
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
大腸がんと診断され、治療を受けている患者さんにとって、転移という言葉は大きな不安をもたらします。
特に脳への転移は、日常生活に直接影響を及ぼす症状が出現する可能性があるため、早期発見と適切な治療が重要です。
この記事では、大腸がんの脳転移について、検査方法、診断、症状、そして最新の治療方法まで、患者さんが知っておくべき情報をお伝えします。
大腸がんにおける脳転移の特徴と発生頻度
大腸がんの転移先として最も多いのは肝臓と肺です。脳への転移は、これらの臓器と比較すると頻度は高くありません。
転移性脳腫瘍全体でみると、日本では肺がん、乳がん、大腸がんの順に多く、この3つで転移性脳腫瘍の約4分の3を占めています。大腸がんからの脳転移は、全身のがん患者さんの約10%に生じると報告されています。
大腸がんの場合、脳だけに単独で転移することは珍しく、肝臓や肺など他の臓器にも転移がある場合がほとんどです。これは血流の経路と関係しています。
大腸から出た血液はまず門脈を通って肝臓に集まり、その後肺へと流れます。脳への転移は、肝臓や肺に転移した後に起こることが一般的です。つまり、大腸から直接脳へ転移することはなく、肝転移や肺転移を経由して脳に到達する順番となります。
がん細胞は血液の流れに乗って脳に運ばれ、そこで増殖していきます。この転移経路を血行性転移といいます。
脳の中でも、がん細胞がたどり着きやすい場所があります。大脳の皮質と白質の境界部分(皮髄境界)に転移が起こりやすいことが知られています。これは、髄質動脈が皮髄境界部で急激に細くなり、腫瘍細胞がその狭小化した部分にトラップされやすいためです。
また、脳の血流が最も多い中大脳動脈(MCA)の領域にも転移が生じやすいとされています。
脳転移の検査と診断方法
大腸がんの治療において、脳は術後の定期検査で必ず調べる臓器ではありません。そのため、何らかの症状が出現してから脳転移が発見されることが多くなっています。
症状が現れた場合、速やかに画像検査を受けることが重要です。
画像検査の種類と特徴
脳転移の診断には、主にCT検査とMRI検査が用いられます。この2つの検査は、それぞれ異なる特徴を持っています。
CT検査はX線を使用した検査で、比較的短時間で実施できます。造影剤を使用することで、転移巣をより明確に描き出すことができます。緊急時や症状が急速に進行している場合には、まずCT検査が実施されることが多くあります。
MRI検査は磁気を利用した検査で、脳の詳細な画像を得ることができます。特に造影剤を使用したMRI検査では、数ミリ程度の小さな病変も発見できる精度の高さがあります。
転移の個数や大きさ、正確な位置を把握するためには、MRI検査が最も有効です。治療方針を決定する際には、この精密な情報が欠かせません。
MRI検査では、転移性脳腫瘍は様々な信号として映し出されます。造影では、内部に壊死や液状変性、出血などを伴うことが多く、リング状に造影されることが特徴的です。小さな転移巣では、点状や結節状に造影されます。
また、転移性脳腫瘍の周囲には脳浮腫(脳のむくみ)を伴うことが多く、この浮腫が症状の原因となっていることもあります。
検査のタイミング
全身のがん治療中に以下のような中枢神経症状が現れた場合、速やかに脳の検査を受ける必要があります。
数日から数週間続く頭痛や吐き気、手足の動きや感覚の障害、視力や視野の障害、言語や構音の障害、認知機能の障害、失調症状(手足の細かい動きができない、真っ直ぐ歩けないなど)、脳神経の麻痺、てんかん発作などです。
これらの症状が1つでも出現した場合は、すぐに主治医に相談し、緊急にCT検査またはMRI検査を受けることが推奨されます。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
大腸がん脳転移の症状
脳転移による症状は、転移巣の大きさ、個数、そして脳のどの部位に転移したかによって異なります。
主な症状
初期には無症状のこともありますが、腫瘍が増大するにつれて様々な症状が出現します。
症状の出現は転移の場所によって異なりますが、代表的な症状を以下の表にまとめます。
| 症状の種類 | 具体的な症状 |
|---|---|
| 頭蓋内圧亢進症状 | 頭痛、吐き気、嘔吐(特に朝方に強い)、めまい |
