することが推奨されています。
子宮体がんの標準手術の詳細
子宮摘出の術式
子宮の摘出方法には、主に3つの術式があります。
| 術式 | 切除範囲 | 適応 |
|---|---|---|
| 単純子宮全摘出術 | 子宮と子宮を支える靭帯を子宮に近い部分から切断 | 再発低リスク群 |
| 準広汎子宮全摘出術 | より広く腟壁と周囲の組織を切除 | 一部の症例 |
| 広汎子宮全摘出術 | さらに広範囲に靭帯や腟を切除 | 特定の進行例 |
多くの場合、子宮体がんは単純子宮全摘出術または準広汎子宮全摘出術で対応されます。子宮体がんは卵管を通過して卵巣に転移したり、子宮と直腸の間に転移を起こしたりする特性があるため、両側の卵巣・卵管は摘出する必要があると考えられています。
同様の理由で、子宮と直腸の間にある腹膜も切除します。ただし、妊娠を希望する若年の患者さんで、条件を満たす場合には卵巣温存が検討される場合もあります。
両側卵巣・卵管切除の理由
子宮体がんでは、卵管を経由した卵巣への転移や、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)への転移が起こりやすい特徴があります。このため、標準手術では両側の卵巣と卵管を一緒に切除することがほとんどです。
ただし、2023年版のガイドラインでは、術前にⅠ期・Ⅱ期と推定され、肉眼的に卵巣転移を認めない患者さんに対しては、条件を満たせば卵巣温存の選択肢もあることが示されています。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
リンパ節郭清の考え方
骨盤リンパ節郭清
子宮体がんが子宮筋層内に浸入すると、リンパ管内に浸入し、リンパ流に乗って骨盤リンパ節に転移するリスクが高まります。
リンパ節転移の頻度は、子宮筋層の2分の1以内の浸潤(ⅠA期)では約9%、ハイリスクの組織型でない場合は5~6%程度です。一方、子宮筋層の2分の1を超える浸潤(ⅠB期)では15%以上となります。
2023年版のガイドラインでは、術前に再発低リスク群と推定される患者さんに対しては骨盤リンパ節郭清の省略が勧められる場合があります。逆に、術前に再発中・高リスク群と推定される患者さんに対しては、骨盤リンパ節郭清に加えて傍大動脈リンパ節郭清が推奨されます。
傍大動脈リンパ節郭清
骨盤リンパ節に転移がある場合、その約半数が骨盤リンパ節のすぐ上流にある傍大動脈リンパ節にも転移していることが分かっています。
子宮筋層の半分以上に子宮体がんが侵入している場合(ⅠB期)、リンパ節転移は15%以上なので、傍大動脈リンパ節転移も約8%程度起きる可能性があります。
以下の条件に該当する場合、傍大動脈リンパ節郭清が検討されます。
- 子宮体がんの病巣が大きい
- 子宮筋層内の2分の1以上に浸潤がある
- 卵巣に転移している
- 骨盤リンパ節転移が陽性である
子宮体がんのステージ分類は、子宮頸がんの術前分類とは異なり、手術後の病理診断を加味して決定される術後分類です。例えば、卵巣に転移があればステージⅢA期、骨盤や傍大動脈周囲のリンパ節に転移があればステージⅢC期となります。
なお、2023年6月にFIGO2023という新しい進行期分類が公表されましたが、日本ではまだ正式に採用されておらず、現時点では従来の分類が用いられています。
センチネルリンパ節生検
近年注目されているのが、センチネルリンパ節生検という方法です。これは、がんが最初に転移する可能性が高いリンパ節(センチネルリンパ節)を特定し、そこに転移がなければリンパ節郭清を省略できるという考え方です。
2023年版のガイドラインでも、センチネルリンパ節転移陰性の患者さんにおいては、リンパ節郭清の省略が可能であることが示されています。これにより、リンパ浮腫などの合併症を減らすことができる可能性があります。
大網切除について
大網は胃と結腸に付着し、袋状になって骨盤内に垂れ下がっている膜のような器官です。この器官の役割についてはよく分かっていませんが、小腸などが前腹壁の腹膜に癒着しないよう保護しているという説もあります。
子宮体がんや卵巣がんは大網に転移することがあり、子宮体がんの場合、大網に転移するとステージⅣ期となります。
子宮体がんの組織型がハイリスクである場合は大網切除を行いますが、子宮内膜がんG1、G2であれば大網切除は行いません。なお、大網切除による後遺症はほとんどありません。
手術方法の種類と特徴
子宮体がんの手術には、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術の3つの方法があります。2026年現在、手術方法の選択肢が大きく広がっています。
開腹手術
従来から行われている方法で、下腹部を約20cm切開して手術を行います。術野を直接確認できるため、進行したがんや複雑な手術に対応できます。
| 項目 | 開腹手術 |
|---|---|
| 切開創 | 約20cm |
| 入院期間 | 10~14日程度 |
| 適応 | すべてのステージ |
| 特徴 | 視野が良好、進行がんにも対応 |
腹腔鏡手術
腹部に5~12mmの小さな穴を4~5か所あけ、腹腔鏡(カメラ)と手術器具を挿入して、モニターを見ながら手術を行います。
2014年4月から早期子宮体がん(ⅠA期相当)に対する腹腔鏡下手術が保険適用となり、多くの施設で実施されるようになりました。2023年12月時点では、ⅠA期の場合のみ保険適用となっています。
| 項目 | 腹腔鏡手術 |
|---|---|
| 切開創 | 5~12mmを4~5か所 |
| 入院期間 | 6~10日程度 |
| 適応 | 早期子宮体がん(ⅠA期) |
| 特徴 | 傷が小さい、術後の痛みが少ない、早期の社会復帰が可能 |
ロボット支援手術
