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07.乳がん

【2026年更新】HER2陽性乳がんにおけるパージェタとカドサイラの適応と使い分けは?

パージェタ


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はじめに

こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。

HER2陽性乳がんの治療は、この10年余りで選択肢が大きく広がってきました。2013年のパージェタ承認、2014年のカドサイラ承認により、HER2陽性乳がんの患者さんにとって治療の可能性が増えています。

さらに、2020年代に入ってからは、トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)という新しい抗体薬物複合体も登場し、治療の選択肢はさらに多様化しています。

この記事では、HER2陽性乳がんにおけるパージェタとカドサイラがどのように使われているのか、それぞれの適応や効果、副作用について最新の情報をもとに整理していきます。

HER2陽性乳がんとは何か

乳がんには、がん細胞の性質によっていくつかのタイプがあります。その中でHER2陽性乳がんは、がん細胞の表面に「HER2」というタンパク質が通常より多く存在しているタイプです。

HER2は細胞の増殖に関わる受容体で、このタンパク質が過剰に発現していると、がん細胞が増殖しやすくなることが知られています。乳がん全体の15~20%程度がこのHER2陽性タイプに該当します。

HER2陽性乳がんは、かつては予後が良くないタイプとされていました。しかし、HER2を標的とする分子標的薬の開発により、治療成績は改善してきています。


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HER2陽性乳がん治療の変遷

2012年頃までは、HER2陽性乳がんの治療においてハーセプチン(トラスツズマブ)が中心的な役割を果たしていました。

再発したり、進行して手術だけでは対処できないHER2陽性乳がんでは、まず最初にハーセプチンが使用され、その次の選択肢としてタイケルブ(ラパチニブ)が用いられていました。

いずれもHER2陽性タイプに効果を示す分子標的薬であり、抗がん剤との併用で治療が行われてきました。

その後、2013年にパージェタ(ペルツズマブ)、2014年にカドサイラ(トラスツズマブ エムタンシン)が承認されたことで、治療の選択肢が広がりました。


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パージェタ(ペルツズマブ)の特徴と適応

パージェタの作用機序

パージェタは、ハーセプチンと同じように、がん細胞の増殖を促す「HER2」の働きを阻害する薬です。

ただし、ハーセプチンとは異なる部分でHER2に結合します。具体的には、パージェタはHER2が他のHER受容体(EGFR/HER1、HER3、HER4)と二量体を形成するのを特異的に阻害します。

このため、パージェタとハーセプチンを併用することで、より強力にHER2の働きを阻害し、がんの進行を抑えることができると考えられています。

パージェタの適応と承認経緯

パージェタは当初、「HER2陽性の手術不能または再発乳がん」を効能・効果として2013年に承認されました。

その後、2018年10月には「HER2陽性の乳がんにおける術前・術後薬物療法」への適応拡大が承認されています。これにより、早期乳がんの患者さんでも、手術の前後にパージェタを使用できるようになりました。

現在では、以下の適応で使用されています。

適応 詳細
HER2陽性の乳がん 手術不能または再発乳がん、術前・術後薬物療法
HER2陽性大腸がん がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん(2022年3月承認)

パージェタの臨床試験データ

パージェタの承認の根拠となった臨床試験では、「パージェタ+ハーセプチン+ドセタキセル(タキソテール)」と「偽薬(プラセボ)+ハーセプチン+ドセタキセル」を比較する試験が行われました。

その結果、パージェタを用いたグループで腫瘍抑制効果が認められ、従来の標準的な方法だった「ハーセプチン+ドセタキセル」よりも、パージェタを加えた3剤併用のほうががん抑制効果が優れていると判断されました。

また、早期乳がんの術後薬物療法を対象としたAPHINITY試験では、4,805名の患者さんを対象に、パージェタ、ハーセプチン、化学療法の併用と、ハーセプチン、化学療法の併用を比較しました。

結果として、パージェタ併用群で再発または死亡リスクが19%減少したことが示されています(ハザード比:0.81、95%信頼区間:0.66-1.00、p=0.0446)。

パージェタの投与方法

パージェタは点滴静注で投与されます。通常、成人に対して初回投与時には840mgを、2回目以降は420mgを60分かけて3週間間隔で投与します。初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できます。

術前・術後薬物療法の場合には、投与期間は12カ月間までとされています。

パージェタの副作用

パージェタを加えることで下痢と発疹などの副作用の頻度が増すことが報告されています。

ただし、いずれも重篤なものではなく、治療を中止するレベルには至らなかったとされています。通常の対症療法で乗り切ることが可能です。

カドサイラ(トラスツズマブ エムタンシン)の特徴と適応

カドサイラの作用機序

カドサイラは完全な新薬というわけではなく、ハーセプチンに抗がん剤を組み合わせた薬です。

具体的には、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブと、化学療法剤であるDM1(エムタンシン)を安定したリンカーで結合させた抗体薬物複合体(ADC)です。