| 運動障害 | 手足の麻痺、持っている物を落とす、歩行時にどちらかに傾く、躓きや転倒が増える、ふらつき |
| 感覚障害 | 手足のしびれ、感覚の鈍さ、痛覚の異常 |
| 視覚障害 | 視力低下、視野が欠ける、物がかすむ、物が二つに見える、物にぶつかる |
| 言語・構音障害 | 物の名前が言えない、会話の意味が理解できない、字の読み書きができない、呂律が回らない |
| 認知機能障害 | 物忘れ、人や物に気付かない、今までできていたことができない、判断力の低下 |
| てんかん発作 | 顔や手足が勝手に震える、しびれやむずむずした感じが広がる、意識を失う、意味不明な行動 |
| その他の神経症状 | 顔の痛みやしびれ、聞こえが悪い、声がかすれる、飲み込みが悪くむせる、意識障害 |
てんかん発作(けいれん発作)は、脳転移患者さんの2割から3割に生じるとされており、比較的頻度の高い症状です。
これらの症状は、腫瘍そのものだけでなく、腫瘍周囲の脳浮腫(脳のむくみ)によって引き起こされることも少なくありません。脳浮腫が症状の主な原因となっている場合、適切な治療により症状が改善する可能性があります。
大腸がん脳転移の治療方法
脳転移の治療は、患者さんの全身状態、原発巣(大腸がん)の治療状況、転移の個数、大きさ、位置などを総合的に判断して決定されます。
脳には血液脳関門という特殊な仕組みがあり、血液中の物質が脳内に入りにくくなっています。このため、他の臓器への転移と異なり、抗がん剤が脳転移巣に届きにくいという特性があります。
したがって、脳転移の治療は手術と放射線治療が中心となります。ただし、がんの種類や遺伝子の型によっては、抗がん剤が有効なものも一部存在します。
以下の表に、主な治療方法の特徴をまとめます。
| 治療方法 | 適応 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|---|
| 手術(開頭腫瘍摘出術) | ・転移が1~3個程度 ・大きさ3~4cm程度 ・全身状態良好 ・完全切除が見込める |
・効果が速やか ・確実性が高い ・症状改善が期待できる |
・患者の負担が大きい ・入院が必要 ・部位により実施困難 ・機能障害のリスク |
| 定位照射 (ガンマナイフ、サイバーナイフなど) |
・最大径3cm以下 ・4個程度まで (技術進歩により5個以上も可能) |
・体への負担が少ない ・正常脳へのダメージ小 ・外来治療可能 ・治療期間が短い ・認知機能低下が少ない |
・大きな腫瘍には不向き ・稀に脳壊死のリスク ・効果発現に時間要 |
| 全脳照射 | ・転移が4個以上 ・広範囲に転移 ・微小転移の可能性 |
・広い範囲をカバー ・微小転移にも有効 ・症状緩和率約70% |
・認知機能低下のリスク ・一生涯で一度のみ ・脱毛が起こる ・治療期間2~4週間 |
| 薬物療法 (化学療法・分子標的薬) |
・がんの種類による ・全身治療が必要 |
・全身に作用 ・放射線治療と併用可 |
・血液脳関門で効果限定的 ・副作用のリスク |
手術による治療
手術が検討されるのは、以下のような条件を満たす場合です。
転移が脳の1か所に限られていて、完全に切除できる見込みがある場合、腫瘍のサイズが比較的大きい場合(大脳では直径4cm程度、小脳では3cm程度を超える場合)、全身状態が良好な場合などです。
脳は人間の様々な機能を司る重要な臓器です。手術によって深刻な機能低下を起こさないことが最優先されるため、転移が脳の1か所に限られていても、手術が難しいことがあります。
特に運動野や言語野など、重要な機能を担う領域に近い場合や、深部にある場合は、手術のリスクが高くなります。
複数の臓器に転移があり完全切除が難しい場合でも、麻痺やしびれなどの症状が強く、日常生活に支障をきたしている場合には、症状軽減を目的として腫瘍摘出手術が行われることがあります。
手術で転移巣を摘出した後は、再発予防のために放射線治療を追加することが一般的です。
近年の臨床研究では、手術で完全摘出できた場合、術後に定位放射線治療を追加すると、約70%の病変で治癒が期待できるという報告もあります。
放射線治療
手術ができない場合、または手術後の再発予防として、放射線治療が行われます。脳転移の放射線治療は、定位照射と全脳照射に大別されます。
