
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
ナスは日本の食卓に古くから親しまれている夏野菜です。一見すると栄養が少ないように思われがちですが、実はがん予防に役立つ可能性のある成分を含んでいます。
この記事では、ナスに含まれる成分とがんとの関係について、最新の研究成果を交えながら詳しく解説します。
ナスの特徴と歴史
ナスはインド原産のナス科ナス属の植物で、日本へは中国を経由して伝わりました。奈良時代にはすでに栽培が行われていたとされ、1200年以上の歴史を持つ野菜です。
日本では地域ごとに特徴的な品種が栽培されており、京都の「賀茂なす」、山形の「出羽小なす」、大阪の「水なす」など、全国で170種類以上の品種があるといわれています。現在、市場で多く流通しているのは「中長ナス」や「千両ナス」と呼ばれる長卵形の品種です。
ナスの旬は6月から9月頃で、特に7月から9月の夏場に最もおいしくなります。成分の約90%以上が水分でできているため、「ナスには栄養がない」と思われがちですが、実際には健康や美容に効果的な成分が含まれています。
ナスに含まれる抗がん成分
ナスニン(アントシアニン系色素)
ナスの鮮やかな紫紺色は、ポリフェノールの一種であるアントシアニン系色素「ナスニン」によるものです。ナスニンは主にナスの皮の部分に含まれています。
ナスニンには強力な抗酸化作用があり、がん予防や抑制効果が期待されています。抗酸化作用とは、細胞の老化や遺伝子の損傷を引き起こす活性酸素を除去する働きのことです。活性酸素はがんの発生や進行に関わるとされており、ナスニンの抗酸化作用はこうした活性酸素の働きを抑制します。
高知県工業技術センターの研究によれば、アントシアニン系ポリフェノールの中でも、ナスニンの抗酸化力が最も強かったと報告されています。また、中部大学の研究では、アントシアニンには糖や脂質の利用を促進する酵素「AMPキナーゼ」を活性化する作用があることが明らかになっています。
ナスニンには以下のような健康効果が期待されています:
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| 抗酸化作用 | 活性酸素を除去し、細胞の酸化を防ぐ |
| がん予防効果 | 発がん物質の働きを抑制する |
| コレステロール低下 | LDL(悪玉)コレステロールを減らす |
| 生活習慣病予防 | 動脈硬化や高血圧の予防に役立つ |
| 視力保護 | 眼精疲労の改善や視力維持 |
| 老化防止 | 細胞の老化を遅らせる |
クロロゲン酸
ナスの果肉部分に含まれるもう一つの重要なポリフェノールがクロロゲン酸です。クロロゲン酸はナスのアク(渋味)の主成分でもあります。
研究によれば、ナスに含まれるポリフェノール成分のうち、クロロゲン酸が75%以上を占めることがわかっています。クロロゲン酸には強い抗酸化作用があり、がんの予防や抑制効果が期待されています。
東京薬科大学の研究では、クロロゲン酸には以下のような作用があることが報告されています:
・脂質分解を促進する作用
・血液をサラサラにする作用
・副交感神経を刺激して気分を落ち着かせる作用
・血圧を下げる効果
・血糖値の上昇を抑える効果
クロロゲン酸が分解されてできるカフェ酸には、肝臓がんや肝硬変の予防効果があることも研究で示されています。また、腹部脂肪量の減少効果も報告されており、メタボリック症候群の予防にも役立つ可能性があります。
その他のがん予防に役立つ成分
| 成分名 | 主な作用 |
|---|---|
| コリンエステル | 神経系の働きを調節し、血圧改善効果がある。高知県産の「高知なす」には特に多く含まれ、2021年に機能性表示食品として認められた |
| プロテアーゼインヒビター | 炎症や痛みを抑制する作用があり、粘膜の炎症を治す働きがある |
| 食物繊維 | 腸内環境を整え、有害物質を排出する。ナスの食物繊維はスポンジ状の構造をしており、通常の食物繊維より高い毒素排出力がある |
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
