
ニラとがんの関係について
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
がん予防や健康維持のために日々の食事に気を配っている方は多いでしょう。特に緑黄色野菜として知られるニラは、その独特の香りと栄養価の高さから注目されています。
ニラは東アジア原産の野菜で、日本では古くから食用とされてきました。春先から初夏にかけてが本来の旬ですが、品種改良により現在では一年を通して入手できる野菜となっています。冬から春にかけて収穫されるニラは葉が薄くて柔らかく、夏場のものは葉が厚くしっかりとした食感が特徴です。
この記事では、ニラに含まれる栄養成分とがん予防との関係について、2026年時点での最新情報を踏まえて解説します。
ニラの基本的な特徴と栄養価
ニラはネギ科の多年草で、ビタミンA、B群、E、K、葉酸などのビタミン類を豊富に含んでいます。加えて、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、セレンといったミネラル類もバランスよく含まれており、「マルチビタミン野菜」とも呼ばれています。
ニラの最大の特徴は、その独特の香りにあります。この香りの主成分は「アリシン」という硫化アリルの一種で、ニンニクや玉ネギにも含まれる成分です。ニラに含まれる無臭のアミノ酸「アリイン」が、細胞が切られたり潰されたりすることでアリナーゼという酵素と反応し、アリシンに変化します。
ニラの栄養成分一覧
ニラ100gあたりの主な栄養成分は以下の通りです。
| 栄養成分 | 含有量(100gあたり) |
|---|---|
| エネルギー | 21kcal |
| たんぱく質 | 1.7g |
| 脂質 | 0.3g |
| 炭水化物 | 4.0g |
| 食物繊維 | 2.7g(水溶性0.5g、不溶性2.2g) |
| カリウム | 510mg |
| カルシウム | 48mg |
| マグネシウム | 18mg |
| 鉄 | 0.7mg |
| β-カロテン | 3500μg |
| ビタミンE | 2.5~3.0mg |
| ビタミンK | 180μg |
| ビタミンB1 | 0.06mg |
| ビタミンB2 | 0.13mg |
| 葉酸 | 100μg |
| ビタミンC | 19mg |
| セレン | 1μg |
特筆すべきは、ニラのβ-カロテン含有量が100gあたり3500μgと、緑黄色野菜の中でもトップクラスである点です。この量は、にんじんやほうれん草と同等かそれ以上の水準です。
がん予防に関連する主要成分とそのメカニズム
アリシンの抗がん作用
ニラの香り成分であるアリシンは、がん予防に関連する複数の作用を持つことが研究で示されています。
アリシンは、アメリカ国立がん研究所が1990年に発表した「デザイナーフーズ・プログラム」において、がん予防効果が期待される食品群のピラミッドの頂点にニンニクが位置づけられたことに関連する重要成分です。ニラにも同様にアリシンが含まれており、その作用が注目されています。
アリシンの主な作用機序としては、以下のようなものがあります。まず、強い抗酸化作用により、細胞を傷つける活性酸素を除去します。活性酸素はDNAを損傷し、正常な細胞をがん化させる要因の一つとされています。また、アリシンは免疫細胞の一種であるナチュラルキラー細胞の働きを高めることで、体内でがん化した細胞を排除する免疫機能を強化する可能性が示唆されています。
さらに、アリシンには強い抗菌作用があります。胃がんの原因となるヘリコバクター・ピロリ菌に対しても効果を示すことが研究で報告されており、抗生物質耐性株に対しても除菌効果が期待されています。
ただし、アリシンは熱に弱く揮発性があるため、加熱調理によって別の成分に変化します。また水溶性で水にも流れやすい性質があるため、調理方法には注意が必要です。
ビタミンEの抗酸化機能
ニラには脂溶性ビタミンであるビタミンEが豊富に含まれています。100gあたり2.5~3.0mgという含有量は、1日の必要量(成人男性6.5~7.0mg、女性5.0~6.0mg)の約40~50%に相当します。
ビタミンEは強力な抗酸化作用を持ち、細胞膜の脂質が酸化されるのを防ぎます。脂質が酸化すると「過酸化脂質」という物質が生成され、これががんや動脈硬化などの生活習慣病の原因となります。ビタミンEは過酸化脂質の生成を抑えることで、がん予防に寄与すると考えられています。
