
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
子宮頸がんの治療において、放射線治療は手術と並ぶ重要な選択肢の一つです。早期のがん(I期~II期)では手術と同等の治療成績が報告されており、進行したがん(III期~IVA期)では放射線治療が中心的な治療となります。
放射線治療は高い治療効果が期待できる一方で、治療中や治療後にさまざまな副作用が現れることがあります。
この記事では、子宮頸がんの放射線治療で起こりうる副作用や後遺症について、最新の医療情報とともに詳しく解説します。
放射線治療の仕組みと特徴
放射線治療は、X線やガンマ線といった高エネルギーの放射線をがん細胞に照射する治療法です。放射線は細胞のDNAを破壊する作用があり、これによってがん細胞を死滅させます。
正常な細胞も放射線によるダメージを受けますが、がん細胞は正常な細胞と比べて放射線の影響を受けやすい性質があります。また、正常な細胞は時間とともに回復する能力を持っています。
このため、適切な量の放射線を複数回に分けて照射することで、正常な組織へのダメージを最小限に抑えながら、がん細胞を効果的に攻撃することができます。
子宮頸がんの放射線治療の方法
子宮頸がんの放射線治療には、体の外から照射する「外部照射」と、膣を通して子宮頸部に直接照射する「腔内照射」があり、多くの場合この2つの方法を組み合わせて行います。
外部照射
外部照射は、体の外から骨盤全体に放射線を照射する方法です。治療前にCT画像を撮影し、専用のコンピューターで照射範囲や線量を慎重に決定します。骨盤内のリンパ節も含めて広い範囲に照射を行い、正常な細胞への影響をできるだけ抑えるよう配慮されます。
通常、平日に1日1回照射を行い、週末は休むというペースで25~30回程度実施します。1回の治療時間は10~20分程度で、実際に放射線が照射される時間は数分間です。照射中に痛みや熱さを感じることはありません。
腔内照射(小線源治療)
腔内照射は、膣から子宮内に小さな器具(アプリケーター)を挿入し、がん病巣に直接放射線を照射する方法です。週1回程度のペースで、合計3~5回行います。
アプリケーターの挿入時に違和感や痛みを感じることがありますが、必要に応じて鎮痛剤が使用されます。照射そのものに痛みはありません。照射時間は10~20分程度ですが、準備を含めると1~1.5時間ほどかかります。
最新の高精度放射線治療
近年では、治療効果を高めながら副作用を軽減するため、より精密な照射技術が導入されています。
強度変調放射線治療(IMRT)は、がん組織に高い線量を集中させながら、周囲の正常組織への線量を低く抑えることができる技術です。特に術後の放射線治療では、腸管などへの影響を減らす効果が期待されています。
また、画像誘導小線源治療(IGBT)は、アプリケーターを挿入した状態でCTやMRIを撮影し、その画像をもとに治療計画を立てる方法です。腫瘍と周囲の正常臓器に照射される線量を正確に把握できるため、治療成績の向上と副作用の軽減が期待できます。2016年からは保険適用となり、実施できる施設が増えています。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
化学放射線療法について
腫瘍が4cmを超える大きさの場合や、II期以上の進行がんでは、放射線治療と抗がん剤を同時に行う化学放射線療法が標準治療となっています。
抗がん剤には主にシスプラチンやネダプラチンが使用され、週1回程度の投与が行われます。放射線治療の効果を高める作用がありますが、副作用が強く出る場合もあります。
放射線治療による副作用の時期による分類
放射線治療による副作用は、症状が現れる時期によって「急性期の副作用」と「晩期合併症」に分けられます。
| 分類 | 発症時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| 急性期の副作用 | 治療中~治療終了後数か月以内 | 多くは一過性で、時間とともに改善する |
| 晩期合併症 | 治療終了後数か月~数年後 | 発症頻度は低いが、長期的な注意が必要 |
急性期に現れる副作用
治療中や治療終了直後に現れる副作用には、以下のようなものがあります。これらの症状の多くは治療終了とともに徐々に改善していきます。
放射線宿酔
倦怠感、食欲不振、吐き気などの症状が現れることがあります。「船酔い」に似た症状といわれています。
無理なく食べられるものを選んで食事をとり、こまめに水分補給を心がけることが大切です。症状が強い場合は、吐き気止めなどの薬が処方されます。
皮膚炎
外部照射を受けた部位の皮膚に、乾燥、かゆみ、ひりひりした痛み、赤み、色素沈着などが起こることがあります。
照射部位をこすったり刺激したりしないよう注意し、肌に触れる衣服は柔らかい素材のものを選びます。処方されたクリームや軟膏、かゆみ止めを使用することも効果的です。
下痢
腸の粘膜が放射線の影響を受けるために起こります。症状に応じて、下痢を抑える内服薬が処方されます。また、こまめな水分補給が重要です。症状が強い場合は、点滴による水分・栄養補給が行われることもあります。
膀胱炎症状
頻尿、排尿時の痛みや違和感などの症状が現れることがあります。水分をしっかりとることと、症状に応じた薬物治療が行われます。
血球減少
血液を作る骨髄の細胞がダメージを受け、白血球や血小板の減少、貧血などが起こることがあります。程度が軽い場合は経過観察となりますが、減少の程度が大きい場合は薬物治療が行われることもあります。
直腸炎・粘膜炎
直腸や膣の粘膜に炎症が起こり、不快感や痛みを感じることがあります。症状に応じて軟膏や内服薬による治療が行われます。
