
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
膀胱がんは60歳以上の男性に多く見られるがんで、喫煙が主要なリスク因子とされています。膀胱の内側を覆う尿路上皮という粘膜から発生することがほとんどです。
膀胱がんの薬物治療は、がんの進行度や広がり具合によって方法が異なります。早期がんでは膀胱内に直接薬を注入する膀胱内薬物注入療法が中心となり、進行がんや転移がんでは全身化学療法や免疫療法が選択されます。
この記事では、膀胱がんで使われる薬物治療の種類と目的、それぞれの抗がん剤の効果や副作用について、2026年時点の最新情報を含めて説明します。
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膀胱がんの進行度と治療方針の違い
膀胱がんの薬物治療を理解するには、まずがんの進行度による分類を知っておく必要があります。膀胱がんは大きく「筋層非浸潤性膀胱がん」と「筋層浸潤性膀胱がん」に分けられます。
筋層非浸潤性膀胱がん(表在性膀胱がん)は、膀胱の粘膜や粘膜下層にとどまっているがんです。このタイプは全体の約70%を占め、悪性度が低いものが多いとされています。ただし、膀胱内での再発を繰り返しやすいという特徴があります。
筋層浸潤性膀胱がん(進行性膀胱がん)は、膀胱の筋肉層まで深く浸潤したがんです。転移のリスクが高く、より積極的な治療が必要になります。
また、筋層非浸潤性膀胱がんの中でも「上皮内がん(CIS)」と呼ばれるタイプは、粘膜内に薄く広がる特殊ながんで、悪性度が高く筋層浸潤がんに進行しやすいことが知られています。
筋層非浸潤性膀胱がんの薬物治療
経尿道的膀胱腫瘍切除術後の膀胱内注入療法
筋層非浸潤性膀胱がんの基本治療は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)です。これは尿道から膀胱鏡を挿入し、電気メスでがん組織を切除する手術です。
手術でがんを取り除いた後、再発を防ぐ目的で膀胱内に直接薬を注入する「膀胱内薬物注入療法」が行われます。この治療では、カテーテルを通じて膀胱内に薬を注入し、一定時間膀胱内にとどめてから排尿します。
膀胱内注入療法で使われる主な薬には、BCG(結核菌ワクチン)と抗がん剤があります。
BCG膀胱内注入療法の仕組みと効果
BCG膀胱内注入療法は、筋層非浸潤性膀胱がんに対して最も効果が期待できる治療法とされています。BCGは本来、結核の予防接種に使われる弱毒化した結核菌ですが、膀胱がんの治療にも応用されています。
BCGを膀胱内に注入すると、膀胱の粘膜に免疫反応が起こります。この免疫反応によってリンパ球などの免疫細胞が活性化され、がん細胞を攻撃すると考えられています。つまり、BCG療法は免疫療法の一種といえます。
標準的な投与方法は、週1回の注入を6~8週間続けることです。効果があった場合は、維持療法として月1回程度の注入を1~3年間続けることもあります。
BCG療法の再発予防効果は高く、上皮内がんでは約70~80%の完全寛解率が報告されています。ただし、すべての患者さんに効果があるわけではなく、BCGが効かない場合や再発した場合は、膀胱全摘除術を検討する必要があります。
BCG療法の副作用と対処
BCG療法では約30~40%の患者さんに副作用が現れます。主な副作用には以下のようなものがあります。
| 副作用の種類 | 発現頻度 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 膀胱刺激症状 | 30~40% | 頻尿、排尿痛、血尿 |
| 発熱 | 20~30% | 38度以上の発熱、悪寒 |
| 全身倦怠感 | 10~20% | だるさ、疲労感 |
| 肉芽腫性前立腺炎 | 数% | 排尿困難、前立腺の腫れ |
多くの副作用は一時的なもので、数日で改善します。ただし、高熱が続く場合や重い症状が出た場合は、BCG感染症の可能性もあるため、すぐに医療機関に連絡する必要があります。
抗がん剤による膀胱内注入療法
BCGの代わりに、または併用して、抗がん剤を膀胱内に注入する治療も行われます。主に使われる抗がん剤は以下のとおりです。
マイトマイシンC(MMC)は、最もよく使われる抗がん剤の一つです。手術直後の単回注入や、BCGが使えない場合の維持療法に用いられます。副作用は比較的軽く、膀胱刺激症状が主なものです。
ドキソルビシン(アドリアマイシン)も膀胱内注入療法に使われる抗がん剤です。効果はBCGより劣りますが、BCGが使用できない場合の選択肢となります。
エピルビシンは、ドキソルビシンと同系統の抗がん剤で、膀胱粘膜への刺激が少ないとされています。