定位照射(ピンポイント照射)
定位照射は、腫瘍に対して多方向から集中的に放射線を照射する治療法です。周囲の正常な脳組織への影響を最小限に抑えながら、腫瘍に高線量の放射線を届けることができます。
適応となるのは、一般的に転移の最大径が3cm以下で、個数が4個までの場合です。ただし、近年の技術進歩により、これを超える個数でも、病変が小さければ1回の治療で全ての病巣を安全に治療できるようになってきています。
定位照射には、1回で治療を完了する定位手術的照射と、数回に分けて照射する定位放射線治療があります。
治療効果は高く、治療後3か月以内に70~80%の患者さんで脳転移に起因する症状が和らぐとされています。また、手術に匹敵する治療効果が得られることもあります。
定位照射の種類と方法
定位照射を行う装置には、いくつかの種類があります。それぞれに特徴があり、施設によって採用している装置が異なります。
| 装置名 | 放射線の種類 | 固定方法 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ガンマナイフ | ガンマ線 | ヘルメット型装置 | ・小さな病巣もピンポイント治療 ・5個以上の転移も1日で治療可能 ・治療実績が豊富 |
| ライナックナイフ (リニアックナイフ) |
X線 | 金属リング固定 | ・一般的な放射線治療装置を使用 ・導入施設が多い |
| サイバーナイフ | X線 | メッシュ状固定具 (プラスチック製) |
・ロボットアームで自動照射 ・痛みのない固定方法 ・様々な角度から照射可能 |
| トモセラピー | X線 | プラスチック製マスク | ・回転しながら照射 ・複雑な形状にも対応 |
| VMAT装置 (回転型強度変調放射線治療) |
X線 | プラスチック製マスク | ・複数病変を一度に照射 ・治療時間が短い(約30分) ・最新技術 |
ガンマナイフは、5個以上の転移性脳腫瘍でも1日で定位照射できる唯一の放射線治療機器です。治療成績では、ガンマナイフ治療後に80%以上の確率で神経機能を温存でき、約90%の確率で神経死を予防できるという報告があります。
近年では、プラスチック製のマスク(シェル)を用いた痛みのない固定方法が主流になっており、複数日の治療でも毎回同じ位置で固定できるようになっています。
また、VMAT(回転型強度変調放射線治療)を組み合わせた技術により、複数個の頭蓋内病変を一度に高い精度で照射することが可能になりました。従来は1病変ずつ照射していたため治療時間が長くなっていましたが、最新の技術では1時間以上かかっていた治療が約30分で可能となり、患者さんの負担が軽減されています。
全脳照射
全脳照射は、脳全体に放射線を照射する方法です。転移が4個以上ある場合や、広い範囲に脳転移がある場合、定位照射では対処しきれない場合に提案されます。
また、画像で見えにくい微小な転移がある可能性が高い場合にも有効です。
全脳照射を行うと、約7割の患者さんで脳転移による症状が和らぐとされています。
照射方法には、いくつかのパターンがあります。以下の表に代表的な照射方法をまとめます。
| 照射方法 | 1回線量 | 照射回数 | 総線量 | 治療期間 |
|---|---|---|---|---|
| 標準的方法 | 3グレイ | 10回 | 30グレイ | 2週間 |
| 分割方法1 | 2.5グレイ | 15回(16回) | 37.5~40グレイ | 3~4週間 |
| 分割方法2 | 2グレイ | 20回 | 40グレイ | 4週間 |
1回の線量が少ないほど(治療期間を延長するほど)、白質脳症などの晩期有害事象の発生リスクが下がるといわれています。
患者さんの体調や転移の状況によって、最適な照射方法が選択されます。
全脳照射の場合、広い範囲をカバーできる反面、正常な脳組織にも放射線が当たるため、副作用のリスクがあります。基本的に実施できるのは一生涯で一度だけです。
治療選択の変化
従来は、手術後や定位照射後に全脳照射を追加することが標準的でした。しかし、近年の臨床研究により、全脳照射を追加しても生存期間の延長は証明されていないこと、認知機能の低下というデメリットがあることが明らかになってきました。
定位放射線治療と全脳照射を比較した研究では、頭蓋内の腫瘍制御率は全脳照射併用群が優れていましたが、全生存期間は両群で差がありませんでした。
