
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
肝臓がんの治療を考える際、腫瘍の個数やサイズによって選択できる治療法が大きく変わってきます。特に「腫瘍が3個以下で、最大径が3センチメートル以上」という状態は、治療法の選択において重要な分岐点の一つです。
この記事では、2026年時点での最新の治療情報をもとに、腫瘍の個数とサイズに応じた肝臓がんの治療法について、分かりやすく解説します。
肝臓がんの治療選択の基本
肝臓がんの治療法を選ぶ際は、腫瘍の状態だけでなく肝臓の機能も重要な判断材料になります。なぜなら、肝臓がんの患者さんの多くは、B型肝炎やC型肝炎、肝硬変など、肝臓そのものに基礎疾患を抱えているからです。
治療法の選択には主に3つの要素が関わります。第一に腫瘍の個数、第二に腫瘍のサイズ、第三に肝臓の予備能力です。
腫瘍の個数は「3個以下」と「4個以上」で治療方針が大きく変わります。肝細胞がんでは一度に複数のがんができることが少なくありませんが、3個までを分水嶺として治療法が選択されます。
腫瘍のサイズについては「3センチメートル」が一つの基準となります。病理学的な観点から見ると、3センチメートルを超える腫瘍では門脈などの肝臓内の太い血管にがん細胞が広がりやすいことが分かっています。
肝機能の評価には「Child-Pugh分類」が用いられます。これは血清ビリルビン値、血清アルブミン値、プロトロンビン時間、腹水の有無、肝性脳症の有無の5項目から肝臓の状態をA、B、Cの3段階に分類する方法です。一般的に、AまたはBであれば積極的な治療が可能ですが、Cの場合は治療の選択肢が限られます。
腫瘍が3個以下で最大径が3センチメートル以上の場合の治療法
この条件に該当する場合、肝機能が比較的保たれていれば(Child-Pugh分類AまたはB)、肝切除が第一の選択肢となります。
肝切除について
肝切除は、がんとその周囲の肝臓組織を手術で取り除く治療法で、最も根治性の高い治療です。肝臓がんが肝臓内にとどまっており、個数が3個以下であれば、腫瘍の大きさに特に制限はありません。10センチメートルを超えるような大きな腫瘍であっても、肝機能が保たれていれば切除が可能な場合があります。
肝切除の術式は、腫瘍の位置や大きさ、肝機能に応じて選択されます。小さい範囲で腫瘍部分だけを切除する部分切除から、肝臓の区域を切除する区域切除、右葉や左葉を広範囲に切除する葉切除まで、さまざまな方法があります。
近年では、腹腔鏡下手術も普及してきました。お腹に小さな穴をいくつか開けて、そこから手術器具を挿入して行う方法です。開腹手術と比べて体への負担が少なく、早期回復が期待できます。ただし、腹腔鏡下手術は特別な技術を要するため、実施している施設は限られています。
肝切除後の入院期間は患者さんの状態によって異なりますが、通常1週間から2週間程度です。
術後の合併症としては、胆汁漏、出血、肝不全などが挙げられます。胆汁漏は肝臓の切除面から胆汁が漏れる状態で、ドレーンを留置することで自然に治まることが多いですが、まれに再手術が必要になる場合もあります。肝不全は重篤な合併症ですが、手術計画の段階で肝予備能に応じて十分な残肝容積を確保することで、発生を最小限に抑えるよう配慮されています。
肝動脈化学塞栓療法(TACE)
肝機能が低下している場合や、腫瘍の位置などの理由で肝切除が難しい場合には、肝動脈化学塞栓療法が選択されます。
この治療法は、がんに栄養を供給している肝動脈を塞いで、がん細胞を壊死させる方法です。肝臓には肝動脈と門脈という2つの血管から血液が供給されています。正常な肝細胞は主に門脈から栄養を得ていますが、肝臓がんの細胞はほぼ100パーセント肝動脈から栄養を得ています。
治療では、足の付け根や腕の動脈からカテーテルという細い管を挿入し、X線で体内を透視しながら腫瘍に栄養を送っている肝動脈まで進めます。そこに抗がん剤と造影剤を混ぜた液(リピオドールエマルジョン)を注入し、その後、塞栓物質を入れて血管を詰まらせます。
抗がん剤による攻撃と血流遮断による兵糧攻めの二重の効果で、高い腫瘍壊死効果を狙います。抗がん剤のほとんどが腫瘍やその周囲の血管にとどまるため、全身化学療法のような強い副作用が少なく、少ない量でも効果が得られます。
近年では、薬剤溶出性ビーズ(DEB-TACE)という新しい塞栓物質も使用されています。これは100から300ミクロンの球状塞栓物質で、均一サイズのため血管を密に塞栓できます。また、抗がん剤を含ませることができ、塞栓後に少しずつ溶出してがんを攻撃します。