また、ビタミンEは活性酸素の働きを抑制し、細胞の酸化的損傷を防ぎます。この作用により、DNAの変異やがん細胞の発生リスクを低減する効果が期待されています。
β-カロテンの役割
ニラに豊富に含まれるβ-カロテンは、体内でビタミンAに変換されるとともに、そのまま脂肪組織に蓄えられて抗酸化作用を発揮します。
β-カロテンは活性酸素の働きを抑制する作用があり、これにより細胞ががん化するリスクを低減すると考えられています。また、ビタミンAとして変換された後は、免疫機能を正常に保つ働きがあり、体内のがん細胞を排除する免疫システムの維持に貢献します。
セレンの抗酸化酵素への関与
ニラには微量ですがセレンというミネラルが含まれています。セレンは体内で「グルタチオンペルオキシダーゼ」という抗酸化酵素の構成成分として機能します。
この酵素は、体内の過酸化脂質を分解し、活性酸素の発生を抑制する働きがあります。過酸化脂質の生成抑制には、セレンを含むグルタチオンペルオキシダーゼが必要不可欠です。
疫学研究では、体内のセレン濃度が高い人ほど、大腸がん、前立腺がん、肺がん、膀胱がんなどの発症リスクが低い傾向が報告されています。ただし、セレンのサプリメント摂取による直接的ながん予防効果については、臨床試験で明確な結果が得られていないのが現状です。
セレンとビタミンEを一緒に摂取することで、抗酸化力が相乗的に高まることも知られています。ニラにはこの両方が含まれているため、効率的な抗酸化効果が期待できる食材といえます。
ビタミンCとの相乗効果
ニラに含まれるビタミンCは、それ自体が強い抗酸化作用を持つだけでなく、他の抗酸化物質と協力して働きます。ビタミンCは水溶性の抗酸化物質として細胞内外で活性酸素を除去し、DNA損傷を防ぎます。
また、ビタミンCはコラーゲンの生成に必要な栄養素であり、細胞と細胞をつなぐ組織を健康に保つことで、がん細胞の浸潤や転移を抑制する可能性も考えられています。
研究で示されているがん予防効果
ニラやその近縁種であるニンニクに関する研究では、消化器系のがん、特に胃がんや大腸がんに対する予防効果が示唆されています。
米国国立がん研究所は、ニンニクを抗がん特性を持つ可能性のある野菜の一つとして認めています。ニンニクと同じネギ科に属するニラにも、同様の成分が含まれているため、類似の効果が期待されます。
研究では、ネギ科植物に含まれる香り成分が、発がん抑制、抗酸化作用、抗血栓作用などの複数の健康効果を持つことが報告されています。これらの効果は、細胞が切られたり潰されたりして酵素と反応することで生成される硫黄化合物によるものです。
ただし、ランダム化比較試験などのより質の高い研究では、ニンニクの摂取とがんリスク低減との間に明確な関連性が認められなかったという報告もあります。2016年のメタアナリシスでは、ニンニク摂取と大腸がん発生率との間に予防的効果は見出されませんでした。
このように、研究結果には一貫性がなく、ニラやニンニクを食べればがんを予防できると断言することはできません。しかし、バランスの取れた食事の一部として取り入れることで、健康維持に役立つ可能性があるという理解が適切です。
効果的なニラの調理方法
ニラに含まれる栄養成分を効率よく摂取するためには、調理方法に工夫が必要です。
アリシンを活かす方法
アリシンは、ニラを切ったり潰したりすることで生成されます。細かく刻むほど酵素反応が進み、アリシンが多く生成されます。ただし、アリシンは揮発性で熱に弱いため、生で食べるか、加熱する場合は短時間で仕上げることが重要です。
また、アリシンは水溶性であるため、茹でる調理では水に溶け出してしまいます。スープや味噌汁にする場合は、汁ごと摂取することで栄養を逃さず摂取できます。
β-カロテンの吸収を高める調理法
β-カロテンは脂溶性のため、油と一緒に調理することで吸収率が向上します。炒め物や揚げ物、油を使ったドレッシングをかけたサラダなどが効果的です。
ニラレバ炒めやニラ玉など、油を使った中華料理はβ-カロテンの吸収という観点からも理にかなった調理法といえます。
ビタミンCを保つ工夫
ビタミンCは熱に弱く、加熱調理で損失しやすい栄養素です。ニラのビタミンCを効率よく摂取したい場合は、生で食べるか、加熱時間を短くすることが大切です。
