
胃がん手術の最新動向と治療法の選択
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
胃がんの手術治療は近年、大きな進歩を遂げています。2026年現在、腹腔鏡下手術やロボット支援手術といった低侵襲手術が標準治療として広く普及し、患者さんの体への負担を減らしながら高い治療成績を実現できるようになりました。
2018年4月に胃がんに対するロボット支援手術が保険適用となって以降、全国の主要病院でこの技術を導入する施設が増加しています。
また2023年には、進行胃がんに対する腹腔鏡下手術の有効性と安全性を示す大規模臨床試験の結果が報告され、適応範囲がさらに広がっています。
胃がん手術の専門医とは
胃がんの腹腔鏡下手術やロボット支援手術は高度な技術を要するため、経験豊富な専門医による治療を受けることが重要です。
現在活躍されている代表的な専門医として、以下のような医師がいます。
木下敬弘医師(国立がん研究センター東病院胃外科科長)は、ロボット支援手術のリーディングドクターとして、累計1600件以上の腹腔鏡下手術経験を持ち、8年連続で"The Best Doctors in Japan"に選出されています。日本胃癌学会の理事、教育委員長を務めるなど、この分野を牽引する存在です。
布部創也医師(がん研有明病院胃外科部長)は、腹腔鏡による機能温存手術を専門とし、日本内視鏡外科学会の技術認定医として高度な技術を持っています。
比企直樹医師(北里大学医学部上部消化管外科学主任教授)は、腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)を考案したパイオニアで、日本栄養治療学会の理事長も務めています。
宇山一朗医師(藤田医科大学病院総合消化器外科主任教授)は、腹腔鏡下での胃全摘に世界で初めて成功し、累計1500件以上の実績を持つ世界的な権威です。
これらの医師をはじめ、日本内視鏡外科学会の技術認定医(胃領域)の資格を持つ医師が、全国の主要病院で高度な胃がん手術を提供しています。
胃がん手術の種類と適応範囲
胃がん手術には、大きく分けて内視鏡治療、腹腔鏡下手術、ロボット支援手術、開腹手術があります。
早期胃がんで、がんが粘膜内にとどまっている場合は内視鏡治療が適応となります。がんが粘膜下層まで浸潤しており、リンパ節郭清が必要と判断される早期胃がんに対しては、腹腔鏡下手術が標準治療として確立しています。
現在の胃がん治療ガイドライン(2025年3月改訂第7版)では、ステージIの早期胃がんだけでなく、ステージIIやIIIの進行胃がんに対する腹腔鏡下幽門側胃切除も強く推奨されています。ただし、日本内視鏡外科学会の技術認定取得医が術者として施行する、または技術認定取得医の指導のもとで施行することが望ましいとされています。
腹腔鏡下手術とロボット支援手術の違い
腹腔鏡下手術は、腹部に5から12ミリメートルの小さな傷を5つ程度つけて、細長い手術器械を挿入して行う手術です。現在は4Kハイビジョンの内視鏡(腹腔鏡)を用いて、鮮明な画面を見ながら手術が行えます。
ロボット支援手術は腹腔鏡下手術の進化型で、以下のような利点があります。
まず、細長い手術器械に手首のような関節機能があり、より細かい操作ができます。開腹手術や腹腔鏡手術では届きにくかった部位にも到達し、より精密な切除が可能になります。
次に、人間の手では避けられない手振れが自動的に補正され、正確な操作ができます。特に膵臓周囲のリンパ節郭清において、膵液漏などの合併症を減らせることが報告されています。
国立がん研究センター東病院では、2025年2月時点でロボット支援胃がん手術の症例数が650例を超え、合併症発生割合は約2.0%という良好な成績を残しています。
手術方法の選択基準
手術方法の選択は、がんの進行度、患者さんの年齢や体力、がんの位置などによって決まります。以下の表に、各手術法の特徴をまとめました。
| 手術方法 | 適応 | 傷の大きさ | 入院期間の目安 | 保険適用 |
|---|---|---|---|---|
| 内視鏡治療 | 粘膜内の早期がん(2-3cm以下) | なし | 5-7日程度 | あり |