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筋層浸潤性膀胱がんの全身化学療法
手術前後の化学療法の役割
筋層浸潤性膀胱がんの標準治療は、膀胱全摘除術と骨盤リンパ節郭清、そして尿路変向術(新しい尿の通り道を作る手術)です。この手術に加えて、化学療法を組み合わせることがあります。
術前化学療法(ネオアジュバント化学療法)は、手術前に抗がん剤治療を行うものです。がんを縮小させて手術をしやすくすることや、微小な転移を抑えることを目的とします。複数の臨床試験で、術前化学療法が生存率を改善することが示されています。
術後化学療法(アジュバント化学療法)は、手術後に行う抗がん剤治療です。手術で取りきれなかった可能性のあるがん細胞や、微小転移を叩くことを目的とします。
術前と術後のどちらで化学療法を行うべきかについては、まだ明確な結論は出ていません。患者さんの全身状態や病理検査の結果などを考慮して、個別に判断されます。
GC療法の特徴と効果
現在、筋層浸潤性膀胱がんや転移性膀胱がんに対する第一選択の化学療法は、GC療法です。GC療法は、ゲムシタビン(G)とシスプラチン(C)を組み合わせた治療法です。
ゲムシタビンは代謝拮抗薬と呼ばれる抗がん剤で、がん細胞のDNA合成を阻害します。シスプラチンは白金製剤と呼ばれる抗がん剤で、DNA に結合してがん細胞の増殖を抑えます。
標準的なGC療法のスケジュールは、1日目、8日目、15日目にゲムシタビンを投与し、1日目にシスプラチンを投与します。これを1サイクル(28日間)として、複数サイクル繰り返します。
GC療法の奏効率(がんが縮小する割合)は約45~50%で、後述するMVAC療法と同等の効果が得られます。一方、副作用はMVAC療法より軽いとされています。
GC療法の主な副作用
GC療法で現れる可能性のある主な副作用には、以下のようなものがあります。
骨髄抑制は最も頻度の高い副作用です。白血球減少、血小板減少、貧血などが起こり、感染症のリスクや出血傾向、倦怠感などにつながります。定期的な血液検査でモニタリングし、必要に応じて薬の減量や治療の延期を行います。
腎機能障害はシスプラチンの代表的な副作用です。予防のため、治療前後に十分な水分補給(点滴)を行います。治療中は定期的に腎機能検査を行い、悪化した場合は薬の変更を検討します。
吐き気・嘔吐もシスプラチンによる副作用です。現在は効果の高い制吐剤が使えるため、以前より管理しやすくなっています。
その他、末梢神経障害(手足のしびれ)、聴覚障害、電解質異常などが起こることがあります。
MVAC療法の位置づけ
MVAC療法は、1985年に有効性が報告されて以来、長年にわたり膀胱がんの標準化学療法として使われてきました。MVAC療法は4種類の抗がん剤を組み合わせた治療法です。
M: メトトレキサート(代謝拮抗薬)
V: ビンブラスチン(植物アルカロイド)
A: ドキソルビシン/アドリアマイシン(抗がん性抗生物質)
C: シスプラチン(白金製剤)
MVAC療法の奏効率は50~70%、完全寛解率は10~25%と報告されています。GC療法と比較して効果は同等ですが、副作用がやや強いため、現在では第二選択として位置づけられることが多くなっています。
ただし、患者さんの状態によってはMVAC療法が選ばれることもあります。また、好中球増殖刺激因子(G-CSF)を使用して1サイクルを2週間に短縮した「High dose MVAC療法」も開発されており、治療期間の短縮と効果の向上が期待されています。
シスプラチンが使えない場合の治療選択
シスプラチンは膀胱がんの化学療法の中心的な薬ですが、腎機能が低下している患者さんや、心機能に問題がある患者さんには使用できません。
このような場合、カルボプラチンという別の白金製剤に置き換えた治療が検討されます。カルボプラチンはシスプラチンと同じく白金製剤ですが、腎毒性が少ないという特徴があります。ただし、効果はシスプラチンよりやや劣るとされています。
ゲムシタビンとカルボプラチンの組み合わせや、ゲムシタビン単剤療法なども選択肢となります。
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最新の薬物治療:免疫チェックポイント阻害薬
免疫療法の新しい展開
2010年代後半から、膀胱がん治療に免疫チェックポイント阻害薬が使われるようになりました。免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを阻害することで、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにする薬です。