一方、3か月後の認知機能低下の発生割合は、定位照射単独が63.5%だったのに対し、全脳照射併用では91.7%と有意に高くなっていました。
また、全脳照射による認知機能低下は治療後1~2年程で現れることがあり、長期生存が可能になった現代では、この副作用がより大きな問題となっています。
そのため、日本肺癌学会ガイドラインでも「手術やSRSに全脳照射の併用を行わないことを勧める」とされ、全脳照射の役割は少なくなりつつあります。
現在では、定位照射後は2~3か月ごとに定期的にMRI検査で経過観察を行い、多数の新規病変が出現した場合に、その時点で全脳照射を検討するという方針が増えています。
放射線治療の副作用
定位照射は、手術や全脳照射に比べて副作用が少ないことが特徴ですが、全くないわけではありません。
治療方法によって出現する副作用の種類や程度が異なります。以下の表に主な副作用をまとめます。
| 副作用の種類 | 定位照射 | 全脳照射 |
|---|---|---|
| 脱毛 | 一時的に10円玉程度の範囲 (脳表面近くの病変の場合) |
頭髪全体の脱毛 |
| 急性期の副作用 (治療中~数週間) |
・頭痛 ・吐き気 ・嘔吐 (腫瘍の大きさや位置による) |
・倦怠感 ・吐き気 ・頭痛 ・食欲不振 |
| 晩期有害事象 (数か月~数年後) |
稀に: ・脳壊死 ・脳浮腫 ・出血 ・視力障害 |
・認知機能低下(1~2年後) ・白質脳症(1年以降) ・記憶力低下 ・難聴 |
| 認知機能への影響 (3か月後) |
63.5%で低下 | 91.7%で低下 (定位照射との併用時) |
| 再治療の可能性 | 可能 (新たな病変に対して) |
不可 (一生涯で一度のみ) |
治療範囲が狭い定位照射では、脱毛が起こる場合でも一時的に10円玉程度の範囲にとどまることが多くなっています。全脳照射の場合は、頭髪全体の脱毛が起こります。
全脳照射の晩期有害事象としては、白質脳症があります。高齢者や特定の薬剤を併用している場合、白質脳症の発生頻度が上昇します。この白質脳症は不可逆的で、通常1年以降に発生します。
定位照射と全脳照射を比較した研究では、3か月後の認知機能低下の発生割合が、定位照射単独では63.5%だったのに対し、全脳照射併用では91.7%と有意に高くなっていました。
このため、近年では全脳照射の使用を慎重に検討し、定位照射を優先する傾向が強まっています。
治療後の経過観察
脳転移の治療後は、定期的な経過観察が重要です。特に定位照射を行った場合、2~3か月ごとに造影MRI検査による経過観察が推奨されます。
経過観察の目的は、以下の点を確認することです。
治療した転移巣の効果判定(縮小や消失の確認)、新たな転移の早期発見、再発の有無の確認、治療に伴う副作用(脳壊死、脳浮腫など)の早期発見です。
定位照射後の経過として、治療後3か月以内に70~80%の患者さんで症状が改善します。画像上も、多くの場合で腫瘍の縮小が確認されます。
ただし、稀に治療後数か月経過してから、治療部位に脳壊死や脳浮腫が生じることがあります。このような変化は画像検査で早期に発見できるため、定期的な検査が重要です。
新規病変への対応
定位照射後の経過観察中に新たな転移が発見された場合、その時点で再度治療を検討します。
新規病変が少数であれば、再度定位照射を行うことが可能です。これは定位照射の大きな利点の1つです。
一方、全脳照射は一生涯で一度しか実施できないため、初回治療で安易に使用すべきではないという考え方が主流になっています。
多数の新規病変が出現した場合(脳内播種)や、髄膜播種が明らかになった場合には、その時点で全脳照射の追加を検討します。
予後と生存期間
脳転移の予後は、様々な因子によって大きく異なります。
全脳照射単独での生存期間中央値は4~7か月とされていますが、原発巣の治療が奏功している場合、脳転移が1個の場合などでは、生存期間中央値は10~16か月に延長します。
手術や定位照射を組み合わせた場合、さらに良好な成績が得られることがあります。
予後に影響を与える因子として、以下のような点が挙げられます。
全身状態(パフォーマンスステータス)、原発巣の治療状況、脳転移以外の転移の有無と程度、脳転移の個数と大きさ、年齢、実施された治療の内容です。