| 症状 | おもな対処法 |
|---|---|
| 放射線宿酔(倦怠感、吐き気) | 無理なく食事をとる、水分補給、吐き気止めの処方 |
| 皮膚炎 | 刺激を避ける、軟膏の使用、柔らかい衣服を選ぶ |
| 下痢 | 内服薬の処方、水分補給、必要時は点滴 |
| 膀胱炎症状 | 水分摂取、薬物治療 |
| 血球減少 | 経過観察、程度により薬物治療 |
症状が強い場合は、医師の判断で放射線治療を一時中断することもあります。体調の変化に気づいたときは、早めに医療スタッフに相談することが大切です。
晩期合併症(後遺症)
治療終了から数か月以上、場合によっては数年後に現れる副作用を晩期合併症といいます。発症頻度は低いですが、長期的な注意が必要です。
消化器系の合併症
直腸炎・直腸出血は、晩期合併症として比較的多く見られ、発症率は4~10%程度と報告されています。また、直腸出血の頻度は1%未満とされています。
小腸障害による腸閉塞は5%以下の頻度で起こります。特に放射線治療前に腹部の手術歴がある方は、リスクが3~4倍に増加するといわれています。また、喫煙歴のある方、痩せすぎの方、骨盤感染の既往のある方でもリスクが高くなります。
重症の場合は手術が必要になることもありますが、多くの場合は薬物治療や食事の工夫で改善します。
泌尿器系の合併症
膀胱炎や膀胱出血が起こることがあり、膀胱出血の発症率は2~5%程度です。尿路系の副作用は、消化管の副作用と比べて発症までの期間が長い傾向があります。
稀に、直腸と膣、または膀胱と膣がつながってしまう瘻孔(ろうこう)が発症することがあります。これらの発症リスクは5年で2%未満とされていますが、照射後に子宮全摘出術を受けた方や、治療前に腹部の手術歴がある方ではリスクが高くなります。
膣の変化
放射線の影響で膣が委縮し、硬くなることがあります。性交痛がある場合は、専用のクリームや潤滑剤を使用することが推奨されます。また、膣の壁同士がくっついてしまうこともあります。
卵巣機能の消失
放射線治療を受けると、卵巣を手術で残した場合でも、その機能はほぼ失われてしまいます。閉経前の方では、女性ホルモンが減少し、更年期障害と同様の症状が現れます。
具体的には、ほてり、発汗、頭痛、肩こり、イライラ、だるさ、食欲低下などの症状です。これらの症状を卵巣欠落症状といい、程度に応じて薬が処方されます。
下肢のリンパ浮腫
骨盤内のリンパ節を切除した場合や、リンパ節への照射により、下肢や下腹部にむくみが生じることがあります。
現在のところ確実な予防法はありませんが、スキンケアや体重管理を継続的に行うことが予防に効果的とされています。マッサージなどのセルフケア方法を習得しておくことも大切です。
骨の脆弱化
照射部位の骨が弱くなり、骨折のリスクが高まることがあります。70歳以上の方や体重が50kg未満の方では、骨折のリスクが10~15%程度と高くなる傾向があります。
二次がんのリスク
放射線治療を受けた方では、一般の方と比べて二次がん(治療後に新たに発生するがん)のリスクがわずかに高まります。ただし、20年後でも一般の方を上回るリスクは約3%程度とされています。
| 晩期合併症 | 発症頻度(Grade 3以上) |
|---|---|
| 直腸炎・直腸出血 | 4~10% |
| 膀胱炎・膀胱出血 | 5%以下 |
| 小腸障害(腸閉塞) | 5%以下 |
| 瘻孔(5年時点) | 2%未満 |
| 骨折(70歳以上、50kg未満) | 10~15% |
| 二次がん(20年後) | 約3% |
手術と放射線治療の比較
早期の子宮頸がん(I期~II期)では、手術と放射線治療の治療成績に差はないとされています。ただし、治療による体への影響は異なります。
手術では卵巣の機能を保つことができますが、放射線治療では卵巣機能がほぼ失われてしまいます。一方、放射線治療は手術と比べて、性生活や排尿機能に対する影響が小さいとされています。
年齢、将来の妊娠希望、全身状態、他の持病の有無などを総合的に考慮して、担当医とよく相談しながら治療法を選択することが重要です。
副作用・合併症への対処と生活上の注意点
異常に気づいたら早めに医師の診察を受け、他の病気が原因でないことを確かめることが大切です。その上で、適切な治療や日常生活の工夫に取り組みましょう。
食事について
特別な制限はありませんが、栄養バランスを第一に考え、楽しく食事をとることが大切です。
ただし、開腹手術や放射線治療を受けた方は、治療後に腸閉塞を発症する可能性があります。食物繊維の多い食品や消化しにくいものは、控えめにすることが望ましいでしょう。
運動と日常生活
退院直後は体力が低下しているため、しばらくは疲れたらすぐに横になる、足を高くして休むなど、無理をしないようにしましょう。
運動は体力の回復に合わせて散歩などから始め、少しずつ運動量を増やしていくことが推奨されます。
規則正しい生活
禁煙すること、飲酒を控えること、バランスの良い食事をとること、適度に運動することなどを日常的に心がけることが、体調の維持や回復につながります。
医療者への相談について
副作用の現れ方には個人差があり、症状の程度も人それぞれです。体調の変化に気づいたときは、定期的な経過観察のタイミングを待たずに、早めに医療スタッフに相談することが大切です。
症状や治療の状況により、日常生活の注意点は異なります。体調をみながら、担当医とよく相談して無理のない範囲で過ごしましょう。
放射線治療は子宮頸がんに対して高い治療効果が期待できる治療法です。副作用や合併症について正しく理解し、適切に対処することで、治療後の生活の質を維持することができます。
不安や疑問があるときは、遠慮せずに医療スタッフに相談しましょう。