【レジメン】
Dacomitinib(ダコミチニブ:ビジンプロ)=1回45mg:1日1回 経口 連日投与 PD(増悪)まで
※患者の状態により適宜増減するが、1日1回50mgまで増量できる
基本事項
【適応】
EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がん
【奏効率】(国際共同第Ⅲ相試験/ARCHER1050)
・奏効率(CR+PR)
75%
・無増悪生存期間(中央値)
14.7カ月(11.1~16.6カ月)
・全生存期間(中央値)
34.1カ月(29.5~37.7カ月)
【副作用】(国際共同第Ⅲ相試験/ARCHER1050)
・下痢:All Grade=85.0%、Grade3以上=8.4%
・爪囲炎:All Grade=61.7%、Grade3以上=7.5%
・ざ瘡様皮膚炎:All Grade=48.9%、Grade3以上=13.7%
・口内炎:All Grade=41.0%、Grade3以上=3.5%
・皮膚乾燥:All Grade=27.3%、Grade3以上=1.3%
・食欲減退:All Grade=25.1%、Grade3以上=2.2%
・ALT上昇:All Grade=18.5%、Grade3以上=0.9%
・AST上昇:All Grade=17.2%、Grade3以上=0.0%
・発疹:All Grade=17.2%、Grade3以上=4.0%
・悪心:All Grade=12.8%、Grade3以上=0.9%
・間質性肺疾患:All Grade=2.2%、Grade3以上=0.4%
レジメンチェックポイント
①副作用に対する休薬・減量および中止基準の確認
<減量段階>
・通常投与量:45mg/日
・1段階減量:30mg/日
・2段階減量:15mg/日
<副作用に対する休薬・減量・中止基準>
・間質性肺疾患(ILD):全Grade=投与を中止する
・下痢:Grade2=Grade1以下に回復するまで休薬し、回復後、同一用量または1段階減量して投与を再開できる。Grade3または4=Grade1以下に回復するまで休薬し、回復後、1段階減量して投与を再開できる
・皮膚毒性(発疹、紅斑および剥離を伴う皮膚の症状):Grade2=Grade1以下に回復するまで休薬し、回復後、同一用量または1段階減量して投与を再開できる。Grade3または4=Grade1以下に回復するまで休薬し、回復後、1段階減量して投与を再開できる
・上記以外の副作用:Grade3または4=Grade2以下に回復するまで休薬し、回復後、1段階減量して投与を再開できる
②併用薬の確認
・CYP2D6阻害作用を有するため、CYP2D6の基質となる薬剤<プロカインアミド、ピモジド、三環系抗うつ薬(アミトリプチリン等)、β遮断薬(メトプロロール等)、デキストロメトルファン等>の血中濃度を増加させて副作用を増強させる可能性がある
・プロトンポンプ阻害薬やH2ブロツカーを併用している場合、胃内pH上昇により本剤の吸収が低下して血中濃度が低下する可能性がある
副作用対策と服薬指導のポイント
①間質性肺疾患:治療開始早期に急性肺障害、間質性肺疾患があらわれることがあるので、患者には初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱等の有無)を伝え、早期の医療機関への受診について指導する
②皮膚障害:発疹、ざ瘡様皮疹が強くあらわれることが多いため、あらかじめ症状などを説明しておく必要がある(初回発現までの期間中央値は13日)。対応については以下のアルゴリズムを参照
<ざ瘡様皮疹の治療指針>
・軽症
副腎皮質ステロイド外用薬を用いる。部位により、medium~very strongの軟膏、クリーム、ローション基剤を選択する。頭部はローション剤、顔面・体幹は軟膏、クリーム剤が使いやすいが、ローション剤やクリーム剤は時に刺激を感じることがあり、基剤選択にも留意する。なお、ミノサイクリンの予防内服も有用である。原疾患の治療は継続可能である
・中等症
軽症よりランクアップした副腎皮質ステロイド外用薬を用いる。なお、掻痒を伴う場合は、抗アレルギー薬を併用するが、接触性皮膚炎や白癬を併発していることがあり、悪化するときには皮膚科専門医の介入が必要である。なお、原疾患の治療は継続可能である。ミノサイクリン100~20Omg/日内服が目安となる
・重症
原疾患の治療薬を休薬のうえ、皮膚科専門医へ紹介する。基本的には、2週間を目安に副腎皮質ステロイドを内服で投与する
③下痢:重篤な下痢を発症する場合もあるため、患者の観察時には脱水などの症状に留意し、早期の対処療法(整腸剤、ロペラミドなど)を行う(初回発現までの期間中央値は7日)