日本で膀胱がんに承認されている免疫チェックポイント阻害薬には、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、ニボルマブ(オプジーボ)、アテゾリズマブ(テセントリク)などがあります。
どのような場合に使われるか
免疫チェックポイント阻害薬は、主に以下のような状況で使用されます。
一つ目は、シスプラチンを含む化学療法が効かなくなった(病勢進行した)場合の二次治療としての使用です。GC療法やMVAC療法の後に病気が進行した患者さんに対して、免疫チェックポイント阻害薬が選択されます。
二つ目は、シスプラチンが使えない患者さんの一次治療としての使用です。腎機能が低下しているなどの理由でシスプラチンが使えない場合、免疫チェックポイント阻害薬が最初の全身治療として選択されることがあります。
三つ目は、BCG療法が効かなかった筋層非浸潤性膀胱がんに対する使用です。BCG不応性の上皮内がんなどに対して、免疫チェックポイント阻害薬が選択肢となります。
効果と副作用
免疫チェックポイント阻害薬の奏効率は約20~30%とされています。化学療法と比べると奏効率は低いですが、効果が得られた場合には長期間効果が持続することがあるという特徴があります。
副作用としては、免疫関連有害事象と呼ばれる特有の副作用が起こることがあります。これは、活性化した免疫系が正常な臓器を攻撃してしまうことで起こります。
主な免疫関連有害事象には、間質性肺炎、大腸炎、肝機能障害、内分泌障害(甲状腺機能異常、副腎機能不全など)、皮膚障害などがあります。これらは早期発見と適切な対処が重要で、定期的な検査でモニタリングが行われます。
分子標的薬による治療
エルダフィチニブの登場
2021年、日本でFGFR遺伝子変異陽性の尿路上皮がんに対して、エルダフィチニブ(バルベルサ)という分子標的薬が承認されました。
FGFR(線維芽細胞増殖因子受容体)は細胞の増殖に関わるタンパク質です。一部の膀胱がんではFGFR遺伝子に変異があり、この変異ががん細胞の増殖を促進しています。エルダフィチニブはFGFRの働きを阻害することで、がん細胞の増殖を抑えます。
膀胱がんの約15~20%でFGFR遺伝子変異が見られるとされています。エルダフィチニブを使用するには、事前に遺伝子検査を行い、FGFR遺伝子変異があることを確認する必要があります。
エルダフィチニブの効果と副作用
臨床試験では、化学療法後に病勢進行したFGFR遺伝子変異陽性の患者さんに対して、約40%の奏効率が報告されています。
主な副作用として、高リン血症(血液中のリン濃度が上がる)、口内炎、爪の変化、下痢、疲労感などがあります。高リン血症に対しては、リン吸着薬の使用や食事指導が行われます。
抗体薬物複合体による治療
エンホルツマブ ベドチン(パドセブ)は、2021年に日本で承認された抗体薬物複合体です。がん細胞の表面にあるネクチン-4というタンパク質を標的とする抗体に、抗がん剤を結合させた薬です。
化学療法後に病勢進行した局所進行性または転移性の尿路上皮がんに使用されます。臨床試験では約40~45%の奏効率が報告されています。
主な副作用として、末梢神経障害、皮膚障害、脱毛、疲労感、吐き気などがあります。
治療の選択と今後の展望
個別化医療の進展
膀胱がんの薬物治療は、従来の化学療法に加えて、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬など、新しい選択肢が増えてきました。
今後は、遺伝子検査やバイオマーカー検査によって、それぞれの患者さんに最も効果が期待できる治療を選ぶ「個別化医療」がさらに進んでいくと考えられます。
治療を選ぶ際の考え方
薬物治療を選択する際には、がんの進行度や広がり、患者さんの全身状態、年齢、持病の有無などを総合的に判断します。
また、期待される効果だけでなく、副作用の種類や程度、治療期間、生活への影響なども考慮する必要があります。治療の目的が治癒を目指すものなのか、延命を目指すものなのか、症状を和らげるものなのかによっても、選択は変わってきます。
医療チームとよく相談し、疑問や不安があれば遠慮せずに質問することが大切です。セカンドオピニオンを求めることも、納得のいく治療選択をするための一つの方法です。
参考文献・出典情報
国立がん研究センター中央病院 泌尿器・後腹膜腫瘍科 膀胱がん
National Cancer Institute Bladder Cancer
NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology - Bladder Cancer