2018年4月から早期子宮体がんに対するロボット支援下手術が保険適用となりました。da Vinciサージカルシステムという手術支援ロボットを用いて行います。
術者はコンソールに座り、3D画像を見ながらロボットアームを操作します。自由度の高い操作性と高い視認性により、腹腔鏡手術を上回る精密な手術が可能とされています。
2024年以降、da Vinci SPという最新機種も導入されつつあり、臍部に3~4cmの創1か所のみで手術を行うことができるようになりました。これにより、整容性の向上や痛みの軽減が期待されています。
| 項目 | ロボット支援手術 |
|---|---|
| 切開創 | 約1cmを5か所(Xiの場合)、または3~4cm×1か所(SPの場合) |
| 入院期間 | 6~10日程度 |
| 適応 | 早期子宮体がん(ⅠA期) |
| 特徴 | 3D画像、精密な操作、手ぶれ補正機能 |
腹腔鏡手術とロボット支援手術の費用は、保険診療では同額に設定されています。どちらの手術方法を選択するかは、医療機関の設備や医師の経験、患者さんの病状によって決定されます。
子宮体がん手術の所要時間
手術の所要時間は、術式や手術範囲によって大きく異なります。
| 手術内容 | 所要時間の目安 |
|---|---|
| 子宮摘出のみ | 約120分(2時間) |
| 子宮摘出+骨盤リンパ節郭清 | 約240分(4時間) |
| 子宮摘出+骨盤リンパ節郭清+傍大動脈リンパ節郭清 | 約360分(6時間) |
| ロボット支援手術(リンパ節郭清なし) | 約180~210分(3~3.5時間) |
| ロボット支援手術(リンパ節郭清あり) | 約240~300分(4~5時間) |
傍大動脈リンパ節郭清まで行う手術は所要時間が長くなり、出血量も増加します。そのため、最近では術前の画像診断(MRI、CT、PET-CTなど)で、病巣の大きさや浸潤の深さ、リンパ節腫大の有無などを評価して、傍大動脈リンパ節郭清を実施するかどうかを事前に決めるようにしています。
腹腔鏡手術やロボット支援手術の場合、手術時間は開腹手術よりもやや長くなる傾向がありますが、施設や術者の経験によって差があります。
入院期間について
入院期間は手術方法によって異なります。2026年現在、以下のような目安となっています。
| 手術方法 | 入院期間の目安 | 社会復帰までの期間 |
|---|---|---|
| 開腹手術 | 10~14日程度 | 退院後2~4週間程度 |
| 腹腔鏡手術 | 6~10日程度 | 退院後1~2週間程度 |
| ロボット支援手術 | 6~10日程度(早ければ術後4日で退院) | 退院後1週間程度 |
低侵襲手術(腹腔鏡手術やロボット支援手術)では、傷が小さく、術後の痛みが少ないため、入院期間が短縮できます。また、術後の回復も早く、早期の社会復帰が可能です。
開腹手術の場合、退院後も自動車の運転を1か月程度控えるよう指導されることが多いですが、腹腔鏡手術やロボット支援手術では生活上の制限が少なく、回復が早い傾向があります。
ただし、入院期間は個人差があり、術後の経過や合併症の有無、患者さんの年齢や体力によって変わります。
手術後の進行期決定と追加治療
子宮体がんの進行期(ステージ)は、手術前の画像診断で推定されますが、最終的には手術後の病理診断によって決定されます。
手術で摘出した組織を詳しく調べることで、以下のことが明らかになります。
- がんの組織型(類内膜がん、漿液性がん、明細胞がんなど)
- がんの悪性度(グレード:G1、G2、G3)
- 子宮筋層への浸潤の深さ
- リンパ節転移の有無
- 他の臓器への転移の有無
これらの情報をもとに、再発リスクを評価し、術後の追加治療(補助療法)が必要かどうかを判断します。
再発中・高リスク群と判断された場合は、化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療などの追加治療が検討されます。一方、再発低リスク群と判断された場合は、追加治療なしで経過観察となることもあります。
手術を受ける前に確認しておきたいこと
子宮体がんの手術を受ける前に、以下の点を担当医に確認しておくことをお勧めします。
- 予定されている手術方法(開腹、腹腔鏡、ロボット支援)とその理由
- 手術の範囲(リンパ節郭清の有無、大網切除の有無など)
- 手術の所要時間と入院期間の見込み
- 手術のリスクと合併症の可能性
- 術後の追加治療の可能性
- 費用の概算(高額療養費制度の利用を含む)
- セカンドオピニオンの必要性
手術方法の選択肢が増えている現在、患者さん自身が情報を整理し、納得して治療を受けることが大切です。分からないことや不安なことがあれば、遠慮せずに医療チームに相談してください。
また、腹腔鏡手術やロボット支援手術を希望する場合でも、がんの進行度や施設の基準によっては適応外となることがあります。施設によって実施できる手術方法が異なるため、必要に応じてセカンドオピニオンを検討することも選択肢の一つです。
参考文献・出典情報
- 日本婦人科腫瘍学会「子宮体がん治療ガイドライン2023年版」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「子宮体がん 治療」
- MSD oncology「子宮体がん 治療(手術療法、薬物療法など)」
- 日本産科婦人科学会「婦人科腫瘍委員会」
- 日本産科婦人科学会「子宮体癌進行期分類(FIGO2023)についてのお知らせ」
- 日本産科婦人科学会「婦人科領域におけるロボット手術に関する指針」の改訂について
- 国立がん研究センター東病院「子宮体がんの治療について」
- メディカルノート「子宮体がんの治療法別の入院期間の目安」
- 新潟大学医学部産科婦人科学教室「悪性疾患について」
- 国立がん研究センター中央病院「ロボット支援下手術(ダビンチ)」