肝動脈化学塞栓療法の入院期間は1週間から2週間程度です。治療後には発熱、腹痛、吐き気、食欲不振などの症状が現れることがありますが、これは塞栓に対する反応で、通常1週間程度で消失します。
一度の治療ですべての腫瘍を完全に壊死させることは難しいため、治療後に画像診断で効果を確認し、必要に応じて繰り返し治療を行います。
放射線治療
近年、肝臓がんに対する放射線治療の技術が進歩しています。特に定位放射線治療は、病巣に対して多方向から放射線を集中させて照射する方法で、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えながら、高線量の放射線を短期間で照射することが可能です。
腫瘍径5センチメートル以下で3個以内の病変の場合に保険適用となりますが、肝予備能や正常肝容積を考慮して治療適応を判断します。一般に、Child-Pugh分類がAまたはBの場合に実施されます。
また、4センチメートルを超える腫瘍では、肝臓内の血管に目に見えないがん細胞が広がっていることが多く、肝動脈化学塞栓療法の効果が不十分になりやすいとされています。このような場合、放射線治療の効果が期待できます。
陽子線治療や重粒子線治療など、がんだけにピンポイントで照射できる先進的な放射線治療も一部の施設で実施されていますが、これらは先進医療に分類されるため、健康保険が適用されません。
肝移植
肝機能が不良の場合、がんの積極的な治療が困難なことがあります。がんが1個だけで最大の直径が5センチメートル以下、または3個以下で各3センチメートル以下の場合は、肝移植も検討範囲に入ります。ただし、離れた臓器への転移がなく、血管内をがんが侵していない場合に限られます。
肝移植には、親族や配偶者から肝臓の一部を提供してもらう生体肝移植と、脳死と判定された方から提供された肝臓を移植する脳死肝移植があります。日本では主に生体肝移植が行われています。
最近では、5センチメートル以下5個以内で腫瘍マーカーAFPが500ng/mL以下という拡大基準(5-5-500基準)も提唱されており、近い将来、保険適用が拡大されることが期待されています。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
腫瘍が4個以上で最大径が3センチメートル以下の場合
この条件では、肝動脈化学塞栓療法が第一選択となります。
腫瘍が肝臓全体に散らばり個数が多い場合、肝切除や穿刺療法(ラジオ波焼灼療法など)は実施が困難です。これに対して肝動脈化学塞栓療法は、1回の治療ですべての腫瘍にダメージを与えることが期待できます。
ただし、一度の治療で完全にがんを壊死させることは難しいため、治療後に画像診断で効果を確認し、再発の兆候があれば同様の治療を繰り返します。
肝動脈化学塞栓療法と同様に、すべてのがんを攻撃するという意味で、抗がん剤の肝動脈注入療法(動注療法)も効果があります。これは鼠径部や腕の動脈からカテーテルを入れ、肝動脈まで挿入して抗がん剤を注入する方法です。ただし、1回の治療効果は小さいため、繰り返し治療を行う必要があります。
肝機能が不良の場合は、積極的な治療が困難なこともあります。
腫瘍が4個以上で最大径が3センチメートル以上の場合
このような症例の治療は困難です。
腫瘍が肝臓の一部に偏って存在し、肝機能がよければ、切除することが最も有効だと考えられます。ただし、切除範囲が大きくなるため、肝不全を起こす危険があります。まず、肝切除に熟練した医師のいる病院で見解を聞くことが大切です。
肝切除が困難な場合は、肝動脈化学塞栓療法または動注療法が基本的な治療法となります。しかし、これらの治療単独では、すべてのがんを壊死させることは困難です。
そこで、複数の治療を組み合わせる集学的治療も試みられています。たとえば、放射線治療と肝動脈化学塞栓療法を組み合わせる治療法です。大きな腫瘍のみを切除して、これらの治療法を追加することもあります。
各治療法の適応と特徴の比較
| 治療法 | 主な適応条件 | 入院期間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 肝切除 | 3個以下、Child-Pugh分類AまたはB | 1〜2週間 | 最も根治性が高い。腫瘍サイズの制限なし |
