
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
日本の食卓に欠かせないジャガイモは、多くの家庭で日常的に使われている食材です。煮物、炒め物、サラダなど調理方法も多彩で、和洋中どの料理にも活用できる万能野菜として親しまれています。
このジャガイモに含まれる成分ががん予防に役立つ可能性があるという研究報告があります。日々の食事に取り入れやすい身近な食材だからこそ、その栄養価値や抗がん作用について正確に理解しておくことは、がん患者さんやそのご家族にとって有益な情報となるでしょう。
この記事では、ジャガイモに含まれる栄養成分、特にがんに対する作用が報告されている物質について、科学的な根拠に基づいて解説します。また、ジャガイモの効果的な調理方法や選び方、保存法についても詳しく説明していきます。
ジャガイモの基本的な栄養特性と健康への影響
ジャガイモは南米アンデス地方が原産とされ、16世紀にヨーロッパに伝わり、日本には江戸時代に渡来しました。現在では北海道を中心に全国で栽培されており、日本人の食生活に深く根付いた食材となっています。
ジャガイモの主成分はでんぷんで、エネルギー源として優れた食材です。同じイモ類であるサツマイモが100gあたり132キロカロリーであるのに対し、ジャガイモは76キロカロリーと比較的低カロリーです。この特性は、食事管理が必要ながん患者さんにとって選択肢の一つとなります。
ジャガイモに含まれるビタミンCは、でんぷん質に守られているため加熱調理による損失が少ないという特徴があります。通常、ビタミンCは熱に弱く調理過程で失われやすい栄養素ですが、ジャガイモの場合はでんぷんが保護膜のような役割を果たすため、茹でたり炒めたりしても比較的多くのビタミンCが残ります。
このビタミンCには抗酸化作用があり、傷ついた胃腸の粘膜を正常な状態に戻す働きがあります。がん治療中の患者さんの中には、抗がん剤や放射線治療の副作用で消化器系の粘膜が傷つく方もいらっしゃいますので、こうした栄養素を含む食材は食事療法の観点から注目されます。
ジャガイモに含まれる主要な栄養成分の詳細
ジャガイモには様々な栄養成分が含まれています。以下の表は、ジャガイモ100gあたりに含まれる主要な栄養成分をまとめたものです。
| 栄養成分 | 含有量(100gあたり) | 主な働き |
|---|---|---|
| エネルギー | 76kcal | 体を動かすエネルギー源 |
| たんぱく質 | 1.6g | 体の組織を構成する |
| 炭水化物 | 17.6g | 主要なエネルギー源 |
| カリウム | 410mg | 血圧調整、塩分排出 |
| ビタミンC | 35mg | 抗酸化作用、免疫機能維持 |
| ビタミンB1 | 0.09mg | 糖質の代謝を助ける |
| ビタミンB6 | 0.18mg | たんぱく質の代謝を助ける |
| 食物繊維(総量) | 1.3g | 腸内環境の改善 |
| 葉酸 | 21μg | 細胞の生成を助ける |
カリウムの働きと注意点
ジャガイモに豊富に含まれるカリウムは、体内の余分な塩分を体外に排出する働きがあります。この作用により血圧を下げる効果が期待でき、高血圧の予防に役立つとされています。
ただし、腎機能が低下している方、特に慢性腎臓病や腎炎などでカリウム制限を受けている患者さんは、ジャガイモの摂取量に注意が必要です。カリウムは水溶性のため、茹でこぼすことで含有量を減らすことができますが、医師や管理栄養士の指導に従って適切な量を摂取することが重要です。
食物繊維による腸内環境への影響
ジャガイモには水溶性食物繊維が0.6g、不溶性食物繊維が0.7g含まれており、合計で1.3gの食物繊維を摂取できます。食物繊維は腸の働きを促進し、便秘の改善に役立ちます。
近年の研究では、腸内環境の状態が免疫機能にも影響を与えることが明らかになってきており、がん患者さんの体調管理においても腸内環境を整えることの重要性が認識されています。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
がん予防や抗がん作用が報告されているジャガイモの成分
ジャガイモには、がん細胞に対する作用が研究されている成分がいくつか含まれています。ここでは、科学的な研究報告に基づいて、その主要な成分について解説します。
ステロイドアルカロイド配糖体の抗がん効果
熊本大学薬学部の研究では、ジャガイモに含まれるステロイドアルカロイド配糖体という成分が、複数のがん細胞に対して抗がん効果を示すことが報告されています。