ナスの抗がん作用に関する研究
京都府立医科大学の研究
京都府立医科大学におけるナスの抗酸化作用の研究では、マウスを使った実験により、ナスに発がん促進物質を抑制する作用があることが報告されています。
様々な野菜の抽出物で発がん物質の抑制効果を調べた研究では、ナスの抑制効果がトップクラスであったとの報告があります。これは、ナスニンとクロロゲン酸という2つのポリフェノールの相乗効果によるものと考えられています。
名古屋大学の最新研究(2023年)
名古屋大学大学院の研究チームによる2023年の研究では、ナスのヘタに含まれる天然化合物「9-oxo-ODAs(ナイン オキソ オーディーエース)」が、子宮頸がん細胞に対して抗腫瘍効果を発揮することが実証されました。
この研究は、英科学誌「サイエンティフィックリポーツ」2023年11月6日付け電子版に掲載され、大きな注目を集めました。
研究では、マウス体内や摘出したヒトの子宮頸がん細胞に9-oxo-ODAsを作用させたところ、細胞死(アポトーシス)が認められました。さらに、9-oxo-ODAsの濃度を上げるほど細胞死が進むことも確認され、明確な抗腫瘍効果が認められました。
名古屋大学の研究チームは「作用が強すぎない抗がん剤などの創薬が期待できる」としており、今後、産学連携などで治療薬に結びつけられるよう研究を続けるとしています。
ナスの栄養成分
日本食品標準成分表2020年版(八訂)増補2023年に基づく、ナス100gあたりの主な栄養成分は以下の通りです:
| 栄養成分 | 含有量(100gあたり) |
|---|---|
| エネルギー | 18 kcal |
| 水分 | 93.2 g |
| たんぱく質 | 1.1 g |
| 炭水化物 | 5.1 g |
| 食物繊維総量 | 2.2 g |
| カリウム | 220 mg |
| カルシウム | 18 mg |
| マグネシウム | 17 mg |
| リン | 30 mg |
| 鉄 | 0.3 mg |
| β-カロテン | 100 μg |
| ビタミンE | 0.3 mg |
| ビタミンK | 10 μg |
| ビタミンB1 | 0.05 mg |
| ビタミンB2 | 0.05 mg |
| ナイアシン | 0.5 mg |
| ビタミンB6 | 0.05 mg |
| 葉酸 | 32 μg |
| ビタミンC | 4 mg |
ナスは低カロリーで、ビタミンやミネラルを少量ずつバランスよく含んでいます。特にカリウムの含有量が比較的多く、むくみの解消や高血圧予防に役立ちます。
食物繊維の特徴
ナスに含まれる食物繊維は量としては2.2g程度と野菜の中では一般的ですが、その構造に特徴があります。ナスの食物繊維はスポンジ状の形状をしており、腸内で不要なものを吸収する力が強いのです。
このため、通常の食物繊維のみの効果を上回る毒素排出力があり、快便による毒出し効果が抗がん作用につながると考えられています。便秘の予防や改善はもちろん、血糖値の上昇を緩やかにしたり、血中コレステロール値を低下させたりする働きもあります。
がん予防のためのナスの食べ方
皮ごと食べることが重要
ナスニンは皮の部分に集中して含まれているため、がん予防効果を期待するなら、皮ごと食べることが大切です。皮を剥いてしまうと、せっかくのナスニンが失われてしまいます。
皮が硬くて食べづらいと感じる場合は、以下の工夫をすると良いでしょう:
・皮に切り込みを入れる
・ところどころ皮を剥く程度にとどめる
・加熱調理して柔らかくする
アク抜きは最小限に
ナスを切って空気に触れると、クロロゲン酸が酸化して褐変(茶色く変色)します。そのため、変色防止やアク抜きのために水にさらすことがありますが、栄養面から考えると、この処理には注意が必要です。
ナスニンもクロロゲン酸も水溶性のポリフェノールです。長時間水にさらすと、これらの有効成分が水に溶け出してしまいます。
| 調理方法 | アク抜きの必要性 |
|---|---|
| 炒めもの・揚げもの | 不要。油がコーティングして栄養を逃さない |
| 煮物 | 最小限に(5~10分程度) |
| 浅漬け | エグミが気になる場合のみ短時間 |
