
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
外陰がんは女性性器がんの中で比較的まれながんですが、正しい知識を持つことで早期発見と適切な治療選択につながります。
この記事では、外陰がんの要因、検査方法、ステージ分類、治療法、予後について詳しく解説します。
外陰がんとは|発生部位と組織型の特徴
外陰がんは、女性性器がんの中で子宮がん、卵巣がんに次いで多いがんです。女性性器がん全体の約3~5%を占めています。
外陰とは、女性の外性器全体を指す医学用語で、大陰唇、小陰唇、陰核(クリトリス)、腟前庭、会陰などから構成されています。外陰がんはこれらの部位に発生する悪性腫瘍の総称です。
外陰がんが発生しやすい部位
外陰がんの発生部位には特徴的な傾向があります。最も多いのは大陰唇で、全体の約50~60%を占めます。次いで小陰唇が約20~30%、陰核が約10~15%となっています。その他、会陰部や腟前庭に発生することもあります。
複数の部位に同時に発生する多中心性発生も約5~10%程度見られます。
組織型による分類
外陰がんの組織学的分類では、扁平上皮がんが圧倒的に多く、全体の約85~90%を占めています。これは皮膚の表面を覆う扁平上皮細胞から発生するがんです。
その他の組織型としては以下のものがあります。
| 組織型 | 発生頻度 | 特徴 |
|---|---|---|
| 扁平上皮がん | 85~90% | 最も一般的。HPV関連型と非関連型がある |
| 腺がん | 5~8% | バルトリン腺や汗腺から発生 |
| 悪性黒色腫(メラノーマ) | 2~5% | 色素細胞から発生。進行が速い |
| 基底細胞がん | 2~3% | 比較的予後良好 |
| その他 | 1~2% | 肉腫、未分化がんなど |
外陰がんの発生要因とリスク因子
外陰がんの明確な原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が発生リスクを高めることが知られています。
前がん病変と関連疾患
外陰がんには、がんになる前段階の病変(前がん病変)が存在することがあります。以下の疾患は外陰がんのリスク因子として注目されています。
外陰上皮内腫瘍(VIN)は、外陰がんの前がん病変として最も重要です。VINには通常型と分化型があり、それぞれ異なる背景を持っています。通常型VINはヒトパピローマウイルス(HPV)感染に関連し、比較的若い年齢層に多く見られます。一方、分化型VINは慢性炎症性疾患と関連し、高齢者に多い傾向があります。
外陰硬化性苔癬(リケンスクレローゼ)は、外陰部の皮膚が白く萎縮する慢性炎症性疾患です。長期間放置すると、約4~5%の患者さんで外陰がんが発生するとされています。
外陰白斑症も外陰がんのリスク因子として知られています。外陰部の皮膚が白く変化し、かゆみや不快感を伴うことがあります。
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染
子宮頸がんと同様に、高リスク型HPV(特に16型、18型)の持続感染が外陰がん発生に関与していることが明らかになっています。外陰がんの約30~40%がHPV関連であると推定されています。
HPV関連の外陰がんは比較的若年(40~60歳代)に多く、HPV非関連の外陰がんは高齢者(70~80歳代)に多い傾向があります。
その他のリスク因子
年齢も重要なリスク因子です。外陰がんの好発年齢は60~70歳代で、年齢とともに発生率が上昇します。ただし、若年者でも発生することがあります。
喫煙は外陰がんのリスクを約2~3倍高めることが報告されています。喫煙による免疫機能の低下やHPV感染のリスク増加が関与していると考えられています。
免疫機能の低下も重要なリスク因子です。HIV感染、臓器移植後の免疫抑制薬使用、自己免疫疾患などにより免疫機能が低下している患者さんでは、外陰がんの発生リスクが高まります。
その他、子宮頸がんや腟がんの既往歴がある患者さんでは、外陰がんの発生リスクがやや高いことが知られています。
外陰がんの症状|初期症状と進行時の変化
外陰がんの症状は、がんの大きさや進行度によって異なります。早期発見のためには、これらの症状を知っておくことが重要です。
外陰がんの初期症状
外陰がんの最も一般的な初期症状は、外陰部のしこり(腫瘤)です。自分で触って気づくことも多く、硬いしこりとして触知されます。しこりは痛みを伴うこともあれば、無痛性のこともあります。
外陰部の持続的な痛みや不快感も重要な症状です。特に前がん病変や早期がんの段階から現れることがあります。