この研究によると、ジャガイモのステロイドアルカロイド配糖体は以下のようながん細胞に対する作用が確認されています。
| がんの種類 | 報告されている作用 |
|---|---|
| 肺がん | がん細胞の増殖抑制 |
| 大腸がん | がん細胞の増殖抑制 |
| 乳がん | がん細胞の増殖抑制 |
| 胃がん | がん細胞の増殖抑制 |
| 白血病 | がん細胞の増殖抑制 |
ステロイドアルカロイド配糖体は、ジャガイモが自然に持っている防御物質の一種です。植物が病原菌や害虫から身を守るために生成する化合物で、これが人間の体内でがん細胞の増殖を抑える可能性があるという研究結果です。
ただし、これらは実験室レベルや動物実験での研究結果であり、人間のがん治療に直接応用できるかどうかは、さらなる臨床研究が必要です。ジャガイモを食べることで確実にがんが予防できる、あるいは治療できるとは言えない段階です。
レクチンの抗がん作用と免疫機能への影響
ジャガイモにはレクチンというたんぱく質も含まれています。レクチンは糖と結合する性質を持つたんぱく質で、様々な生物学的活性を示すことが知られています。
レクチンには抗がん作用があるという研究報告がありますが、その作用メカニズムは完全には解明されていません。一部の研究では、レクチンががん細胞の表面にある糖鎖構造に結合し、細胞の増殖や転移を抑制する可能性が示唆されています。
また、レクチンは免疫系を活性化する作用も報告されており、風邪などの感染症予防にも関係している可能性があります。ただし、レクチンは過剰に摂取すると消化器系に負担をかける場合もあるため、通常の食事で摂取する範囲内での効果が期待されます。
オスモチンとメタボリックシンドロームへの作用
ジャガイモにはオスモチンという生理機能成分が多く含まれています。オスモチンは植物が乾燥や塩分などのストレスに対抗するために生成するたんぱく質です。
近年の研究では、オスモチンがメタボリックシンドロームの進行を抑え、改善する働きがある可能性が指摘されています。メタボリックシンドロームは内臓脂肪の蓄積に加えて、高血圧、高血糖、脂質異常などが組み合わさった状態で、様々な生活習慣病のリスク因子となります。
がんとメタボリックシンドロームの関連性も研究されており、肥満や代謝異常ががん発症リスクを高める可能性が指摘されています。そのため、オスモチンによるメタボリックシンドロームの改善効果は、間接的にがん予防につながる可能性があります。
抗酸化作用を持つビタミンCとその役割
前述の通り、ジャガイモに含まれるビタミンCは加熱に強いという特徴があります。ビタミンCは強力な抗酸化作用を持ち、体内で発生する活性酸素を除去する働きがあります。
活性酸素は細胞にダメージを与え、DNAの損傷を引き起こすことで、がんの発生リスクを高める要因の一つとされています。抗酸化物質を含む食品を摂取することで、この活性酸素による細胞のダメージを軽減し、がん予防につながる可能性が研究されています。
ビタミンCはまた、免疫機能を維持する役割も果たしており、体の防御機能を正常に保つために重要な栄養素です。
ジャガイモの効果的な調理方法と栄養成分の活用
ジャガイモに含まれる栄養成分を効果的に摂取するためには、調理方法を工夫することが大切です。ここでは、栄養成分の損失を最小限に抑える調理法について説明します。
水溶性栄養素を逃さない調理のポイント
ビタミンCやカリウムは水溶性の成分であるため、茹でると煮汁に溶け出してしまいます。これらの栄養素を効率的に摂取するためには、以下のような調理方法が推奨されます。
| 調理方法 | 栄養成分の保持 | おすすめの料理 |
|---|---|---|
| 煮汁ごと食べる | ◎ 水溶性成分を逃さない | シチュー、カレー、味噌汁 |
| 蒸す | ○ 水に触れる時間が短い | 蒸しジャガイモ、温野菜 |
| 電子レンジ | ○ 水を使わない加熱 | ふかし芋、ポテトサラダの下準備 |
| 茹でる | △ 水溶性成分が流出 | ポテトサラダ(茹で汁は使わない) |
| 揚げる | ○ 水を使わないが高カロリー | フライドポテト、コロッケ |
特に煮物やシチュー、スープなどの料理では、煮汁に溶け出した栄養成分も一緒に摂取できるため、栄養効率が良い調理法と言えます。
品種別の特性を活かした調理法
ジャガイモには様々な品種があり、それぞれに適した調理方法があります。代表的な品種の特徴と調理法を以下に示します。
| 品種 | 特徴 | 適した調理法 | 代表的な料理 |
|---|---|---|---|