カドサイラはHER2を標的とするように設計されており、トラスツズマブによるHER2シグナル伝達の阻害と抗体依存性細胞障害作用を発揮するとともに、化学療法剤DM1を直接HER2陽性のがん細胞の内部に送達し、これらのがん細胞を破壊します。

DM1の親化合物であるメイタンシンは強力な細胞傷害性を有する一方で、安全域の狭さから臨床応用には不適とされてきました。しかし、トラスツズマブとの結合により腫瘍選択的にエムタンシンの送達が可能となり、薬物有害反応を最小限に抑えながら抗腫瘍効果を発揮する新しいタイプの分子標的薬として開発されました。

カドサイラの適応と承認経緯

カドサイラは2013年9月に「HER2陽性の手術不能又は再発乳がん」を効能・効果として承認されました。

その後、2020年8月には「HER2陽性の乳がんにおける術後薬物療法」への適応拡大が承認されています。

承認時期 適応
2013年9月 HER2陽性の手術不能又は再発乳がん
2020年8月 HER2陽性の乳がんにおける術後薬物療法

カドサイラの臨床試験データ

二次治療としてのカドサイラの有効性を示したのがEMILIA試験です。この第3相試験では、ハーセプチンとタキサン系抗がん剤による前治療歴のあるHER2陽性乳がん患者さんを対象に、カドサイラとラパチニブ+カペシタビンを比較しました。

結果として、カドサイラは無増悪生存期間(PFS)の改善を示し、35%の患者さんで死亡または病勢進行の可能性を減少させました。

また、術後薬物療法についてはKATHERINE試験の成績に基づいて承認されました。この試験では、ハーセプチンを含む術前薬物療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られなかったHER2陽性早期乳がんの患者さん1,486名を対象に、カドサイラとハーセプチンを比較しました。

主要評価項目である浸潤性疾患のない生存期間(IDFS)について、カドサイラはハーセプチンに対して優越性を示し、再発リスクを50%低下させることが示されました(ハザード比:0.50、95%信頼区間:0.39-0.64、p<0.0001)。

カドサイラの投与方法

カドサイラは1回3.6mg/kgを3週間間隔で点滴静注します。単独投与が基本で、他の抗がん剤との併用は行いません。

カドサイラの副作用

カドサイラの主な副作用として、血小板減少、肝機能障害、末梢神経障害などが報告されています。ただし、これらの副作用は既承認のHER2陽性転移性乳がんにおける治療で認められている安全性プロファイルと同様であり、忍容性が認められています。

現在のHER2陽性乳がん治療における使い分け

2026年現在、HER2陽性乳がんの治療は、病期や治療歴によって以下のように使い分けられています。

転移・再発乳がんにおける治療順序

従来は以下のような治療順序が標準的でした。

治療ライン 2012年まで 2013年以降
一次治療 ハーセプチン+タキサン系抗がん剤 パージェタ+ハーセプチン+タキサン系抗がん剤
二次治療 ハーセプチン+他の抗がん剤 カドサイラ単独
三次治療 ハーセプチン+他の抗がん剤、あるいはタイケルブ ハーセプチン+他の抗がん剤、あるいはタイケルブ

ただし、2020年代に入ってからは、トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)という新しい抗体薬物複合体が登場し、治療シークエンスはさらに変化しています。

2025年のASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表されたDESTINY-Breast09試験では、一次治療としてエンハーツ+パージェタが従来の標準治療であるハーセプチン+パージェタ+タキサンを上回る無増悪生存期間を示したことが報告されています。

また、二次治療では、トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)の有効性が示されており、DESTINY-Breast03試験ではカドサイラと比較して統計学的に有意かつ臨床的意義のある改善を示しています。

早期乳がんにおける術前・術後薬物療法

早期乳がんでは、術前薬物療法として、パージェタ+ハーセプチン+抗がん剤が使用されることがあります。特にがんが大きい場合、手術前にがんを小さくする目的で行われます。

術後薬物療法では、パージェタ+ハーセプチン+化学療法の併用が、再発リスクを低下させることが示されています。投与期間は12カ月間までとされています。

また、術前薬物療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られなかった患者さんに対しては、術後薬物療法としてカドサイラが推奨されています。KATHERINE試験では、カドサイラがハーセプチンよりも再発リスクを50%低下させることが示されました。

今後の治療開発の動向

HER2陽性乳がんの治療は、現在も新たな組み合わせや新薬の開発が進められています。

例えば、これまで試されていなかった「パージェタ+カドサイラ併用」の効果を確認するための臨床試験が行われています。パージェタとカドサイラの併用は使う薬の数が少なく、効果が重複することがないので副作用の面で従来の方法よりもよい結果が出る可能性があります。