炒め物の場合は強火で短時間、サッと火を通す程度にとどめましょう。茹でる場合も、さっと湯通しする程度にすることで、ビタミンCの損失を最小限に抑えられます。
バランスを考えた調理
理想的には、様々な調理法を組み合わせることです。たとえば、生のニラをナムルにしてアリシンとビタミンCを摂取し、別の機会には油で炒めてβ-カロテンを効率よく摂取する、といった工夫が有効です。
ニラを使った料理では、ビタミンB1を豊富に含む豚肉やレバーと組み合わせることで、アリシンがビタミンB1の吸収を高め、疲労回復効果が期待できます。
ニラの選び方と保存方法
新鮮なニラを選ぶポイント
良質なニラを選ぶには、以下の点に注目しましょう。
葉にツヤとハリがあり、緑色が濃いものを選びます。葉先までピンと張っていて、しおれていないものが新鮮です。根元の切り口がみずみずしく、変色していないものを選びましょう。切り口が乾燥していたり茶色く変色していたりするものは、時間が経過しています。
葉の幅が広く、肉厚なものほど栄養価が高い傾向があります。独特の香りがしっかりしているものを選びましょう。香りが弱いものは鮮度が落ちている可能性があります。
保存方法
ニラは傷みやすい野菜なので、購入後はできるだけ早く食べることが基本です。すぐに使わない場合は、以下の方法で保存します。
湿らせた新聞紙やキッチンペーパーで包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存します。立てて保存すると長持ちします。この方法で2~3日程度保存可能です。
より長期保存したい場合は、3~4cm程度に切って冷凍保存することもできます。使用する際は凍ったまま調理に使えるため便利です。ただし、冷凍すると食感が変わるため、炒め物やスープなど加熱調理に適しています。
ニラを食べる際の注意点
適量を守る
ニラは健康に良い野菜ですが、食べ過ぎには注意が必要です。アリシンは刺激が強い成分であるため、過剰摂取すると胃腸の調子を崩す可能性があります。
また、ニラに含まれる不溶性食物繊維は、摂りすぎると便秘を悪化させることがあります。
1日の目安量は1束(約100g)程度です。この量で、1日に必要な緑黄色野菜の摂取量の約8割を満たすことができます。
他の食品とのバランス
ニラだけを大量に食べるのではなく、様々な野菜や食材をバランスよく摂取することが重要です。特定の食品に偏らず、多様な食品を組み合わせることが、がん予防や健康維持には最も効果的です。
薬との相互作用
ニラやニンニクなどのネギ科植物に含まれる成分は、一部の医薬品と相互作用を起こす可能性があります。特に抗凝固薬(ワーファリンなど)を服用している方は、主治医に相談することをお勧めします。
がん予防における食事の位置づけ
ニラをはじめとする野菜類は、がん予防において重要な役割を果たす可能性があります。しかし、特定の食品だけでがんを予防できるわけではありません。
がん予防のためには、以下のような総合的なアプローチが必要です。
多様な野菜や果物を毎日摂取することです。厚生労働省は、生活習慣病予防のために1日350g以上の野菜(うち緑黄色野菜120g以上)を食べることを推奨しています。
塩分を控えめにすることも重要です。塩分の過剰摂取は胃がんのリスクを高めることが知られています。
加工肉の摂取を控え、魚や大豆製品などからたんぱく質を摂取することが推奨されています。
禁煙と節酒を心がけましょう。喫煙と過度の飲酒は、がんの主要なリスク因子です。
適度な運動を習慣化し、適正体重を維持することも、がん予防には欠かせません。
ニラは、このような総合的な健康的生活習慣の一部として取り入れることで、その効果が最大限に発揮されると考えられます。
まとめ
ニラは、アリシン、ビタミンE、β-カロテン、セレンなど、がん予防に関連する複数の栄養成分を含む緑黄色野菜です。これらの成分は、抗酸化作用や免疫機能の強化を通じて、がん予防に寄与する可能性があります。
ただし、ニラを食べればがんを予防できるという単純な関係ではありません。バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、節酒など、総合的な健康的生活習慣の一部として、ニラを含む多様な野菜を日々の食事に取り入れることが重要です。
調理方法を工夫することで、ニラの栄養成分を効率よく摂取することができます。生食、炒め物、スープなど、様々な料理に活用して、健康的な食生活を楽しみましょう。