| 腹腔鏡下手術 | 早期がん~進行がん(ステージI-III) | 5-12mm×5箇所程度 | 10-14日程度 | あり |
| ロボット支援手術 | 早期がん~進行がん | 5-12mm×5箇所程度 | 10-14日程度 | あり(2018年4月~) |
| 開腹手術 | 進行がん、他臓器浸潤 | 約20cm | 14-21日程度 | あり |
ロボット支援手術は2018年4月から保険適用となり、腹腔鏡下手術と同額で受けられます。高額療養費制度を利用すれば、収入に応じて自己負担額は月8万円から25万円程度に抑えられます。
機能温存手術の重要性
胃を切除した後は、食事量の減少、体重減少、ダンピング症候群などの後遺症が生じる可能性があります。特に胃全摘出後は、体重や筋肉が減りやすく、術後の体力回復が十分でないことが多いです。
そのため、近年では「残せる胃は残す」という方針のもと、機能温存手術が積極的に行われています。具体的には以下のような術式があります。
幽門保存胃切除:胃の出口(幽門)を残すことで、食事の胃内での貯留時間を確保し、ダンピング症候群を予防します。
噴門側胃切除:胃の入口側を切除し、出口側を残す術式です。逆流防止機能を保つための工夫が施されます。
胃局所切除:小さな早期がんに対して、胃の一部のみを切除する低侵襲な術式です。
主要病院における胃がん手術の実績と特徴
東京都の主要施設と専門医
がん研有明病院消化器センター胃外科
がん研有明病院消化器センター胃外科では、年間の胃がん手術件数が400件を超え、国内有数の治療実績を誇ります。
胃外科部長の布部創也医師は、腹腔鏡による機能温存手術を専門としており、特に噴門側胃切除の際には逆流防止に配慮した独自の術式を提供しています。日本内視鏡外科学会の技術認定医(胃領域)として、高度な技術を持つ医師です。
副部長の大橋学医師は、中央手術部長も兼任し、鏡視下での機能温存手術から開腹での拡大切除まで、幅広い術式に対応する胃がん手術のエキスパートです。機能温存手術の新しい術式を考案し、国際的に評価されています。
内視鏡治療と腹腔鏡下手術を組み合わせた腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)も積極的に実施しており、2019年からはロボット支援下胃切除術も導入しています。
| 治療法 | 年間実績(参考値) |
|---|---|
| 内視鏡治療 | 400件以上 |
| 胃切除術 | 350件以上 |
| 胃全摘術 | 80-100件 |
国立がん研究センター中央病院胃外科も、国内最高水準の治療実績を持つ施設です。術前化学療法後の拡大手術から、機能温存・低侵襲(腹腔鏡)手術まで、根治性とQOL(生活の質)のバランスを考慮した治療を提供しています。
ステージIに対する胃の機能を温存した腹腔鏡手術から、ステージIVに対する集学的治療、拡大手術まで、あらゆる病期の胃がんに対応しています。
順天堂大学医学部附属順天堂医院消化器・低侵襲外科は、腹腔鏡手術のパイオニア的施設として知られています。腹腔鏡手術の累計実績は2000件以上で、独自に開発した術式で高度進行胃がんや食道胃接合部がんにも取り組んでいます。
関東エリアの主要施設と専門医
国立がん研究センター東病院胃外科(千葉県)
国立がん研究センター東病院胃外科は、ロボット支援手術のリーディング施設です。
胃外科科長の木下敬弘医師は、開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット手術のすべてを手がける胃がん手術のエキスパートです。2014年6月に全国に先駆けてロボット支援胃がん手術を導入し、その豊富な経験と高い技術は国内外から高い評価を受けています。
日本胃癌学会の理事、教育委員長などの要職を務めるほか、日本内視鏡外科学会の内視鏡外科技術認定医、日本ロボット外科学会の専門医(国際A)の資格を持ち、アメリカ外科学会の正会員(FACS)でもあります。腹腔鏡下手術の累計実績は1600件以上で、8年連続で"The Best Doctors in Japan"に選出されています。