また、2025年3月にはツカチニブという経口HER2阻害薬が日本で承認申請されました。ツカチニブは米国では2020年に承認されており、HER2陽性乳がんの三次治療以降での使用が期待されています。

さらに、HER2陽性だけでなく、HER2低発現という新しいカテゴリーに対してもエンハーツの適応があり、治療の選択肢はさらに広がっています。

治療選択における考え方

HER2陽性乳がんの治療では、病期、治療歴、患者さんの体の状態、希望などを総合的に考慮して治療法が選択されます。

転移・再発乳がんの場合、治療の目標は症状の緩和と生存期間の延長になります。一次治療で効果が得られた場合は、無効になるまで治療を継続します。効果が不十分な場合や、副作用で継続できない場合は、次の治療ラインに移行します。

早期乳がんの場合、治療の目標は治癒を目指すことです。術前・術後の薬物療法により、再発リスクを低下させることが重要です。

いずれの場合も、HER2を標的とした治療は、HER2陽性であることが確認された患者さんにのみ使用されます。事前に病理学的な検査によってHER2タンパクの発現状態を確認する必要があります。

まとめ

HER2陽性乳がんの治療は、パージェタとカドサイラの登場により選択肢が広がり、さらにエンハーツなどの新しい薬剤の開発により、治療成績は向上し続けています。

パージェタは、ハーセプチンとは異なる部分でHER2に結合し、両者を併用することでより強力にHER2の働きを阻害します。転移・再発乳がんの一次治療、早期乳がんの術前・術後薬物療法で使用されます。

カドサイラは、ハーセプチンに抗がん剤を結合させた抗体薬物複合体で、HER2陽性がん細胞に選択的に抗がん剤を送達します。転移・再発乳がんの二次治療、術前薬物療法でpCRが得られなかった患者さんの術後薬物療法で使用されます。

今後も臨床試験の結果をもとに、治療は変化していく可能性があります。患者さん一人ひとりの状況に応じた最適な治療選択について、担当医とよく相談しましょう。

参考文献・出典情報

  1. 医療用医薬品:パージェタ点滴静注420mg/14mL – KEGG MEDICUS
    https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00061975
  2. パージェタ(ペルツズマブ)の作用機序と副作用【乳がん/大腸がん】 – 新薬情報オンライン
    https://passmed.co.jp/di/archives/6627
  3. パージェタ(ペルツズマブ)| がん情報サイト「オンコロ」
    https://oncolo.jp/drugs/perjeta
  4. ペルツズマブの早期HER2陽性乳癌への使用が可能に、術前・術後療法へ適応が拡大 – 日経メディカル
    https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/201810/558163.html
  5. パージェタ(一般名:ペルツズマブ)進行再発乳がんの生存期間を延長した新しい抗HER2療法薬 – がんサポート
    https://gansupport.jp/article/drug/drug01/12652.html
  6. カドサイラ(トラスツズマブ エムタンシン)| がん情報サイト「オンコロ」
    https://oncolo.jp/drugs/kadcyla
  7. カドサイラ、HER2陽性の早期乳がんに対する術後薬物療法として適応追加 – がんプラス
    https://cancer.qlife.jp/news/article13451.html
  8. 抗悪性腫瘍剤「カドサイラ」HER2陽性の早期乳がんにおける術後薬物療法に対し適応追加の承認を取得 – 中外製薬
    https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20200821160000_1015.html
  9. FRQ12 HER2陽性転移・再発乳癌に対する三次以降の治療で推奨される治療は何か?– 乳癌診療ガイドライン2022年版
    https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/y_index/frq12/
  10. 乳がん 治療 – 国立がん研究センター がん情報サービス
    https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html

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本村ユウジ
本村ユウジ
がん治療専門のアドバイザー・本村です。

私の仕事は【がん患者さんに正しい選択を伝えること】です。

「本村さん、おかげで元気になりました」

そんな報告が届くのが嬉しくて、患者さんをサポートしています。

→200通以上の感謝の声(これまでいただいた実際のメールを掲載しています)

しかし毎日届く相談メールは、

「医師に提案された抗がん剤が怖くて、手の震えが止まらない」

「腰がすこし痛むだけで、再発か?転移か?と不安で一睡もできなくなる」

「職場の人も家族さえも、ちゃんと理解してくれない。しょせんは他人事なのかと孤独を感じる」

こんな苦しみに溢れています。

年齢を重ねると、たとえ健康であっても、つらいことはたくさんありますよね。

それに加えて「がん」は私たちから、家族との時間や、積み重ねたキャリア、将来の夢や希望を奪おうとするのです。

なんと理不尽で、容赦のないことでしょうか。

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