
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
肺がんの手術は、がんを根治するための重要な治療選択肢です。しかし、手術後には体にさまざまな変化が生じ、後遺症や合併症が現れることがあります。
この記事では、肺がん手術後に起こりうる後遺症と合併症について、その具体的な症状、発生メカニズム、対処方法、そして生活への影響を詳しく解説します。
手術を控えている患者さんやご家族が、術後の経過について理解を深め、適切な準備と対応ができるよう、情報を整理していきます。
【サイト内 特設ページ】
がんを治すために必要なことは、たった1つです。
詳しくはこちらのページで。
→がんを治すための「たった1つの条件」とは?
肺がん手術の種類と切除範囲による影響の違い
肺がんの手術には、がんの位置や大きさ、進行度に応じていくつかの種類があります。切除する範囲によって、術後の影響や後遺症の程度も異なってきます。
まず、肺の構造について簡単に説明します。肺は右肺が3つの肺葉(上葉、中葉、下葉)、左肺が2つの肺葉(上葉、下葉)に分かれています。さらに各肺葉は複数の区域に分かれており、全体として約10個の区域から構成されています。
手術の種類としては、以下のようなものがあります。
| 手術の種類 | 切除範囲 | 肺機能への影響 | 主な適応 |
|---|---|---|---|
| 楔状切除(部分切除) | 腫瘍とその周辺のみ | 最も少ない(約5~10%低下) | 小さな早期がん、高齢者 |
| 区域切除 | 1つまたは複数の区域 | 比較的少ない(約10~15%低下) | 2cm以下の早期がん |
| 肺葉切除 | 1つの肺葉全体 | 中程度(約20~30%低下) | 最も標準的な手術、多くの症例に適応 |
| 片肺全摘術 | 左肺または右肺の全体 | 大きい(約40~50%低下) | 中心部の進行がん、気管支への浸潤 |
現在の肺がん手術では、胸腔鏡(VATS: Video-Assisted Thoracoscopic Surgery)やロボット支援手術など、できるだけ体への負担が少ない低侵襲手術が普及しています。これらの方法では、従来の開胸手術と比べて術後の痛みが軽減され、回復も早くなる傾向があります。
手術後に現れる主な後遺症
肺がんの手術後には、手術によって肺組織が失われることや、胸部の創部の影響によって、いくつかの後遺症が現れます。これらの多くは時間とともに改善していきますが、程度や持続期間には個人差があります。
術後の痛み
手術後の痛みは、多くの患者さんが経験する症状です。痛みの原因は、主に以下の要素によるものです。
開胸手術では肋骨の間を広げるため、肋間神経が圧迫されたり損傷したりすることがあります。また、胸腔鏡手術でも、器具を挿入するために複数の小さな切開を行うため、その部位に痛みが生じます。さらに、手術中に胸腔内にドレーン(管)を留置するため、これによる刺激も痛みの原因となります。
術後の痛みは、手術直後が最も強く、その後徐々に軽減していくのが一般的です。痛みの管理には、硬膜外麻酔や患者自己調節鎮痛法(PCA)、内服薬などが使用されます。適切な痛みのコントロールは、深呼吸や咳を促し、肺炎などの合併症を予防するうえで重要です。
多くの場合、強い痛みは術後1~2週間程度で軽減しますが、創部の違和感や神経痛のような痛みは数か月間続くこともあります。日常生活に支障がある場合は、遠慮せずに医師や看護師に相談することが大切です。
呼吸機能の低下と息切れ
肺がん手術では正常な肺組織も一部切除されるため、術後には呼吸機能が低下します。切除した範囲が大きいほど、また元の肺機能が低い患者さんほど、この影響は大きくなります。
具体的な症状としては、以下のようなものがあります。
階段を上る、坂道を歩く、重い荷物を持つといった動作で、以前よりも息切れを感じやすくなります。特に手術後しばらくは、軽い家事や散歩でも疲れやすく感じることがあります。
手術した側の胸部に、「板を入れられたような感覚」や「突っ張る感じ」を覚えることも珍しくありません。これは、肺のサイズが小さくなったことで、胸腔内のスペースに変化が生じたためです。残った肺が徐々に膨らんで空間を埋めていくため、この感覚は時間とともに軽減していきます。
呼吸機能の低下は避けられませんが、適切なリハビリテーションを行うことで、残存する肺の機能を最大限に引き出すことができます。多くの患者さんは、術後3~6か月程度で日常生活に支障のない程度まで回復します。
疲労感と体力の低下
手術という大きな身体的ストレスに加え、呼吸機能の低下によって、術後しばらくは疲れやすさを感じることがあります。以前と同じように活動しようとすると、思った以上に疲労を感じることがあります。
この疲労感も時間とともに改善していきますが、焦らずに自分のペースで徐々に活動量を増やしていくことが重要です。無理をして一気に活動量を増やすと、かえって回復が遅れる可能性があります。
痰の増加
手術後は、気道の粘膜が刺激されることや、麻酔の影響、呼吸機能の変化などによって、痰の量が増えることがあります。痰を適切に排出できないと、気道に痰が溜まり、肺炎などの合併症につながる可能性があります。
痰の排出を促すためには、水分を十分に摂取すること、深呼吸や咳の訓練を行うこと、必要に応じて去痰薬を使用することなどが有効です。
【サイト内 特設ページ】
がんを治すために必要なことは、たった1つです。
詳しくはこちらのページで。
→がんを治すための「たった1つの条件」とは?