外陰部の皮膚の変化も見逃せません。皮膚が白く粗くなったり、赤くただれたり、黒っぽく変色したりすることがあります。また、治りにくい潰瘍やびらんが生じることもあります。
外陰部のかゆみは、外陰硬化性苔癬などの前がん病変を合併している場合に特に強く現れます。持続的なかゆみがある場合は、婦人科を受診することが推奨されます。
排尿時の不快感として、外陰部がほてるような感じや、しみるような痛みを感じることがあります。
進行した外陰がんの症状
腫瘍が大きくなり潰瘍を形成すると、より顕著な症状が現れます。
不正出血や血性の分泌物が見られるようになります。特に腫瘍表面が破れると、自然出血やおりものに血液が混じることが増えます。
悪臭を伴う分泌物の増加も特徴的です。腫瘍が壊死したり、感染を伴ったりすると、膿性で悪臭のある分泌物が増えます。
潰瘍に尿や便が触れることで激しい痛みが生じます。日常生活に支障をきたすほどの痛みとなることもあります。
さらに進行すると、そけい部(太もものつけ根)のリンパ節転移によりリンパ節が腫れて触れるようになります。また、骨盤内への浸潤により腰痛や下腹部痛が出現することもあります。
外陰がんの検査と診断方法
外陰がんが疑われる場合、以下のような検査が行われます。
視診と触診
婦人科診察の基本として、医師が外陰部を直接観察(視診)し、触って調べます(触診)。外陰がんの多くは肉眼で確認できるため、経験豊富な医師であれば視診と触診である程度の診断が可能です。
病変の大きさ、色、形状、硬さ、可動性などを詳しく観察します。また、そけい部のリンパ節を触診し、腫大や硬結の有無を確認します。
組織検査(生検)
確定診断には組織検査が必須です。局所麻酔下で病変の一部を切り取り(生検)、顕微鏡で詳しく調べます。これにより、がんであるかどうか、がんであればどのような組織型かを確定します。
しこりががんかどうか判別できない場合や、前がん病変との鑑別が必要な場合にも組織検査が行われます。
細胞診
病変部から細胞を採取して顕微鏡で観察する検査です。組織検査と併せて行われることがあります。ただし、外陰がんの診断において細胞診は補助的な役割であり、確定診断には組織検査が必要です。
画像検査
がんの広がりや転移の有無を調べるために、各種画像検査が行われます。
CT検査(コンピュータ断層撮影)では、骨盤内や腹部、胸部の状態を詳しく調べ、リンパ節転移や遠隔転移の有無を確認します。
MRI検査(磁気共鳴画像)は、腫瘍の局所の広がりや周辺臓器への浸潤の程度を評価するのに優れています。
PET-CT検査は、がん細胞の代謝活性を画像化することで、リンパ節転移や遠隔転移をより正確に検出できます。進行がんの場合に特に有用です。
そけい部リンパ節の評価のために、超音波検査が行われることもあります。
その他の検査
膀胱や直腸への浸潤が疑われる場合は、膀胱鏡検査や直腸鏡検査が行われることがあります。
全身状態の評価のために、血液検査、尿検査、心電図、胸部X線検査なども実施されます。
外陰がんのステージ分類
外陰がんの病期(ステージ)は、国際産婦人科連合(FIGO)の分類が広く用いられています。病期分類は治療方針の決定や予後の予測に重要な役割を果たします。
| 病期 | 定義 | 詳細 |
|---|---|---|
| 0期 | 上皮内がん | がんが表皮内にとどまり、浸潤していない状態(VIN3) |
| Ⅰ期 | 外陰に限局 | 腫瘍が外陰または会陰に限局し、リンパ節転移なし |
| ⅠA期 | 微小浸潤がん | 間質浸潤が1mm以下で、病変の大きさが2cm以下 |
| ⅠB期 | 早期浸潤がん | 間質浸潤が1mmを超える、または病変が2cmを超える |
| Ⅱ期 | 周辺組織への進展 | 下部尿道、下部腟、肛門への浸潤があるがリンパ節転移なし |
| Ⅲ期 | リンパ節転移あり | そけいリンパ節や骨盤リンパ節への転移がある |
| ⅢA期 | 小さなリンパ節転移 | 1~2個のリンパ節転移(5mm未満)または1個のリンパ節転移(5mm以上) |
| ⅢB期 | 複数のリンパ節転移 | 2個以上のリンパ節転移(5mm以上)または3個以上のリンパ節転移(5mm未満) |
| ⅢC期 | 節外浸潤を伴う転移 | リンパ節被膜外への浸潤を伴う転移 |
| Ⅳ期 | 広範な浸潤または遠隔転移 | 上部尿道・腟粘膜、膀胱・直腸粘膜への浸潤、骨盤骨固定、または遠隔転移 |
| ⅣA期 | 局所進展または固定リンパ節 | 上部尿道・腟、膀胱・直腸粘膜浸潤、骨盤骨固定、または固定・潰瘍化リンパ節 |