特に油を使った調理では、アク抜きは必要ありません。切ったらすぐに調理することで、栄養の流出を防ぎ、酸化による変色も抑えることができます。
油との組み合わせが効果的
ナスは油との相性が良く、油を吸収しやすい性質があります。この特性を活かして、ビタミンEを豊富に含む植物油(オリーブオイルなど)と組み合わせると、抗酸化作用がさらに高まります。
ビタミンEは脂溶性のビタミンで、ビタミンAやβカロテンの酸化を防ぎ、細胞膜を健全に保つ働きがあります。ナスニンやクロロゲン酸の抗酸化作用と相まって、がん予防効果が期待できます。
油を吸収しやすいことでカロリーが気になる場合は、以下の方法で吸油を抑えられます:
・カットしたナスに塩をふってしばらく置き、水分を拭き取ってから調理する
・あらかじめ電子レンジで加熱してから炒める
・グリルで焼いてから調理する
おすすめの調理法
| 調理法 | 特徴 |
|---|---|
| 焼きナス | 皮ごと焼くことでナスニンを無駄なく摂取できる |
| 天ぷら・素揚げ | 油でコーティングされ、栄養が逃げにくい |
| 麻婆ナス | 油で炒めることで有効成分を保持 |
| ぬか漬け | ぬかのビタミンB群やβ-カロテンをナスが吸収し、栄養価がアップする |
| 煮浸し | 煮汁ごと食べれば、溶け出した成分も摂取できる |
ナスの選び方と保存法
新鮮なナスの見分け方
新鮮で栄養価の高いナスを選ぶポイント:
・ヘタの切り口がみずみずしい
・皮に張りとツヤがある
・ガクにあるトゲが鋭く、触ると痛いくらいのもの
・大きさのわりに重いもの(中身が充実している)
・皮の色が濃く均一なもの
・シワや変色がないもの
ヘタが黒く、筋がはっきりしているものは新鮮です。水分が多い野菜なので、ハリがあり、実がふっくらと弾力のあるものが良品です。
保存方法
ナスは低温に弱い野菜です。適切に保存することで、栄養価を保ちながら長持ちさせることができます。
| 保存方法 | 期間 | ポイント |
|---|---|---|
| 常温保存 | 2~3日 | 10℃前後の涼しい場所。直射日光を避ける |
| 冷蔵保存 | 1週間程度 | ラップで包み、さらに新聞紙で包んで野菜室へ。冷やしすぎると果肉も皮も固くなり風味が落ちる |
| 冷凍保存 | 約1ヶ月 | カットして使いやすい大きさにし、冷凍用保存袋へ。解凍せずそのまま調理する |
基本は冷暗所での保存が最適です。冷蔵庫に入れる場合は、ポリ袋に入れたあと新聞紙で包むと、乾燥を防ぎ品質を保てます。
ナスとがん予防の考え方
ナスに含まれるナスニンやクロロゲン酸などのポリフェノールには、抗酸化作用や抗がん作用が確認されています。特に、名古屋大学の最新研究では、ナスのヘタに含まれる成分が子宮頸がん細胞に対して抗腫瘍効果を示すことが実証されました。
ただし、ナスを食べればがんが予防できる、あるいは治療できるというわけではありません。がん予防は、バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、節酒など、総合的な生活習慣の改善が基本です。
ナスは、そうした健康的な食生活の一部として、他の野菜や果物と組み合わせて摂取することで、がん予防に役立つ可能性があります。特に、ナスは淡色野菜に分類されるため、ニンジンやカボチャといった緑黄色野菜とバランスよく組み合わせることが大切です。
日々の食事にナスを取り入れ、皮ごと食べることで、ナスニンやクロロゲン酸などの有効成分を効率よく摂取できます。油を使った調理法や、ぬか漬けなどの伝統的な保存食としての活用も工夫といえるでしょう。
参考文献・出典
名古屋大学プレスリリース「ナスから発見された天然化合物が子宮頸癌細胞への抗腫瘍効果を発揮することを実証」- サイエンスポータル
おすすめは皮ごと! ポリフェノール豊富なナスの健康効果は? | 日経Gooday
ナス果菜の栽培品種・部位別のアントシアニン量,クロロゲン酸量およびラジカル消去活性 - J-STAGE
ナスの加熱による抗酸化能およびクロロゲン酸の変動 - 農研機構
四季の野菜の健康と栄養 ~生活習慣病予防が期待できるなす - 独立行政法人農畜産業振興機構