手術後に起こりうる合併症
後遺症とは別に、手術後には合併症が発生する可能性があります。合併症は早期に発見して適切に対処することが重要です。
| 合併症 | 主な症状 | 発生時期 | 発生頻度 |
|---|---|---|---|
| 肺炎 | 発熱、咳、痰の増加、息苦しさ | 術後3~7日 | 約5~15% |
| 無気肺 | 呼吸困難、酸素飽和度の低下 | 術後すぐ~数日 | 約10~20% |
| 肺瘻(air leak) | 胸腔ドレーンからの持続的な空気漏れ | 術後すぐ~ | 約10~30% |
| 不整脈(心房細動など) | 動悸、息切れ、胸部不快感 | 術後2~4日 | 約10~20% |
| 乳び胸 | 胸腔ドレーンからの乳白色の排液 | 術後数日~1週間 | 約1~3% |
肺炎の発生メカニズムと予防
肺炎は、肺がん手術後に最も注意すべき合併症の一つです。術後肺炎が発生する理由は複数あります。
全身麻酔時には気管に管を挿入するため、気道の粘膜が刺激され、痰が増えやすくなります。また、術後の痛みによって深呼吸や咳が十分にできないと、痰がうまく排出されず、気道や肺に溜まってしまいます。
さらに、手術によって免疫機能が一時的に低下することも、細菌感染のリスクを高めます。特に喫煙歴のある患者さん、高齢の患者さん、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの基礎疾患を持つ患者さんでは、肺炎のリスクが高くなります。
肺炎を予防するための対策としては、以下のようなものがあります。
術前からの禁煙は最も重要です。喫煙は気道の繊毛運動を低下させ、痰の排出を困難にします。理想的には手術の4週間以上前から禁煙を開始することが推奨されます。
術後の呼吸訓練も重要です。深呼吸の練習、インセンティブスパイロメトリー(呼吸訓練器具)の使用、咳の訓練などを行います。痛みがあっても、医療スタッフの指導のもとで積極的に取り組むことが大切です。
早期離床も肺炎予防に有効です。ベッド上で安静にしているよりも、可能な範囲で体を起こし、歩行することで、肺の換気が改善され、痰の排出も促進されます。
適切な痛みのコントロールも、深呼吸や咳を可能にするために不可欠です。痛みを我慢せず、医療スタッフに伝えて適切な鎮痛薬を使用してもらいましょう。
無気肺とその対処
無気肺は、肺の一部または全体が虚脱(縮んでしまう)した状態を指します。手術後には、痰による気道の閉塞、浅い呼吸、長時間の同一体位などが原因で無気肺が生じやすくなります。
無気肺が起こると、酸素の取り込みが悪くなり、呼吸困難を感じることがあります。また、無気肺が生じた部位には細菌が増殖しやすく、肺炎につながる可能性もあります。
無気肺の予防と治療には、深呼吸訓練、体位ドレナージ(痰を出しやすくするための体位の工夫)、早期離床などが有効です。重度の場合には、気管支鏡を使って痰を吸引する処置が行われることもあります。
肺瘻(air leak)について
肺瘻は、肺の表面や気管支の縫合部から空気が漏れる状態です。手術後、胸腔内に留置されたドレーンから持続的に空気が排出される場合、肺瘻が疑われます。
軽度の肺瘻は比較的よく見られ、多くの場合は自然に治癒します。ドレーンを留置したまま、肺が十分に膨らむのを待つことで、数日から1~2週間程度で改善することが多いです。
ただし、空気漏れが大量で持続する場合や、肺が膨らまない場合には、追加の処置や再手術が必要になることもあります。
不整脈(特に心房細動)
肺がん手術後には、心房細動をはじめとする不整脈が発生することがあります。これは、手術による心臓への負担、電解質バランスの変化、炎症反応などが原因と考えられています。
心房細動が起こると、動悸、息切れ、胸部不快感などの症状が現れます。多くの場合、薬物療法によって改善しますが、脳梗塞のリスクもあるため、抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)の投与が必要になることもあります。
不整脈は術後2~4日頃に発生することが多いため、この時期には心電図モニターで注意深く観察されます。
その他の合併症
上記以外にも、以下のような合併症が起こる可能性があります。
乳び胸は、胸管と呼ばれるリンパ管が手術中に損傷されることで、乳白色のリンパ液が胸腔内に溜まる状態です。発生頻度は低いですが、栄養状態の悪化や免疫機能の低下につながる可能性があるため、適切な対処が必要です。