| 男爵 | でんぷんが多く粉質、ホクホクした食感 | 茹でる、蒸す、潰す | 粉吹き芋、マッシュポテト、コロッケ |
| メイクイーン | 肉質が細かく煮崩れしにくい | 煮る、炒める | カレー、シチュー、肉じゃが、炒め物 |
| キタアカリ | 甘みが強くホクホク、ビタミンC豊富 | 茹でる、蒸す | ポテトサラダ、ベイクドポテト |
| インカのめざめ | 栗のような甘み、小ぶり | 茹でる、蒸す、素揚げ | シンプルな蒸し芋、バター焼き |
品種の特性を理解して調理方法を選ぶことで、ジャガイモの美味しさを最大限に引き出すことができます。
ソラニンという毒素への注意
ジャガイモの芽や緑色に変色した皮の部分には、ソラニンという天然毒素が含まれています。ソラニンは神経毒性を持ち、摂取すると吐き気、下痢、腹痛などの食中毒症状を引き起こす可能性があります。
ソラニンによる健康被害を避けるために、以下の点に注意が必要です。
- 芽が出ている部分は深くえぐり取る
- 緑色に変色した皮は厚めに剥く
- 小さくてシワが寄ったジャガイモは避ける
- 芽が多数出ているジャガイモは使用を控える
特にがん患者さんは免疫力が低下している場合があり、食中毒のリスクを避けることが重要です。ジャガイモを調理する際は、必ず芽と緑色の部分を完全に取り除いてください。
良質なジャガイモの選び方と適切な保存方法
ジャガイモの栄養価を保ち、安全に食べるためには、購入時の選び方と保存方法も重要です。
購入時に確認すべきポイント
新鮮で良質なジャガイモを選ぶ際は、以下の点をチェックしてください。
| 確認項目 | 良いジャガイモ | 避けるべきジャガイモ |
|---|---|---|
| 皮の状態 | ハリがあり滑らかで傷がない | シワが寄っている、傷や黒ずみがある |
| 色 | 自然な土色または品種特有の色 | 緑色に変色している |
| 硬さ | しっかりと硬い | 柔らかい、ぶよぶよしている |
| 芽 | 芽が出ていない | 芽が多数出ている |
| 大きさ | 中くらいのサイズ | 極端に大きい(中が空洞の可能性) |
| 重さ | サイズの割にずっしりと重い | サイズの割に軽い |
皮が緑色になっているジャガイモは、前述のソラニンが増加している可能性が高いため、購入を避けるべきです。
適切な保存方法と発芽防止の工夫
ジャガイモは保存方法を誤ると、すぐに芽が出たり傷んだりします。適切に保存することで、栄養価を保ちながら長期間保存することが可能です。
ジャガイモは低温に弱い性質があります。冷蔵庫に入れると低温障害を起こして甘みが増しすぎたり、調理時に焦げやすくなったりすることがあります。そのため、常温で風通しの良い冷暗所に保存するのが理想的です。
保存時の具体的なポイントは以下の通りです。
| 保存のポイント | 理由と効果 |
|---|---|
| 直射日光を避ける | 日光に当たると芽が出やすく、緑化してソラニンが増える |
| 風通しの良い場所 | 湿気を防ぎ、カビや腐敗を防ぐ |
| 7〜15度程度の温度 | 芽が出にくく、品質が保たれる |
| りんごと一緒に保存 | りんごから出るエチレンガスが発芽を抑制する |
| 新聞紙で包む | 光を遮り、適度な湿度を保つ |
| 段ボール箱や紙袋 | 通気性を確保しながら保存できる |
りんごと一緒に保存する場合は、段ボール箱に多めのジャガイモを入れる際、1〜2個のりんごを一緒に入れておくと効果的です。ただし、りんご自体も傷まないように定期的に確認する必要があります。
がん患者さんがジャガイモを食事に取り入れる際の考え方
ジャガイモに含まれる成分にがん細胞への作用が報告されているとはいえ、ジャガイモを食べることで直接的にがんが治療できるわけではありません。ここでは、がん患者さんがジャガイモを食事に取り入れる際に知っておくべき考え方を整理します。
食事療法の位置づけと現実的な期待値
「特定の食品でがんが治る」という情報は、科学的根拠が不十分なまま広がることがあります。現時点での医学的知見では、特定の食品だけでがんを治療することはできません。
一方で、バランスの取れた食事は、がん治療を受けている患者さんの体力維持、免疫機能の維持、治療の副作用軽減に役立つ可能性があります。ジャガイモは栄養バランスが良く、調理方法も多様で食べやすい食材ですので、日常の食事に適度に取り入れることは有益です。
重要なのは、ジャガイモだけに偏るのではなく、様々な食品から多様な栄養素を摂取することです。野菜、果物、たんぱく質源、穀物などをバランス良く組み合わせた食事が、健康維持の基本となります。