| ⅣB期 | 遠隔転移 | 骨盤リンパ節を含む遠隔転移 |
外陰がんの転移について
外陰がんの転移様式を理解することは、治療選択と予後予測に重要です。
リンパ節転移の特徴
外陰部の周囲にはリンパ管が豊富に分布しているため、外陰がんは比較的早期からリンパ節転移を起こしやすい特徴があります。これが外陰がんの治療を難しくしている要因の一つです。
最初に転移するのは、そけい部(太もものつけ根)の浅そけいリンパ節です。その後、深そけいリンパ節、さらに骨盤内のリンパ節へと転移が進みます。
リンパ節転移の頻度は腫瘍の大きさと密接に関連しています。
| 腫瘍の大きさ | リンパ節転移率 |
|---|---|
| 直径2cm以下 | 約10~15% |
| 直径2~3cm | 約25~30% |
| 直径3~5cm | 約50~60% |
| 直径5cm以上 | 約70%以上 |
間質浸潤の深さも重要な因子です。浸潤が1mm以下の微小浸潤がんではリンパ節転移はほとんど見られませんが、浸潤が深くなるほど転移のリスクが高まります。
血行性転移と遠隔転移
進行した外陰がんでは、血流に乗ってがん細胞が運ばれる血行性転移が起こることがあります。遠隔転移の好発部位は、肺、肝臓、骨などです。
局所進展
外陰がんは周辺組織への直接浸潤も起こしやすいがんです。腟、尿道、肛門、直腸、膀胱などへ進展することがあります。
外陰がんの治療法
外陰がんの治療は、病期、腫瘍の大きさ、組織型、患者さんの年齢や全身状態などを総合的に考慮して決定されます。
手術療法
外陰がんの治療の基本は手術です。病期に応じて以下のような術式が選択されます。
0期(上皮内がん)やⅠA期の微小浸潤がんに対しては、局所切除術が行われます。がん組織とその周囲の正常組織を含めて切除します。外陰の形態と機能をできるだけ温存することが可能です。
ⅠB期の早期浸潤がんに対しては、広汎局所切除術または単純外陰切除術が行われます。腫瘍から1~2cmの安全域(サージカルマージン)を確保して切除します。腫瘍の位置や大きさによっては、外陰部の半分を切除する片側外陰切除術が選択されることもあります。
Ⅱ期以降の進行がんに対しては、根治的外陰切除術が標準的な術式です。外陰部全体を広範囲に切除します。さらに、がんの浸潤範囲に応じて、腟の一部、尿道、肛門などの周辺臓器も合併切除することがあります。
リンパ節郭清
リンパ節転移の有無やリスクに応じて、そけいリンパ節郭清が併せて行われます。
ⅠA期の微小浸潤がんでは、リンパ節転移のリスクが極めて低いため、リンパ節郭清は省略されることが一般的です。
ⅠB期以降のがんでは、原則としてそけいリンパ節郭清が必要です。従来は両側のそけいリンパ節を予防的に郭清していましたが、近年ではセンチネルリンパ節生検という方法が導入されています。
センチネルリンパ節生検は、がんから最初にリンパ液が流れ込むリンパ節(見張りリンパ節)を特定して調べる方法です。センチネルリンパ節に転移がなければ、他のリンパ節にも転移がない可能性が高いため、広範なリンパ節郭清を省略できます。これにより、リンパ浮腫などの合併症を減らすことができます。
リンパ節に転移が確認された場合は、深そけいリンパ節や骨盤リンパ節の郭清も考慮されます。
放射線療法
放射線療法は、単独で用いられることもあれば、手術や化学療法と組み合わせて用いられることもあります。
手術前の放射線療法(術前照射)は、腫瘍を縮小させて手術をしやすくする目的で行われます。進行がんで広範な切除が必要な場合、術前照射により切除範囲を縮小できることがあります。
手術後の放射線療法(術後照射)は、手術で取りきれなかった可能性のあるがん細胞を死滅させ、再発を予防する目的で行われます。リンパ節転移が複数個あった場合や、切除断端にがん細胞が近接していた場合などに推奨されます。
手術が困難な患者さんや手術を希望されない患者さんに対しては、根治的放射線療法が選択されることがあります。化学療法と併用することで効果を高めることができます。
放射線療法の副作用としては、照射部位の皮膚炎、外陰部や腟の炎症、排尿時の痛み、下痢などがあります。また、晩期合併症として外陰部や腟の萎縮・狭窄、慢性的な皮膚の変化などが生じることがあります。
化学療法
外陰がんに対する化学療法は、単独で根治を目指すことは困難ですが、放射線療法との併用(化学放射線療法)や、手術前後の補助療法として用いられます。
よく使用される抗がん薬には、シスプラチン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、マイトマイシンCなどがあります。