出血や血腫の形成、創部の感染、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)なども、まれではありますが起こりうる合併症です。
生活への影響と運動制限
肺がん手術後の生活にどのような影響が出るかは、多くの患者さんが気になるところです。
日常生活動作への影響
術後すぐの時期は、着替えや入浴、食事の準備など、基本的な日常生活動作にも援助が必要な場合があります。特に腕を上げる動作は胸部に負担がかかるため、洗髪や高い場所のものを取る動作などが難しく感じられることがあります。
術後1~2週間程度で、多くの患者さんは自宅での基本的な日常生活が可能になります。ただし、重いものを持つ、長時間の立ち仕事、激しい家事などは、もう少し時間をかけて徐々に再開していく必要があります。
運動と活動の再開
術後の運動については、段階的に活動量を増やしていくことが推奨されます。
まず、術後早期から病院内での歩行訓練を開始します。最初は病室内やベッドサイド、次に病棟内、そして階段の昇降へと進んでいきます。
退院後は、散歩から始めて、徐々に距離と時間を延ばしていきます。最初は平地で10~15分程度の散歩から始め、呼吸が苦しくならない範囲で、少しずつ時間を延ばしていきます。
術後1~2か月程度で、軽いジョギングや自転車こぎ、水中歩行などの有酸素運動を開始できる場合もあります。ただし、激しいスポーツやコンタクトスポーツは、医師の許可が出るまで控える必要があります。
運動を再開する際の目安としては、以下のような点に注意します。
息切れの程度に注意し、会話ができる程度の強度を保つこと。胸部に痛みや違和感がある場合は無理をしないこと。疲労を感じたら休憩を取ること。水分補給を十分に行うことなどが大切です。
仕事への復帰
職場復帰の時期は、仕事の内容や手術の規模、回復の程度によって異なります。
デスクワークや軽作業の場合は、術後1~2か月程度で復帰できることが多いです。一方、肉体労働や重いものを持つ仕事、長時間の立ち仕事などは、術後3~6か月程度の休養が必要になる場合もあります。
復職後も、最初は短時間勤務から始めて、徐々にフルタイムに戻していくなど、段階的な復帰が推奨されます。職場の産業医や人事部門と相談しながら、無理のない復職計画を立てることが大切です。
【サイト内 特設ページ】
がんを治すために必要なことは、たった1つです。
詳しくはこちらのページで。
→がんを治すための「たった1つの条件」とは?
後遺症・合併症を軽減するための対策
後遺症や合併症を完全に避けることはできませんが、適切な準備と術後のケアによって、その程度を軽減し、回復を早めることが可能です。
術前の準備
手術前にできる最も重要な準備は禁煙です。喫煙は肺炎のリスクを大幅に高めるだけでなく、創部の治癒も遅らせます。手術が決まったら、できるだけ早く禁煙を開始しましょう。
また、術前から呼吸訓練を行うことも有効です。深呼吸の方法や咳の仕方を練習しておくことで、術後の呼吸管理がスムーズになります。
栄養状態を良好に保つことも重要です。バランスの取れた食事を心がけ、必要に応じて栄養補助食品を利用することも検討しましょう。良好な栄養状態は、術後の回復を促進し、合併症のリスクを低減します。
術後のリハビリテーション
術後のリハビリテーションは、回復を促進し、後遺症を軽減するために不可欠です。
呼吸訓練では、深呼吸の練習、インセンティブスパイロメトリーの使用、咳の訓練などを行います。これらは肺の膨張を促し、痰の排出を助け、肺炎や無気肺の予防につながります。
理学療法士の指導のもと、胸郭のストレッチや肩関節の可動域訓練なども行います。これらは、手術による胸部の硬さや動きの制限を改善するのに役立ちます。
歩行訓練や階段昇降訓練は、全身の体力回復と心肺機能の改善を目的として行います。最初は短い距離から始めて、徐々に距離と時間を延ばしていきます。
痛みの適切な管理
術後の痛みを我慢する必要はありません。痛みが強いと、深呼吸や咳ができず、肺炎などの合併症につながる可能性があります。
痛みの程度を医療スタッフに正確に伝え、適切な鎮痛薬を使用してもらいましょう。痛みが軽減されることで、リハビリテーションにも積極的に取り組むことができ、結果として回復が早まります。
回復過程のタイムライン
術後の回復には個人差がありますが、一般的な経過の目安を理解しておくことは、患者さんやご家族にとって有用です。
| 時期 | 状態と活動内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 術後1~3日 | 集中治療室または病棟での管理、ベッド上安静から離床開始 | 痛みの管理、深呼吸・咳の訓練、ドレーン管理 |