2025年2月には、ロボット支援胃がん手術の症例数が650例を超え、幽門側胃切除から難易度の高い噴門側胃切除、胃全摘、食道胃接合部がんに対する手術まで、多岐にわたる術式の経験があります。合併症発生割合は約2.0%という良好な成績を残しています。
最新式手術用ロボット(DaVinci Xiシステム)が3台導入されており、胃がん手術の約70%をロボット支援手術で実施しています。
北里大学病院上部消化管外科(神奈川県)
北里大学病院上部消化管外科では、進行胃がんへの開腹手術および腹腔鏡下手術を専門としています。
上部消化管外科学主任教授の比企直樹医師は、腹腔鏡下手術と内視鏡治療を組み合わせた腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)を考案・導入したパイオニアです。低侵襲化と機能温存を追求し、胃を残したうえで根治性を高めることにこだわった治療を提供しています。
がん研究会有明病院で14年間、胃外科部長として日本トップクラスの手術症例数を執刀した経験を持ち、2019年に北里大学医学部上部消化管外科学主任教授に就任しました。一般社団法人日本栄養治療学会の理事長や日本消化器外科学会の理事なども務めています。
ロボット手術にも力を入れており、より精密で安全な手術を実現しています。
埼玉医科大学国際医療センター上部消化管外科では、腹腔鏡下手術1500件以上、開腹手術1400件以上の実績を持つ医師が在籍しています。早期がんでは機能温存手術を、進行がんでは術前抗がん剤治療を実施し、安全で確実な手術を追求しています。
中部・関西エリアの主要施設
静岡県立静岡がんセンター胃外科は、開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット手術のすべてに対応する総合的な治療施設です。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)胃がんグループの中心的役割を担っており、年間の内視鏡治療が450件以上、胃切除術が180件以上という高い実績を誇ります。
藤田医科大学病院総合消化器外科(愛知県)
藤田医科大学病院総合消化器外科は、胃がんの腹腔鏡下手術のパイオニアとして知られています。
主任教授の宇山一朗医師は、腹腔鏡下での胃全摘に世界で初めて成功し、累計症例数は1500件以上という実績を持ちます。身体的な負担の少ない低侵襲手術を追求し、胃がんに対する腹腔鏡下手術において世界的に名を馳せています。
近年はロボット支援手術にも力を入れ、国内トップレベルの治療実績を積み重ねています。「なせば成る」の信念のもと、現在も上部消化管の内視鏡手術領域を牽引し続けています。
大阪国際がんセンター外科(消化器外科)では、ロボット手術、腹腔鏡下手術を年間200件以上実施しています。2009年には世界初の単孔式胃がん手術(2~3cmの傷1つ)を施行するなど、先進的な取り組みを続けています。
蛍光腹腔鏡を用いたリンパ流確認下での胃温存手術、合併症ゼロを目指した精密な手術を追求しています。
| 施設名 | 所在地 | 特徴 |
|---|---|---|
| 静岡県立静岡がんセンター | 静岡県 | JCOG胃がんグループ代表、全術式対応 |
| 藤田医科大学病院 | 愛知県 | 腹腔鏡下手術パイオニア、累計1500件以上 |
| 大阪国際がんセンター | 大阪府 | 世界初の単孔式手術、年間200件以上 |
その他の地域の主要施設
広島記念病院消化器センター(広島県)は、早期胃がんに対する機能温存手術の先駆け的存在です。外科手術の実績は1600件以上で、胃がん治療の専門家の間で高い評価を得ています。
福岡赤十字病院外科(福岡県)では、胃がん、食道がんにおける内視鏡手術のエキスパートが在籍し、累計1,000件以上の手術実績があります。高度進行がんには、手術と薬物治療を組み合わせた低侵襲の治療を提供しています。
京都大学医学部附属病院消化管外科は、2005年より日本全国に先駆けて腹腔鏡下胃切除術を導入し、2011年よりロボット支援下胃切除術を開始しました。これまでに1000例を超える腹腔鏡胃切除術、120例を超えるロボット支援下胃切除術を実施しています。
「自分の判断は正しいのか?」と不安な方へ
がん治療。
何を信じれば?