治療中の食事における注意点
がん治療中の患者さんは、治療の種類や副作用の程度によって、食事に関する注意点が異なります。
抗がん剤治療中で吐き気がある場合は、シンプルな味付けのマッシュポテトや蒸したジャガイモなど、消化に良く胃に負担をかけない調理法が適しています。食欲がない時でも、エネルギー源として摂取しやすい食材です。
放射線治療で口内炎が起きている場合は、熱すぎず、柔らかく調理したジャガイモが食べやすいでしょう。ただし、刺激の強い調味料は避けるべきです。
腎機能に問題がある場合は、前述の通りカリウム制限が必要な場合があります。この場合は、ジャガイモを小さく切って水にさらす、茹でこぼすなどの処理でカリウムを減らすことができますが、必ず医療スタッフの指導を受けてください。
エビデンスと実際の食事選択の考え方
ジャガイモに含まれる成分の抗がん作用は、主に実験室レベルの研究で示されているものです。試験管内の実験や動物実験で効果が確認されても、それが人間の体内で同様の効果を発揮するかどうかは別の問題です。
人間が食事としてジャガイモを摂取した場合、消化・吸収の過程で成分が変化したり、体内での濃度が実験条件とは異なったりするため、同じ効果が得られるとは限りません。
しかし、だからといってジャガイモを食べる価値がないわけではありません。ジャガイモは栄養バランスが良く、エネルギー源として優れ、様々な料理に使える便利な食材です。がん予防や治療の観点からも、多様な食品を含む健康的な食事の一部として、ジャガイモを取り入れることは理にかなっています。
大切なのは、「ジャガイモでがんが治る」と過度な期待を持つのではなく、「健康的な食事の一部として、適度にジャガイモを取り入れる」という現実的な考え方です。
ジャガイモと他の食材との組み合わせによる相乗効果
ジャガイモ単体だけでなく、他の食材と組み合わせることで、栄養バランスが向上し、より健康的な食事となります。
たんぱく質との組み合わせ
ジャガイモは主に炭水化物を含む食材ですが、たんぱく質は比較的少なめです。肉、魚、卵、大豆製品などのたんぱく質源と組み合わせることで、体組織の維持や修復に必要な栄養素をバランス良く摂取できます。
特にがん患者さんは、治療による体力消耗や筋肉量の減少を防ぐために、十分なたんぱく質摂取が重要です。肉じゃが、シチュー、ポテトサラダに卵や鶏肉を加えるなど、ジャガイモとたんぱく質を組み合わせた料理は栄養的に優れています。
緑黄色野菜との組み合わせ
ジャガイモにビタミンAやβカロテンはほとんど含まれていません。そのため、にんじん、ブロッコリー、ほうれん草などの緑黄色野菜と組み合わせることで、ビタミン類をより幅広く摂取できます。
これらの野菜に含まれるβカロテンやビタミンEも抗酸化作用を持つため、ジャガイモのビタミンCと合わせて、体内の酸化ストレスを軽減する効果が期待できます。
発酵食品との組み合わせ
味噌汁にジャガイモを入れたり、ヨーグルトと一緒に食べたりするなど、発酵食品と組み合わせることで、腸内環境の改善効果が高まります。腸内細菌のバランスが免疫機能に影響することが知られており、発酵食品に含まれる乳酸菌などの有用菌は、腸内環境を整える働きがあります。
世界各国のジャガイモに関する研究動向
ジャガイモの健康効果については、世界中で様々な研究が行われています。ここでは、近年の研究動向について簡単に触れておきます。
欧米では、ジャガイモに含まれるポリフェノールの一種であるクロロゲン酸の抗酸化作用が研究されています。クロロゲン酸は主にコーヒーに多く含まれることで知られていますが、ジャガイモにも含まれており、血糖値の上昇を緩やかにする効果や、脂質代謝の改善効果が報告されています。
また、ジャガイモの品種改良も進んでおり、特定の栄養成分を強化した品種の開発も行われています。紫色のジャガイモにはアントシアニンという抗酸化物質が豊富に含まれており、通常のジャガイモよりも強い抗酸化作用を持つことが示されています。
日本国内でも、北海道を中心に様々な品種のジャガイモが栽培されており、それぞれの栄養特性を活かした利用法の研究が進められています。
ただし、これらの研究の多くはまだ基礎研究の段階であり、人間を対象とした大規模な臨床試験で効果が確認されているわけではありません。今後の研究の進展に注目していく必要があります。
参考文献・出典情報
2. 国立がん研究センター
4. J-STAGE - 科学技術情報発信・流通総合システム
6. 国立保健医療科学院
8. 日本臨床腫瘍学会
10. 日本癌学会