| 術後4~7日 | 病棟内歩行、階段昇降訓練、ドレーン抜去(状況により) | 肺炎や不整脈などの合併症に注意 |
| 術後1~2週間 | 退院、自宅での基本的な日常生活 | 無理をせず、徐々に活動量を増やす |
| 術後1~2か月 | 外来通院、散歩や軽い運動、軽作業の仕事復帰 | 疲労を感じたら休憩、定期的な診察受診 |
| 術後3~6か月 | ほぼ通常の活動レベル、フルタイムの仕事復帰 | 定期検査の継続、健康的な生活習慣の維持 |
| 術後6か月以降 | 通常の生活、経過観察継続 | 定期的な画像検査、再発の監視 |
この表はあくまで目安であり、実際の回復速度は、手術の規模、患者さんの年齢や全身状態、合併症の有無などによって変わります。主治医の指示に従い、自分のペースで無理なく回復を目指すことが大切です。
長期的な影響と注意点
手術から数か月が経過し、日常生活に戻った後も、いくつかの点に注意が必要です。
感染症への注意
肺の一部を切除したことで、呼吸器感染症にかかりやすくなる可能性があります。インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種を検討することが推奨されます。
また、風邪やインフルエンザが流行する時期には、手洗いやマスクの着用などの感染予防対策を徹底しましょう。
禁煙の継続
術前に禁煙した患者さんは、その状態を継続することが重要です。再び喫煙を始めると、残った肺へのダメージが蓄積され、将来的な呼吸機能の低下や他のがんの発生リスクが高まります。
定期的な経過観察
手術後は、がんの再発や転移の有無を確認するため、定期的な画像検査や血液検査が必要です。症状がなくても、予定された診察は必ず受診しましょう。
また、息切れの悪化、持続する咳、血痰、原因不明の体重減少などの症状が現れた場合は、次の診察を待たずに早めに医療機関を受診することが大切です。
患者さんとご家族へ
肺がんの手術は、患者さんにとって大きな決断であり、術後の回復にも時間と努力が必要です。しかし、適切な準備と術後のケア、そして前向きな姿勢によって、多くの患者さんが手術前に近い生活の質を取り戻しています。
後遺症や合併症について知識を持つことは、不安を和らげ、適切な対応を可能にします。気になる症状があれば、遠慮せずに医療スタッフに相談しましょう。
また、リハビリテーションや生活習慣の改善には、ご家族のサポートも重要です。患者さん一人で抱え込まず、周囲の協力を得ながら、回復を目指していくことが大切です。
手術は治療の一つの段階であり、その後の経過観察や必要に応じた追加治療も含めて、長期的な視点で向き合っていくことが重要です。
参考文献・出典情報
本記事は以下の信頼できる医療機関・学術団体の情報を参考に作成しています。
1. 国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん」
https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/index.html
2. 日本肺癌学会「肺癌診療ガイドライン」
https://www.haigan.gr.jp/
3. 日本呼吸器外科学会
https://www.jacsurg.gr.jp/
4. 日本胸部外科学会
http://www.jpats.org/
5. American Cancer Society "Lung Cancer Surgery"
https://www.cancer.org/cancer/lung-cancer/treating-non-small-cell/surgery.html
6. National Cancer Institute "Lung Cancer Treatment (PDQ)"
https://www.cancer.gov/types/lung/patient/lung-treatment-pdq
7. 日本リハビリテーション医学会「がんのリハビリテーション」
https://www.jarm.or.jp/
8. 日本呼吸器学会「呼吸器の病気」
https://www.jrs.or.jp/
9. 厚生労働省「がん対策情報」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/index.html
10. 日本医療機能評価機構 Mindsガイドラインライブラリ
https://minds.jcqhc.or.jp/