不安と恐怖で苦しい。
がん治療を左右するのは
治療法より“たった1つの条件”です。
まず、それを知ってください。
がん専門アドバイザー 本村ユウジ
施設選択における重要なポイント
技術認定医の在籍状況
胃がんの腹腔鏡下手術やロボット支援手術は高度な技術を要します。日本内視鏡外科学会が認定する技術認定医(胃領域)の資格を持つ医師が在籍している施設を選ぶことが重要です。
技術認定医は、一定以上の手術経験と技術水準を満たした医師にのみ与えられる資格で、安全で質の高い手術を受けるための目安となります。
年間症例数
年間の手術症例数が多い施設ほど、経験豊富な医療チームが整っている傾向があります。目安として、年間50例以上の胃がん手術を実施している施設が望ましいとされています。
特にロボット支援手術については、導入後の症例数が100例以上ある施設であれば、十分な経験が蓄積されていると考えられます。
多職種連携体制
胃がん治療では、外科医だけでなく、腫瘍内科医、消化器内科医、放射線治療医、栄養士、リハビリテーションスタッフなどとの連携が重要です。
術前の栄養管理、術後のリハビリテーション、退院後のフォローアップまで、包括的なサポート体制が整っている施設を選ぶことで、より良い治療成績と生活の質の維持が期待できます。
術式の選択肢の豊富さ
開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援手術のすべてに対応できる施設であれば、患者さんの状態に応じて最適な術式を選択できます。
また、機能温存手術の経験が豊富な施設では、胃の切除範囲を最小限にとどめる工夫が期待できます。
胃がん手術の治療成績
ステージ別の5年生存率
胃がんの治療成績は、診断時のステージによって大きく異なります。主要病院における病期別の5年生存率は以下のとおりです。
| ステージ | 5年生存率の目安 |
|---|---|
| ステージI | 90-95%以上 |
| ステージII | 70-80% |
| ステージIII | 40-60% |
| ステージIV | 10-20% |
早期発見・早期治療が生存率向上の鍵となります。特にステージIの早期がんであれば、90%以上の患者さんが治癒を期待できます。
術式別の合併症発生率
腹腔鏡下手術やロボット支援手術は、開腹手術と比較して合併症の発生率が低い傾向があります。
主な合併症としては、縫合不全(2-5%)、膵液漏(3-5%)、腹腔内膿瘍(1-3%)などがあります。経験豊富な施設では、これらの合併症発生率をさらに低く抑えることが可能です。
ロボット支援手術では、精密な操作により膵液漏などの合併症リスクが低減されることが報告されています。国立がん研究センター東病院の報告では、合併症発生割合が約2.0%と良好な成績が示されています。
手術後の生活と経過観察
術後の食事管理
胃切除後は、一度に食べられる量が減少するため、少量ずつ回数を増やして食事を摂る必要があります。手術翌日から飲水を開始し、術後3日目頃からおもゆ、3分粥、5分粥、7分粥、全粥と段階的に食事を進めていきます。
退院後も、1回の食事量を控えめにし、1日5-6回に分けて食事を摂ることが推奨されます。栄養士による栄養指導を受け、適切な栄養管理を行うことで、体重減少を最小限に抑えることができます。
術後補助化学療法
手術後の病理検査でステージIIまたはIIIと診断された場合、再発予防のための術後補助化学療法が推奨されます。
現在、S-1(ティーエスワン)やカペシタビン+オキサリプラチン(CapeOX療法)などの治療法が標準的に用いられています。術後補助化学療法により、再発リスクを約30-40%低減できることが示されています。
定期的な経過観察
手術後は定期的な経過観察が重要です。一般的には、術後5年間は以下のような検査を実施します。
術後1-2年目:3-4か月ごとの外来受診、血液検査、CT検査(6か月ごと)、内視鏡検査(1年ごと)
術後3-5年目:6か月ごとの外来受診、血液検査、CT検査(1年ごと)、内視鏡検査(1年ごと)
再発の早期発見により、適切な治療を早期に開始することが可能になります。
最新の治療開発と今後の展望
進行がんに対する腹腔鏡下手術の拡大
2023年に報告された多施設共同前向き試験(JLSSG0901試験)により、StageII/IIIの切除可能な進行胃がんに対する幽門側胃切除において、腹腔鏡下手術が開腹手術に対し、有効性と安全性が劣らないことが証明されました。
今後、日本内視鏡外科学会の技術認定取得医が行う腹腔鏡下手術においては、進行がんにおいても標準治療となる可能性が期待されています。
新しい手術支援技術
蛍光腹腔鏡を用いたリンパ流のリアルタイム可視化技術により、より正確なリンパ節郭清が可能になっています。インドシアニングリーン(ICG)を静脈内投与し、特殊な光で照らすことで、リンパ流を可視化できます。
また、術中ナビゲーションシステムの開発も進んでおり、3次元画像を用いた手術支援により、より安全で精密な手術が実現しつつあります。
術前診断技術の進歩
審査腹腔鏡は、各種画像検査で転移なしとされた進行胃がん患者さんのうち、約40%で腹膜転移を発見できる有用な検査です。小さな傷からカメラを挿入し、直接腹腔内を観察することで、より正確な病期診断が可能になります。
また、PET-CTやMRIなどの画像診断技術の向上により、術前の病期診断精度が向上しています。
出典情報
本記事は以下の信頼できる医療機関および学会の情報を参考に作成しています。