化学放射線療法は、放射線療法と化学療法を同時に行うことで、相乗効果により治療効果を高める方法です。手術が困難な進行がんや、手術により外陰部の大部分を失うことになる場合に選択されることがあります。
遠隔転移や再発がんに対しては、症状緩和や延命を目的として化学療法が行われることがあります。
化学療法の副作用は使用する薬剤によって異なりますが、吐き気・嘔吐、骨髄抑制(白血球減少、貧血、血小板減少)、脱毛、口内炎、下痢などが一般的です。
緩和的治療
進行がんで根治的治療が困難な場合や、患者さんの希望により積極的治療を行わない場合には、症状を和らげるための緩和的治療が重要になります。
痛みのコントロール、出血の管理、感染の治療、栄養状態の改善などが行われます。緩和ケアチームによる包括的なサポートを受けることも検討されます。
外陰がんの予後と5年生存率
外陰がんの予後は、病期、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、組織型、治療法などによって大きく異なります。
病期別の5年生存率
外陰がんの治療成績は、早期発見・早期治療により良好な予後が期待できます。
| 病期 | 5年生存率 | 治療の特徴 |
|---|---|---|
| 0期(上皮内がん) | ほぼ100% | 局所切除で治癒可能 |
| Ⅰ期 | 約75~85% | 手術により良好な予後 |
| Ⅱ期 | 約50~65% | 手術+放射線療法の併用が多い |
| Ⅲ期 | 約30~45% | リンパ節転移の程度により予後が異なる |
| Ⅳ期 | 約15~25% | 化学放射線療法や緩和治療が中心 |
これらの数値は一般的な統計であり、個々の患者さんの予後は様々な因子によって変わります。
予後に影響する因子
リンパ節転移の有無と個数は、最も重要な予後因子です。リンパ節転移がない場合の5年生存率は約70~80%ですが、転移がある場合は約30~50%に低下します。転移リンパ節の個数が多いほど、予後は不良となります。
腫瘍の大きさも重要です。直径2cm以下の小さながんでは予後良好ですが、5cmを超える大きながんでは予後が悪くなります。
間質浸潤の深さが深いほど、リンパ節転移のリスクが高まり、予後も不良となります。
組織型では、扁平上皮がんに比べて悪性黒色腫(メラノーマ)は予後が悪い傾向があります。
患者さんの年齢や全身状態も予後に影響します。若年者や全身状態が良好な患者さんでは、積極的な治療が可能で予後も比較的良好です。
再発について
外陰がんの再発率は病期によって異なりますが、全体として約20~40%程度とされています。再発の多くは治療後2年以内に起こります。
再発の部位としては、局所再発(治療部位やその周辺)が最も多く、次いでそけいリンパ節、遠隔臓器への転移の順となります。
早期に再発を発見できれば、再手術や放射線療法により治療可能な場合もあります。そのため、治療後の定期的な経過観察が重要です。
治療後の生活と経過観察
経過観察のスケジュール
外陰がんの治療後は、再発の早期発見と合併症の管理のために、定期的な経過観察が必要です。
一般的なスケジュールとしては、治療後1~2年目は3か月ごと、3~5年目は6か月ごと、5年以降は年1回の受診が推奨されます。
経過観察では、問診、視診・触診、必要に応じて画像検査(CT、MRIなど)が行われます。
生活上の注意点
外陰部の清潔を保つことが重要です。刺激の少ない石鹸を使用し、優しく洗浄します。入浴後は十分に乾燥させることが大切です。
締め付けの強い下着や衣服は避け、通気性の良い綿製品を選ぶことが推奨されます。
リンパ節郭清を受けた患者さんでは、リンパ浮腫の予防が重要です。下肢を清潔に保ち、小さな傷でも感染に注意する必要があります。長時間の立位や座位を避け、適度な運動を心がけます。
性生活への影響
外陰切除術を受けた場合、外陰部の形態が変化し、性生活に影響が出ることがあります。パートナーとのコミュニケーションを大切にし、必要に応じて医師や看護師、心理カウンセラーに相談することが推奨されます。
放射線療法を受けた場合、腟の狭窄や乾燥が生じることがあります。腟拡張器の使用や潤滑剤の使用により、症状を改善できる場合があります。
心理的サポート
外陰がんの診断や治療は、身体的な負担だけでなく、精神的にも大きな影響を与えます。不安、抑うつ、自尊心の低下などに悩む患者さんも少なくありません。
医療スタッフ、家族、友人とのコミュニケーションを大切にし、必要に応じて心理カウンセリングやサポートグループの利用も検討してください。