| ラジオ波焼灼療法 | 3cm以下3個以下、Child-Pugh分類AまたはB | 約1週間 | 体への負担が少ない。繰り返し治療可能 |
| 肝動脈化学塞栓療法 | 3cm超1〜3個、または4個以上 | 1〜2週間 | 多発病変に有効。繰り返し治療が基本 |
| 定位放射線治療 | 5cm以下3個以内 | 通院治療 | 正常組織への影響が少ない |
| 肝移植 | 5cm以下1個、または3cm以下3個以内など | 1か月以上 | 肝機能不良例でも根治が期待できる |
治療費用について
肝臓がんの治療には相応の費用がかかりますが、日本では健康保険と高額療養費制度により、自己負担額は軽減されます。
肝切除の場合、手術費用総額は約200万円から250万円程度ですが、70歳未満の一般世帯(年収約370万円から770万円)の場合、高額療養費制度を利用すると、1か月の自己負担額の上限は約9万円(80,100円+(総医療費-267,000円)×1パーセント)となります。
ラジオ波焼灼療法の場合、初年度の自己負担額は約15万円程度です。ただし、治療後も毎月定期検査を行うため、2年目以降も年間約6万円の費用が継続的に発生します。
肝動脈化学塞栓療法の入院・治療費も、高額療養費制度を利用することで、1回の入院での自己負担額は10万円程度に抑えられます。ただし、この治療は効果を確認しながら繰り返し行うことが一般的なため、複数回の治療費が発生します。
定期検査については、肝臓がんは再発しやすいため、治療後も継続的な経過観察が必要です。CT検査やMRI検査、血液検査などを3か月ごとに実施することが一般的で、年間の検査費用は約20万円から30万円程度ですが、これも高額療養費制度の対象となります。
なお、陽子線治療や重粒子線治療などの先進医療は、健康保険が適用されないため、全額自己負担となります。施設によって異なりますが、300万円程度の費用がかかります。
治療後の経過と再発への対応
肝臓がんは再発しやすいがんの一つです。これは、多くの患者さんがB型肝炎やC型肝炎、肝硬変といった基礎疾患を持っており、治療後も肝臓内の別の場所にがんが発生する可能性があるためです。
そのため、治療後は定期的な画像検査と血液検査による経過観察が欠かせません。再発を早期に発見できれば、再び患者さんの状態に合った治療を行うことができます。
実際に、肝臓がんが再発してラジオ波焼灼療法や肝動脈化学塞栓療法を2回、3回と繰り返し行う患者さんも少なくありません。
治療法選択における重要なポイント
肝臓がんの治療法を選択する際は、以下のポイントが重要です。
まず、腫瘍の状態と肝機能の両方を総合的に評価することです。いくら根治性の高い治療法であっても、肝機能が保たれていなければ実施できません。
次に、複数の専門家の意見を聞くことです。肝臓がんの治療には外科、内科、放射線科など、さまざまな専門科が関わります。一つの科だけでなく、複数の専門家が集まって検討することで、その時点での最適な治療法を選択できます。
また、治療は一度きりではなく、経過を見ながら柔軟に変更していくことも大切です。最初に選択した治療法の効果が不十分な場合や、再発した場合には、別の治療法への変更や複数の治療法の組み合わせを検討します。
患者さん自身が治療の内容を理解し、納得した上で治療を受けることも重要です。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあり、副作用や合併症のリスクも異なります。担当医とよく相談し、疑問点があれば遠慮なく質問しましょう。
肝機能不良時の対応
肝機能が不良(Child-Pugh分類C)の場合、積極的ながんの治療は困難なことが少なくありません。この場合、肝移植が可能であれば検討されますが、適応条件を満たさない場合や、ドナーが見つからない場合もあります。
そのような場合は、緩和ケアが選択肢となります。緩和ケアとは、がんによる症状を和らげ、生活の質を維持することを目的とした医療です。痛みのコントロール、栄養管理、精神的サポートなど、患者さんとご家族が少しでも快適に過ごせるよう、さまざまなケアが提供されます。
ただし、近年では薬物療法の進歩により、従来は治療困難とされていた症例でも治療可能になってきています。まずは医師に相談し、現在の状態で可能な選択肢を確認することが大切です。
参考文献・出典情報
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