全身状態が良好で、原発巣が制御されており、脳転移が限局している患者さんでは、長期生存も期待できます。
近年では、薬物療法の進歩により、脳転移があっても長期間にわたって良好な生活の質を維持できる患者さんが増えています。
最新の治療の進歩
近年、脳転移治療における技術と治療選択肢は大きく進歩しています。
2021年の国立がん研究センターを中心とした臨床試験(JCOG0504試験)では、転移性脳腫瘍の手術後に定位放射線照射療法を行う方法が、全脳照射と同等の生存期間を保ちながら、認知機能低下などの副作用を低減できることが確認されました。
この結果により、転移性脳腫瘍の個数が1から4個で手術が必要な場合には、腫瘍摘出後の定位放射線照射療法が新たな標準治療として推奨されるようになっています。
また、多発脳転移に対しては、Simultaneous integrate boost法という高度な照射法を行う施設も出てきています。これは、全脳照射をしながら画像で見える転移には定位放射線治療並みの強い放射線量を照射する方法で、画像で見える転移も微小転移の出現も制御することを目指しています。
さらに、近年では脳転移に有効な免疫化学療法も発展しており、放射線治療と免疫化学療法を組み合わせるという選択肢も出てきています。
治療方針の決定について
脳転移の治療方針は、転移の個数、大きさ、部位、患者さんの全身状態、原発巣の治療状況など、様々な要素を総合的に判断して決定されます。
以下の表に、一般的な治療選択の目安を示します。
| 転移の状況 | 推奨される治療 | 備考 |
|---|---|---|
| 単発、3~4cm以上の大きな転移 | 手術 + 定位照射 | 全身状態が良好で、手術可能な部位の場合 |
| 1~3個、3cm以下 | 定位照射単独 | 最も一般的な選択肢。術後追加も可 |
| 4~10個程度、小さい転移 | 定位照射単独 (または定位照射 + 全脳照射) |
最新技術では多数個も対応可能 |
| 11個以上、または広範囲 | 全脳照射 | 微小転移の可能性も考慮 |
| 症状が急速に進行 | 全脳照射 → 定位照射追加 | 速やかな治療開始を優先 |
| 無症状、原発巣が制御良好 | 定位照射 + 経過観察 | 認知機能温存を重視 |
| 麻痺など症状が強い | 手術(症状緩和目的) | 完全切除が困難でも実施を検討 |
最初の治療方針がその後の経過に大きく影響するため、状態に余裕があれば十分に検討して決めることが望ましいとされています。ただし、症状が急速に進行している場合には、速やかに治療を開始することが重要です。
治療方針の決定には、主治医だけでなく、脳神経外科医と放射線治療医が合同で検討することが理想的です。複数の専門医の意見を聞くことで、より適切な治療選択が可能になります。
がんが脳に転移したと聞くと、患者さんやご家族は不安になり、絶望的な気持ちになることが多いでしょう。しかし、転移性脳腫瘍の患者さんでも、根治的な治療ができ、何年も再発しないで元気に生活されている方も多数いらっしゃいます。
実際のデータでは、手術で完全摘出でき、放射線治療を追加した場合、約70%の病変で治癒が期待できるという報告があります。さらに、再発した場合にも再手術や放射線治療の追加などの選択肢があります。
大腸がんからの脳転移は、確かに病状が進行していることを示しますが、適切な治療を受けることで、長期間元気に生活することが可能です。
症状に気づいたら速やかに検査を受け、専門医と相談しながら最適な治療を選択していくことが大切です。
参考文献・出典情報
1. 東京都立駒込病院「転移性脳腫瘍について」
2. 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)検査」
3. 千葉大学大学院医学研究院 脳神経外科学「ガンマナイフ(転移性脳腫瘍)」
4. SURVIVORSHIP.JP「がんの脳への転移と日常生活|骨転移のメカニズム」
5. 京都大学医学部附属病院 放射線治療科「定位放射線治療(脳)」
6. 東京大学医科学研究所附属病院 脳腫瘍外科「転移性脳腫瘍」
7. がん研有明病院「脳定位放射線治療」
8. 近畿大学病院「放射線治療による緩和治療」
9. QLifeがんプラス「転移性脳腫瘍の新たな標準治療へ、腫瘍摘出術後の定位放射線照射療法」
10. 再発転移がん治療情報「大腸がんガイドライン解説」